見出し画像

December

【歌詞】

雪が降る 風邪の微熱を冷ますように
街並みは おもちゃ箱みたいにキラキラ
改札前 恋人たちを眺めながら
自販機の苦い珈琲をひとくち

今この瞳に映る世界に 君だけが居ない

今朝のニュース "山羊座は恋が叶う予感"
「騙されないよ」誓いは最寄りに忘れてきた
「会いたいな」一言連絡してみるけど
返信が怖くて画面をそっと閉じた

今その瞳に映る世界には 誰が居るの

サンタクロースなんか来なくても
君が居れば 他に何も要らないのに
素面で宙の向こうまで旅をしようよ
静なる夜を月の海で なんて言ってさ

不在着信が1件 まさかそんなワケないよね
あれ その店の角 君に似た人が

風邪の所為かな 病み上がりだったから
幻が観えたんだ 明日も仕事だし
もう帰らなくちゃな 家路を阻むように
見慣れた顔が 僕を覗いていた

サンタクロースなんか来なくても
君が居れば 他に何も要らないとか
笑ってほしいよ
君の気持ちは知らないけど
確かなこと 今きっと僕は変な顔してるだろう

 この曲は80,90年代の恋愛ドラマをイメージして作った曲。まるでおもちゃ箱に閉じ込めたみたいに、冬の新宿にはキラキラとネオンの明かりが広がる。この時代の女性は、クリスマスイヴに対して執着的な拘りがあったという話を昔どこかで聞いたことがあった。この曲の主人公は例によって冴えない男だが、題材にしたい時代背景も含めてクリスマスの曲を書いて観ようと思った。

 この曲は完全にオケが先で歌詞が後からだったんだけど、原案はGt.竜之介さんが持ってきてくれた。シンプルなアルペジオの重ね方と、コード進行7小節目のルートが半音オーソドックスな音からズレるのが俺には思いつかないものでめちゃくちゃ面白いなと思った。

 そのアルペジオのキラキラ感がネオンの明かり、音のズレが恋の不安と期待、みたいなつもり。オケが決まりきってると歌詞やメロディが付けやすい。メロディに関してはほぼ最初に思いついたものから変更なくそのままの形で採用している。曲構成でかなり時間かかって苦労したけど。

 Cメロの落ち感は俺が考えたんだけど、そのセクションが「さよならポエジーすぎないか」って論点でかなりモメた。俺はもうこれしかない!と思ってた。けど言われてることはめちゃくちゃ分かる。竜之介さんとスタジオ入ってる間かなり意見ぶつけ合ったけど、良くも悪くも時間と共に馴染んでいった。

 サビの「静なる夜を月の海で」ってのはもちろん「聖なる夜」→「クリスマス」と掛けている。なぜ漢字を「静」にしたかっていう話をすると、月のクレーターにはすべて名前があって、そこに「静かの夜」がある。

月の海 一覧

そもそもこの曲の舞台を80,90年代の新宿に設定して書いているのと、主人公の男は冴えない男だというのを振り返る。そんな主人公は、冬の新宿の喧騒などそもそも得意じゃないのだ。そんな街で過ごす聖なる夜より、知らない世界で二人きりでいる方が良いと思う。そう、拗らせロマンチストなのである...

 そんなロマンチストのもとに幸運が訪れる。クリスマスイヴのこちらからの急な連絡に対して、彼女はドラマのような展開で姿を現す。「サンタクロース」という言葉をサビ頭に持ってくるのはチープかなと思ったけど、ベタな展開のお話だから出来るだけ分かりやすい言葉を使っていいだろうと思った。もはや「恋人がサンタクロース」状態である。

 ただ「そのまま恋愛が成就してめでたしめでたしは面白くなさすぎる!」と思ったので、結末では彼女の気持ちは伏せたまま、主人公の「出会えて嬉しかった」という気持ちだけ表して終わりにしようと思った。
 てか急な連絡にも応えてくれて急に目の前に現れてみたいなことをしてる時点で普通脈ナシなワケないよね。それで脈ナシなら彼女が叩かれるぐらいな話だと思いたいけど、どうやら曲を書く俺の今までの経験則だと、そこは上手いことリンクしないときも多いというのが答えだった。世知辛すぎるだろ。

 完全なるフィクション。物語の原案すらない。これの長編を毎回やってる小説家、脚本家の人達ってバケモノだなと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?