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飼育

 オーロラを飼うことにした、と友人から連絡があった。珍しいものを飼うものだ、と早速自宅に見に行かせてもらうことにした。
「ほら見て、これが地球」
暗幕をかけられた部屋の中心に浮いている青っぽい球体がそうなのだという。
「え、お前これのために部屋用意したの?」
「専用の飼育ボックスもあるんだけど部屋でも飼えるっていうからさ。どうせ部屋余ってたし、いいかなーって」
「ふーん、この地球いま何歳?」
「うーん、まだ5億歳だから、原始生命が誕生したくらい?」
「意外と成長早いんだな」
「今ちょうど早送りにしてるんだよね。ある程度生物揃ったらゆっくりにするよ」
くるくると回転する地球はそれだけでも美しい。しかし肝心のオーロラが見当たらない。
「お前、オーロラはどうしたの?」
「ああ、まぁ見てなって」
そういうと彼は何やらスプレーを取り出した。
「これをこうすると……」
目には見えない何かを振りかけると、地球の回転軸の上方と下方に青や緑の光の帯が現れた。
「ほら、元気だろ? ご飯だぞ~」
スプレーの正体はオーロラのエサである荷電粒子らしい。ゆらゆらと揺れる光の帯はまるで喜んでいるかのように見えた。
「きれいだな」
「だろ? 結構可愛くて毎日エサあげちゃうんだよね~。時々機嫌が悪いと出てきてくれないんだけど、今日は良さそうでよかったわ」
美しいオーロラの姿を見ていたらなんだか自分も欲しくなってきた。でもオーロラを飼うにはいくつもの難関がある。
「俺もオーロラ欲しいな~。その前にまず地球飼えるようにならないと」
「次の創造神試験、受けるんだろ? お前なら絶対受かるって」
「そうかなぁ、だといいけど」
創造神試験は難関で狭き門だが、でもこのオーロラを見てちょっとやる気が出てきた。帰ったら早速受験勉強をしようと心に決めた。

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伊織さん( https://twitter.com/iori8250 )から頂いたお題「オーロラ」で作成しました。ありがとうございました!



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