久しぶりの対面授業はハイブリッド

 自分の単独担当の授業科目ではずっと非対面のオンライン授業が続いていたので,対面授業のやり方を忘れてしまったような気分だ。そのくらい,自分が単独で担当する授業で対面で実施するのは久しぶりだった。
 だが,やはりオンライン授業を経験したあとで,対面授業が完全に元通りに戻ることはありえなかった。

対面授業でもフォームに記入させる

 この科目では,事例や場面を示して,自分がその事例の当事者ならどのように振る舞うかということを考えさせ,その後に解説をする,というような流れで授業を進めることが多い。
 対面授業だけでやっていたころには,この事例に基づいて考えさせる部分は「周りの人と相談してもよい」ということにしていて,しばらくthinking timeを時間をとったあとで,二つのサイコロ(一つは通常の六面,もう一つは0~9までの数字の入った十面)の目で数人の学生を指名して,「どんなことを考えたか」を答えさせたりしていた。だがこの方法だと,thinking timeに友だちとおしゃべりに興じて,指名されてからその場で事例を読み始めるみたいな学生があとを絶たなかった。
 今回,thinking timeには,考えた内容をスマートフォンなどからフォームに書き込むように指示した。話し合いではなく,個別に取り組む課題にしてしまったのである。Googleフォームでは,何人の回答があったかがリアルタイムでわかる。全出席者の回答が出てくるのを確認してから,その内容をいくつか拾って紹介し,解説に入る。そんな手順にすることで,学生は授業中にサボりにくくなった。
 スライドを写すのにノートパソコンを教室に持ち込んでいたが,プロジェクターのソースを切り替えて教室備えつけのパソコンで開いたフォームの回答一覧をスクリーンに表示させてみた。だがこれは,文字が小さくて学生にはほとんど見えていないようだった。これを学生が見られるようにするには,もう一手間必要なようだ。Responとかを使えばよいのかもしれないが,まだそこまで追いついていない。

行き当たりばったりではなく話す

 この科目は,昨年度オンデマンド動画を配信したときに,自分の語りの聞きづらさに絶望して発表者ノートに一言一句書き込むようになった台本がある。今年の対面授業では,スライドを見せながら話すのは以前と一緒だが,この台本を見ながら話すことにした。
 だが,対面授業でパソコンをにらみながら話すのも不自然だ。そこで,発表者ノートの文章をスライド一枚一枚から拾ってきては一つのテキストファイルにコピペして,pdfファイルとしてタブレットから見られるようにした。タブレットを手元に置いて,それをときどき見ながら話す形なら,対面授業のスタイルとしても不自然にはならないだろう。
 話しているうちに消えてしまったタブレットの画面を開くためにパスワードを入れるみたいなことがちょくちょく起きるのをなんとかできれば,まあまあ使えそうな方法ではある。

見逃し配信の可能性

 教室で対面の授業をするときに,スライドはズームの画面共有で表示してスクリーンに映し,ヘッドセットをつけて授業そのものを録画してみた。途中でプリントを配布したりthinking timeをとったりしているので編集しないと長いばかりで使い物にならなさそうだが,これを少し加工すれば授業の「見逃し配信」が可能かもしれない。
 見逃し配信ができるようになったとして,使い道はふた通り考えられる。一つは,欠席者も見て勉強しておきなさい,という使い方。これは動画を公開しておくだけでよい。だが,気軽に欠席する層の学生は,見逃し配信があってもわざわざ見たりはしないような気もする。
 もう一つは,対面か配信のどちらかで受講すれば出席扱いにする,というハイブリッド開講。だが,ハイブリッドで開講する方針の大学の先生の話として,対面か遠隔,どちらかでいいよということになったら対面授業の出席者が減るという話も聞く。それに,対面授業の他に,配信の方でも課題に取り組んでフィードバックする仕組みを作るためにさらに手間をかけなければならないから,対面と両立するにはちょっと負担が大きい。
 こちらはまだ,検討中である。

逆居留守授業

 厚生労働省系の資格を出している学校に役所が指導調査に入ったときに「教員が出張に出かけている日にその教員が担当する授業が開講されているのはおかしい」と指摘された話を聞いたことがある。だが,学生と教員双方が非対面授業に慣れてきている現状なら,普段対面で授業をやっていても,出張などの際にオンデマンドで動画と課題を配信するようにすれば,休講にせずに済むかもしれない。
 そのあたり,役所としてはどんなふうに判断するのだろうか。文部科学省が認めている方法でも厚生労働省が杓子定規な法規解釈をもとに「認めない」とするケースはこれまでもあったので,気になるところではある。

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