デザインのアプリケーションを学ぶこと

半年くらい前に書いていて、投稿していなかったものを発掘したので投稿。

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大学で「Adobe Illustrator」の使い方を教えている。
シラバスがすでに組まれてる状態で、ある意味途中参加のようなかたちだったし、色々思うところもあるが、学生によっては「現場にいるデザイナーの話を聞けてよかった」みたいに思ってくれる人もいたようでやって良かった。

Illustratorの使い方が中心にはなったが、それにまつわる文字組みの基本的な部分は割と時間を割いて取り組んでもらえたし、これからエディトリアルデザインをやりたいと言ってくれた学生も、授業後にちゃんと質問など来てもらえて、伝わるべき部分は伝わったかと思う。

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こういう基礎的なツールを教える側とすれば、ある意味、体系的なツールの使い方を教えてしまえば「あとはググれ」くらいのものしか言いようがない。
やりたいことが明確で、それに対してどうしたら良いかや、どのような挙動なのかなど質問が出たほうがむしろ教えられることが多い気もする。
あえていえば、あそこまでIllustratorを使えれば、InDesignに移行したほうが今後いいだろうという学生もいるし、その布石を打ったり伏線を張ったりしてはいるつもりなのだが、あと1回でそれらを回収できるはずもない。

その昔、事務所にいるときにInDesignの教本めいたものをまとめようと思っていたことはあった。
というのも、一般に売られているInDesignの教本は「選択ツールの使い方」「新規作成ファイルの作り方」などから始まっていて、そこからInDesignを始めようとすると、躓くことがわかっていたからだ。

先日、とあるデザイナーさんが公演で「グリッドを組むのはイラレで、設計ができたらInDesignに落とし込む」とおっしゃっていて、納得した部分がある。
やはり基本的な設計は別にできてからでないと、単に「冊子ものだからInDesign使いたい」では、逆引きの入門書ではハードルが高すぎる。
ちょっと回り道でも、日本語の本文組版の基本が何故/どのようにベタ組み・箱組になるか、あるいは、活版印刷の時代のことや写植・版下の時代のレイアウトルールがいかにInDesignに反映されているか、みたいなところに触れれば新規作成でレイアウトグリッドにまっとうに入っていける。
(そういう意味では、務めていた事務所はとても良かった。なにしろボスがイラレもInDesignも使えなかったので、ソフトのデフォルトがどうとかではなく、全て決められた数値でスタッフがデータを組み上げていた。でないと、デフォルトの設定に疑問を持つのも時間がかかっただろうと思う)

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実例を交えながらサンプル紙面を作る体で途中まで教本をつくってみたが、現状では挫折している。
というのも、ある程度体系的にやれる部分はあるにしても、結局理解度に合わせて教えるべきところを教えないと、多分身につかないだろうな、と思ったからだ。

個人的にそうだった部分は例えば「文字組みアキ量設定」のあたりで、細かい約物の編集上のルールが一通り入ったくらいにならないとそもそも「ベタ組みのはずがベタ組にならない」みたいな疑問も出てこないし、問題意識がない状態で「こういうもんだよ」と言ったところで多分何もわからないと思う。

一つには、とりあえず無理矢理にでも体系的に一本筋を通して最後までいくこともできるだろうが、ほぼ回り道だけの(主にデザイン以前の編集段階あたりの話で)InDesignの設定がちょろっとしかないルートしか今の俺には組めない。
それだと極端な話、校正必携になる。
そして最後には身も蓋もない話になるが、結局、それぞれ問題意識を持ちながらいろんなものを見て、いろんなものを作っていくしかないのだと思う。
InDesignの挙動にちゃんと疑問を持てることと、疑問を持ったときにちゃんと体系的に答えてくれる人がいればなおよし。

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というような意味で、ソフトウェアの使い方でない入門書としては「日本語組版入門: その構造とアルゴリズム」と「デザイン解体新書」


InDesignの教本としては「組む。」が良い。



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