2018制作フォントまとめ

制作フォントまとめ2018

2018年に独立しようと思い、去年から準備をすすめていた。
個人事務所につとめていると、なかなか自分の仕事をつくることができない。そこで、これまでつくっていたフォントをなにかカタチにしていこうと決めた。月に1枚、名刺サイズのフォントのプロモーションカードを制作することにした。名刺サイズというのは渡しやすく、もらう方も気軽にもらってもらえるのではないかと考えた。
表裏の限られた誌面で、雰囲気をつくって組見本を載せてと試行錯誤しながら制作している。(ここに掲載する画像は、そこからアレンジしたもの)


Vespertine

細くてシンプルな線のスクリプト体。一文字の中で線が途切れているのに、文字と文字は線が続いているという構成。しかし、塊感が文字固有にあるので読めなくないバランスだと思う。1月のカードとして制作したので、サンプル文字として「Happy New Year」を使っていた。

Traslab(仮)

Trajanの骨格でスラブセリフのものがないかと思ってフォントベンダーのサイトやフリーフォントを漁っていたことがあった。しかし、思ったようなものが見つからない。スラブセリフのフォントは、隙間を埋めるように黒味をだすように作られるので、懐の緩急がある骨格のフォントにされることがなかったのではないだろうか。ぽっかりあいた「O(大文字のオー)」に対して「E」のように幅の狭いものに更にスラブセリフがついて混み合った文字がでると、単語に対してコントラストがつきすぎる。試作として制作してみて、実際はどうなのか検証してみている。


GingerAle

オープンフェイスのスタイルのフォントに一時期ハマっていて色々見ていたが、もっと軽く見えるようなものがつくれないかと思い制作をはじめた。
前述のTraslabをベースにして(つまりTrajanの骨格で)、線は思い切ってシンプルにしている。
組んでみて割とさわやかに抜けた感じになったかなと思い、GingerAleと名付けた。
2月のカードとして制作。


Rivers

バックスラントで、ジョイニングのサンセリフ体を試作中。
ある日、走っていたトラックの文字がバックスラントで書かれてあったのが気になった。元のロゴはイタリックになっているもので、トラックの進行方向に合わせて傾きを逆に変えたような感じだった。(「タ ー ャ ジ ス」のような感じで、日本語の表記を右から左に読むように表記してあるのと同じ感じだと思う)
調べてみると、地図で川の名前を記すために使われるらしい。
現在は小文字のみのセットがある。また、先端の角丸加工の「rounded」のバージョンがある。
3月のカードとして作成。


Resistor

GingerAle作成の際、ノートに試行錯誤していたときに、線を折返しで書いたら面白いのではないかと制作をはじめてみた。
はじめに「S」「R」あたりをつくり、構造的にはなくはないかと作り続ける。
使い所は限られそうだが、妙なニュアンスは出ていると思うので、イベントなどの賑やかしに使ってもらいたいと思っている。
名前の由来は「抵抗」から。折返しでギザギザしているのが抵抗記号っぽいので。
「Tsudura(つづら)」などと仮の名前ですすめていたが欧文書体に和名をつけるのもどうかと悩んでいた。
4月のカードとして作成。たまたまトランプの柄を見ていたら絵札の服の柄がデコラティブで、相性がいいかとおもいトランプ柄にしてみた。カードは角丸処理にしたりして、トランプ風に。


Union Pearl

Union Pearlという書体がある。イギリスの装飾体で、18世紀あたりのものらしい。
友人の結婚式のためにウェルカムボードを作成することになり、別の友人が「この書体を使いたい」と見本を持ってきた。デジタル書体が見つからなかったので、書き起こしてつかうことに。活版印刷で潰れている部分なども含め、全体的に明るく作り直そうと思い、直接のトレースなどはせず、雰囲気を拾いながらつくった。

元になった書体のようなアウトライン上のものと別に色分けをしてつかうために「Stem」と「Pearl」というバージョンがある。組み合わせてつかうとまた違う雰囲気にできる(下画像)。

5月のカードとして作成。このカードだけ例外として、二つ折りの名刺サイズで作成。元となった活字の紹介や、色違いのパーツの組み合わせの方法など載せていたらスペースが足りなくなってしまった。もともと、小さいサイズでつかわれるようなものでないディスプレイ用の書体ということで組見本も小さくできなかったということもある。
手のイラストレーションはakari katsutaに依頼。


TORSO

GingerAleをつくっているとき、細いサンセリフ体として使えるパーツがあると思っていた。色分けして作業していたときにこれはいけると思い制作をすすめてみた。骨格となるサンセリフと、それにつけるセリフの部分と分けているので、重ねて色分けすると、色々な雰囲気が作られる。
はじめは「Armor(アーマー)」と仮に名付けて作業していたが、あまりゴツい印象にしたくないな、と思っていた。そこで、着せ替えられる、というニュアンスにとって「Torso(トルソー/胴体)」と名付ける。
ベースのサンセリフはL(adies')とM(en's)として展開。LightとMediumとうまく対応したかと思う。セリフの形状は色々やりようがあるとおもったので「2018SS」と「2018AW」としてみた。春夏のコレクションと、秋冬のコレクションで、ウェイトの差などをつけるなど考えられないかと思っている。
6月のカードとして作成。ランウェイでスポットライトが当たるようなイメージでつくっている。


Diabolo Mint

はじめは「フランスの絵本でつかわれるようなフォント」をつくろうとイメージしてスケッチを繰り返していた。東京都庭園美術館の展示「鹿島茂コレクション フランス絵本の世界」をみて手書きの部分が魅力的に見えたからだった。(ただし、途中からあまり関係なくなってしまった感じに。)
セミセリフで平体がかった骨格。LightとExtraBoldをつくり、RegularとBoldを中間値で生成した。
フランスイメージという前提があったときに、なにかそのへんから名付けられないかと思って、少し文化などを調べていた。フランスではシロップのメジャーなフレイバーとして「ディアボロミント」や「グレナデン(ざくろ)」があるらしい。炭酸で割って飲まれたりする。ジンジャーエールと名付けたものもあったので、飲み物のシリーズで良いんじゃないかと思い名付ける。
7月のカードとして作成。


Grenadine Syrup

前述の「フランスの絵本でつかわれるようなフォント」としてDiabolo Mintと並行して考えていてシリーズにしようと考えていた。
DiaboloMintがまとまってきた時点でこのセミセリフを尖らせたらまた違う雰囲気がつくれるのではないかと制作をすすめた。基本的な骨格を踏襲しながら独自にカーブのニュアンスなどを変えている。
前述のDiaboloMintの兄弟のような存在なので、同じ系統で名前を考えようと、やはりフランスでメジャーなフレイバーシロップの「GrenadineSyrup」と名付ける。尖った部分がざくろっぽいということもあった。
8月のカードとして作成。DiaboloMintのカードとシリーズに見えるようなデザインでまとめた。


現在は知り合いを中心にサンプルのフォントデータを渡して使用してもらっている。また、カードを渡しながら反応を見て、好評のものから字形を揃えて公開しようかと考えている。

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