カードゲーム大会における集客方法

「参加者を増やすためにはどうすればいいのか。」

これは大会主催者にとって常に悩みの種です。この記事は、カードゲームの大会運営における私が大切にしている考え方と、それを基にした実例を挙げながらどのようにして参加者を増やしてきたのかをお伝えします。

初めまして。「せれ」と申します。
私は、「マジック:ザ・ギャザリング(以下、MTG)」というトレーディングカードゲームの「レガシー」という遊び方を使った「KMC」という大会を運営しています。
KMCは、他カードゲームでいうところのCS、公認自主イベントと呼ばれる大会に近いものとなります。開催会場は、大阪府下の公民館やカードゲームショップです。
参加者は最低であった18名から7年で100名をこえる方々にご参加いただくまでになりました。

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「第1章」人は見た目が100%

参加者3名の大会と、15名の大会を見つけたあなた。どちらに参加されますか。
大多数が15名の大会へ足を運ぶでしょう。

もしかしたら、3名の大会は雰囲気の良い大会で、15名の大会は雰囲気の悪い大会かもしれません。しかし、それは外からは見えず、参加人数だけを見れば15名の大会のほうが見た目が良いのです。
人は見た目で選ぶのです。

大会をする上で大切なことは沢山ありますが、こと集客においては「見た目が100%」です。
見た目をいかにして良く魅せるのか。大会自体を良く魅せるのはもちろんのこと、参加してくれるプレイヤーを演出していくことも重要です。

(1-1)大きく魅せる

KMCという大会は第111回を迎えましたが、そのうち大阪以外で開催した大会は10回もありません。いうなれば「大阪レガシー大会」なのです。にもかかわらず「関西レガシー大会」と名乗って活動しています。まるで関西を代表する大会かのように。
KMCには京都を中心に大阪以外から参加してくださる方も多くいらっしゃいます。もし「大阪レガシー大会」と名乗っていたら、その方たちは参加してくださっていたのでしょうか。もしかすると「別の地域で行われている自分には縁のない大会。」となっていたのかもしれません。

また、KMCでは参加者のデッキリストを海外のサイトにも掲載してもらっています。それは、海外のサイトにまで掲載されるほど大会が大きくなったからではありません。こちらから依頼したからです。狙いは、日本のプレイヤーに「海外のサイトにもデッキリストが載るなんてすごい大会!」と思わせるためでした。その際「111th KMC in Japan」という登録大会名としました。まるで日本を代表する大会であるかのように魅せるために「in Japan」を付け加えました。結果、海外の有名プレイヤーがKMCについてコラムを書いてくださり、日本のプレイヤーもそれを見てKMCは価値のある大会なんだと思ってもらえるきっかけを作ることが出来ました。

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(1-2)目に留まりやすくする

MTGに関して宣伝方法はTwitterしかないのが現状です。参加者も大多数がTwitterで大会情報を得ようとします。しかし、情報をなかなか見つけられない大会が多いと感じています。目に留まらなければ告知はしていないのと同じです。先に目に留まった大会に足を運ばれてしまうのです。
KMCでは、大会の日程を固定ツイートに貼り付けています。情報を探してもらう時、出来る限りストレスを感じさせないためです。
人は探しやすい大会から探し、そこが開催していなければそこから別の大会を探し出します。最初に探してもらえる大会にしておかなければなりません。

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(1-3)告知は前もってする

参加者が減る要因の一つに他の大会と開催日が被るというものがあります。参加者を取り合ってもお互い損しかありません。可能なら別の日に開催するべきです。
KMCでは6か月先までの大会告知をしています。狙いは、参加者に予定を空けてもらうためと、他の大会に予定を知ってもらうためです。結果、他の大会がKMCの開催日を避けてくださるようになりました。告知を開催日1か月前にしていたら避けてくれることはないでしょう。告知は参加者へだけ向けたものではないのです。

店舗大会について感じていることですが、翌月の大会を月末のギリギリまで告知しない店舗があります。出来うるならば2か月分のスケジュールを告知するべきです。私の元には「〇月〇日大会をするのだけど、開催を聞いている大会はありますか。」という問い合わせが来ることがあります。大会を被らせたくはないが、大会が告知されていないため日程を決めかねているのです。であれば、先に告知するのも1つです。

