エディトリアルデザインで影響を受けた本
というハッシュタグがTwitterに流れていて、面白そうだと思って自分も投稿してみた。思えば、人の本棚を眺めているのは面白い。その昔、友人の家に遊びに行ってずっと本棚を眺めていたら流石にひかれたということがあった。
「4いいね」になったので、4冊書いてみようと思う。
(普通に「影響を受けた本」を選ぶと、務めていた事務所の師匠の本ばかりになってしまうので、今回は除外した。)
アートディレクター 江島任 手をつかえ
リトルモア、2016
「ミセス」「NOW」「装苑」など様々な雑誌をアートディレクションしてきた江島任さん。その仕事の全貌を、多くの図版と関係者からの寄稿などから紹介する一冊。厚い。なにせ650ページ超ある。
広告業界と比べると、雑誌の業界というのはあまり日の当たらない方ではないかと思う。個人の作品集が出ることがまず珍しい。個人的にはリアルタイムでその仕事に触れた世代ではなかったが、こまかいデザインだけでなくページネーションを俯瞰で見られるような編集がなされていて、当時の雑誌の勢いを感じることができる。弟子にあたるアートディレクターの木村裕治さんがまとめられている。
岡本一宣のピュア・グラフィック
美術出版社、2008
エディトリアルデザイン界で第一線で活躍されているアートディレクター岡本一宣さん。その仕事の中でも、ダイアグラムや地図、アイコンなど要素として使われる部分を抽出して掲載している一冊。厚い。なにせ750ページほどもある。
月刊誌などではその月ごとに様々なパーツをつくることが多いが、そのひとつひとつを抜き出してもきちんと作品として見られるクオリティに驚かされる。(自分もそうありたいと思うのだが……)
フォントブック[和文基本書体編]
祖父江慎 監修、毎日コミュニケーションズ、2008
厚い。なにせ1000ページ超ある。
前にいた事務所にも独自の書体見本ファイルがあり、一度その見本を更新する作業を任せられていた。書体を覚えたのはその時の経験がすごく大きい。
多くのフォント見本は、制作会社ごとに分類されているものが多いなか、これは骨格ごとに掲載されているフォントの見本帳。こうして改めて骨格ごとにされることで各社の「初号相当のもの」「五号用のもの」など違いが見れる。これが個人的にはすごく勉強になった。
似ている書体でも、はっきりした理由をつけて「このレイアウトにはこの書体」と選ぶのが迷わなくなったし、仕様サイズごとの骨格のあり方を考えたきっかけにもなった。
日本語組版入門 その構造とアルゴリズム
向井裕一 著、誠文堂新光社、2018
「日本語組版の考え方」(2008)の増補改訂版。
Adobe IllustratorにしろInDesignにしろ、方向としては「初心者でもレイアウトできる」というのが売りになっている。つまり、初心者が難しいと捉えるような部分をすべてデフォルト値として何らかの値が設定されていて、意識しなければ意識しないでそれなりのものができるようになっている。逆に、それを利用している限り、それなりのものしかできない。
この本では、ソフトウェアのデフォルト値に任せるのではなく、どのようなアルゴリズムによって、目指す組版になるのかを解説している。
個人的には「文字組みアキ量設定」について割と曖昧なまま作業していることがあった。事務所につとめはじめのときは先輩方がカスタマイズしていたものをあまり考えずに使っていた(それでミスしたこともあった)。あらためて、「理想的なベタ組の状態とはどういうものか」「どのようにズレが生じて、どのように回避するか」をこの本で学んだ。
「書体」と「組版」×「アイコンや地図などの要素」×「レイアウト」
様々な要素があるエディトリアルデザインで、それぞれ自分なりの基礎づくりとなった本をまとめてみた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?