(1-4)憧れに集まる

これはKMCの話ではありませんが、当時KMCでは、あの手この手で最大化を狙い続けながら参加者65名ほどで伸び悩んでいました。そんな時、事前予約だけで定員の65名を一瞬で埋めた大会が関東で開かれました。定員を一瞬で埋めた一番の要因は、主催者が「かっこよくて強いプレイヤー」だったからでした。憧れの元に人は集まるのだと強く感じた瞬間でした。

(1-5)プレイヤーを演出する

カードゲームは対戦ゲームです。勝敗を決め、それを繰り返し、優勝者を決めます。そして、優勝者にはご褒美が用意されています。それは高額な賞品かもしれませんし、栄誉かもしれません。
MTGの公式の大きな大会にグランプリという大会があります。参加者は2000人近くにものぼりますが、そのうちの何人が優勝賞金の金額を言えるのでしょうか。1割もいるのでしょうか。しかし、参加者は2000人近くもいるのです。参加者は、高額な賞金よりも優勝という栄誉を手に入れたいのではないでしょうか。
大会において、そういった付加価値を与えることは参加者のモチベーションになります。そして、それを参加者がモチベーションとしてくれた時、大会は「特別な価値のある大会」となるのです。
勝ったプレイヤーに価値を与えるよう行動すれば、同時に自身の大会にも価値が与えられるのです。

付加価値のひとつにデッキリストの公開があります。
デッキリストは、勝ったプレイヤーを称賛し自己顕示と達成感を感じさせることが出来ます。また、他の参加者へはデッキリストの掲載を目標としたモチベーションに繋げることが出来ます。そして、参加しなかったプレイヤーへの宣伝にもなります。デッキリストの公開は、大会主催者にとってメリットの塊なのです。
先ほど述べたことになりますが、KMCではデッキリスト公開の効果を上げる為、有名なサイトや海外のサイトへも掲載をお願いしています。

もうひとつお伝えしたい付加価値があります。それはイベントカバレージです。自分が物語の主人公になれるイベントカバレージは、非現実的で特別な体験となります。
MTG専門の国内最大手のカードショップがあります。そこで開催される大会はとても人気があります。その理由が、イベントカバレージです。自分を演出してくれるこのカードショップの大会は、他の大会にはない価値があります。
また、演出されたプレイヤーは回りから憧れの対象となります。憧れの元に人は集まるのです。

「第2章」人が人を呼ぶ

カードゲームはとても贅沢な遊びです。
お気軽お手軽のこの時代に、何時間も費やして大会に参加します。安くないお金で作ったデッキを使うなら、より多くのゲームを楽しむために人の多い大会に行こうか。となるのが自然です。
参加者15名の大会に魅力を感じて集まったプラス5名が、次回20名の大会に集まるプラス5名を呼ぶのです。人が人を呼ぶのです。

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逆に、人が集まらず大会が不成立になると、遊べないリスクから人は遠のいてしまい、悪循環に突入してしまいます。

では、参加者の人数を維持することはどうでしょうか。

大会主催者から「今の雰囲気を守りたい。」という言葉を耳にすることがあります。
・常連を大切にしたい。
・新規が入ることで大会の雰囲気が変わるのが怖い。
・現状参加者が潤っている。

一見して良いことを言っているように聞こえますが、その考えは捨てるべきです。常に最大化を目指すべきです。
確かに常連は下限の人数を確保してくれ、人が人を呼ぶために必要不可欠な存在です。しかし、常連は永遠にあなたの大会に参加し続けてくれるとは限らないのです。転勤することもあります。カードゲーム自体を辞めるかもしれません。死せる時まで運命を共にはしてくれないのです。
人のいなくなった大会に人は集まってくれません。それは常連も同じです。人は、人のいるところに集まるのです。参加者の人数が潤っていても常に最大化を目指すべきなのです。

(2-1)カードゲームは独りで出来ない

カードゲームは独りでは出来ません。対戦するにも対戦相手が必要ですし、トレードするにも取引相手が必要です。
この相手が必要なカードゲームを趣味に選んだ私たちはコミュニケーションが好きな人種です。カードゲーマーはコミュニティを好む傾向にあると言えます。
このコミュニティというのは大会を運営する上でとても重要な要素です。大会を開催するたびに定員が100%埋まるわけではありません。前回は40名だったが、今回は10名かもしれない。しかし、コミュニティを大切にすればその不安を解消することが出来るかもしれません。

「田中さんが行くなら私も行こうかな。」
「佐藤くんが行かないなら私も行かない。」
「おい、吉田!俺も行くからお前も来いよ!」

Aというコミュニティに10名所属しており、Bというコミュニティに5名所属しており、Cというコミュニティに20名所属していました。
Aは今とても盛り上がっていて、毎度メンバー全員が参加してくれます。Bは主催の自分ととても仲のよい5名なので、毎度お付き合いで全員が参加してくれます。しかし、Cの動向は読めません。前回は来てくれたけど、今回は来てくれないそうです。
Cの参加具合によって、参加者は35名から15名と大きく変わることになりました。

どれだけの数のコミュニティを取り込めるのか。そして、それらの心をいかにして掴んでおくのか。コミュニティは大会を安定させる上で重要な要素となります。

KMCではコミュニティを紹介する記事を大会サイトに掲載します。紹介されたコミュニティは思いのほか喜んでくれ、コミュニティが盛り上がる一助となります。身内色が強くなると新規参入者に嫌がれることになりますが、たくさんのコミュニティを平等に紹介することで身内色を和らげることが出来ます。加えて、その地域のまとめ役の大会という立ち位置も手に入れることが出来ます。
また、コミュニティにはそれぞれ中心的な強いプレイヤーが存在します。そのプレイヤーを紹介することで、そのコミュニティが盛り上がるのは勿論ですが、アイドルプレイヤー(憧れ)の存在が大会の価値を上げてくれることにもなります。

(2-2)参加を促す

KMCではポイントレースというシステムを導入しています。大会の最終順位に応じたポイントを付与し、それを半年で集計し、ポイントレース上位のみが参加できる招待制の大会を開催しています。ポイントレース上位にいることは強いプレイヤーの証となります。
このポイントレース、参加すると最低1ポイントは付与される仕組みとなっています。行こうか行くまいか悩んでいるプレイヤーを、この1ポイントが後押ししてくれるそうです。
また、コミュニティを盛り上げる目的で3人チームのポイントレースもしています。3名のポイント合計でポイントレースの順位を競うため、チームの他2名のために休むことが出来なくなるそうです。

「第3章」しがらみは作らない

大会を運営していると様々な方々と接点を持つ機会が増えます。手を貸そうとしてくださる方や、手を貸してほしいと頼まれる方です。
どちらもとても有難いのです。前者には、そのご厚意に感謝をしますし、後者には、新しいご縁が出来たことに感謝をします。
しかし、前者には感謝はしますが何かをしてもらうことはありません。お断りしづらい時はご厚意を受け入れますが、基本的には何かをしてもらわないようにします。後者には全力を尽くします。

大会をする上でご厚意を頂戴する時は基本的に物が提供される時です。物が自身になければ、無いなりの運営をすればいいのです。恩義が出来ればしかがらみが出来てしまいます。
大会をする上で手を貸してほしいと頼まれる時は、大会を使って人を集めたい時です。それは、自分にとっても有意義です。その方が持つ新しいコミュニティの獲得が見込めるからです。その上で、相手から感謝もされるのです。こんなに素晴らしいことはありません。
全力で尽くすと、さらに回りから声がかかります。それを繰り返すことで自身の大会が大きくなっていくのです。
しかし、前者とのしがらみが出来てしまうと、後者と接点を持たせてもらえなくなるのです。あえて前者と協力関係を築き、安定的な運営を簡単に手に入れるのも一つかもしれません。しかし、その時あなたの大会の最大値は決まってしまうのです。

「最後に」

ここまでにお伝えしてきたことを要約すると、集客する為には「人が集まる流れを作る」のが重要ということになります。しかしこれは、徐々に人が増えるのであって、爆発的に人が増えるわけではありません。爆発的に人を増やすためには、だれも思いつかないような画期的なイベントを企画したり、大会主催者が公式の大きい大会で優勝するなど、何か特別な才能を持っていなければ難しいことです。それらを持っていないのであれば、長期的な流れを作り、徐々に人を増やすしかありません。

「人が集まる流れを作る」ことが基本にあるのであれば、ネガティブなことでない限りどんなことをしても良いと思っています。それがその時失敗に終わったとしても、長い目で見ればプラスに働いてくれているはずです。

今回は「カードゲーム大会における集客方法」についてお伝えしました。
お伝えしたことのひとつだけでもお役に立てれば幸いです。
今後もお伝え出来ることがあれば記事を書いていきますので、よろしくお願い致します。
ありがとうございました。

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