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ラーメンタイマーを作った話

電子工作を始めた

 仕事でちょっとしたタイマーを自作することがあった。ある条件が揃うとタイマーカウントして接点出力するようなもの。
 それが完成し、無事に動作するのを見ると、先輩が「昔、昭和の時代の電子工作初心者は、よくラーメンタイマーを作りました」と教えてくれた。どうも、電子工作とカップラーメンは相性が良いようで、御多分に洩れず、自分もカップラーメンが好きな性分であることに気がついた。その時は電子工作にそれほど興味はなかったものの、自分のカップ麺好きと重なる部分があり、しかもカップ麺のタイマーなら自分でも作れるかもしれないと感じた。
 ラーメンタイマーにはどんなボタンを備えれば良いのか。カップ麺の待ち時間は一般に3分が多い。けど自分は2分半くらいでフタを開けてしまうのが好みだ。その方が麺に歯応えが残っていて美味しい。つまり、2つの押しボタン「2分」と「30秒」を備えれば良い。
 いや待て。最近は5分のカップ麺もある。カップ焼きそば「俺の塩」に至っては熱湯1分と記載がある。つまり押しボタンは「4分」「3分」「2分」「1分」「30秒」の5つ備えることになる。
 ボタン多いだろ。減らせないのか。「4分」のボタンは要らないかも。「3分」と「1分」の組み合わせで作ることができる。ということで、押しボタンは4つ備えることになった。

液晶表示はどうする

 電源を入れると、○分○秒と液晶に表示される。この表示がボタンを押す度に切り替わるのだ。そして、スタートボタンを押すことで、表示のカウントダウンが始まる。そうだな、スタートボタンとストップボタンも備えよう。
 待て。何か芸がないのではないか。そうだ、こういうときはあれだ。自動車の運転席にあるメーターを思い出した。運転席にあるメーターには、アナログとデジタルがある。
 視認性としてはアナログ時計のような針式が良さそうだけど、今回使用するキャラクタ液晶では表現できない。今回の液晶は文字を表示する機能しかなく、図形は不得意だからだ。そうだ、あれを参考にしよう。ホンダ S2000 のタコメーター。
 S2000のタコメーターは、左右に横たわるバーの長さでエンジン回転数を表示している。回転数が上がればバーが右方向に伸びていく。これをタイマーに使おう。○分○秒 と表示された状態でスタートボタンを押すとカウントダウンが始まる。その残り時間が減るのに従って、長いバーが刻々と1秒ごとに削られていく。

筐体はどうする

 そうだ、押しボタンや液晶を組み込む筐体(箱)はどうしよう。基板剥き出しで作品を作る人もいるけど、どうも自分としては箱に入れたい。どんな箱が世の中にはあるのか。
 電子工作や組み込み機器の完成品を見ていると、TAKACHI というメーカーのプラスチック製ボックスを利用する人が多い。え?プラスチックに穴を開ける? いや、そういうのはやったことがない。自分にはできそうにない。どうしよう。とりあえず100均か無印で何か適当な空箱ものはないか探してみよう。
 100均へ行くと、さすがの品揃えだ。大きいのから小さいのまで、透明なのから白や黒などカラーも選べる。しかし、それら商品を手に取ってみると、やはりどうしても、100均くさい。良くも悪くも、100均っぽさが漂う箱のように見える。うーん、、、ちょっと今回は、、、
 無印へ行ってみた。こちらも空箱の種類は豊富。透明なものは数が少なく、曇りガラスのように内容物がモヤッと見えるようなプラ箱から、植物で編まれたかごのようなもの、布張りされたものまで素材が豊富。しかし、今回の目的であるラーメンタイマーとして使うには2回りほど大きい商品が多い印象。指輪やちょっとした小物を入れるプラ製の箱もあるが、これらは透明(クリア)で内容物が一眼でわかるようになっている。大きさはちょうどいいのだが、これでは中身の基板がそのまま見えてしまう。意外とちゃちい仕組みで作られていることがバレてしまう。これは避けたい。
 そうこうしていると、ちょっと変わったものが目に入った。紙製の箱だ。

無印の紙箱

 これはいい。大きさもちょうどいいし、紙製だから人の手で触る感触もいい。しかも紙製だから穴あけなどの加工が容易だ。これにしよう。
 ということで、マイコンにプログラムを書き込み、それに押しボタンや液晶を接続し、乾電池ホルダと電源スイッチを取り付けた。文字にすればこれだけで済むが、実際は1ヶ月以上かかった。

自分で作ったラーメンタイマーを使いカップラーメンを作る

 電子工作の作品第一号。ラーメンタイマーができあがった。「昭和の時代はラーメンタイマーを作ったものだ」と教えてくれた先輩に完成品を見てもらった。
 すると、大きく頷きながら褒めてくれた。「いやぁ、日本でもなかなかいませんよ、自分で作ったラーメンタイマーでラーメンを食べる人は」
 え?なんか聞いてた話と違うぞ。昭和の時代には電子工作初心者はラーメンタイマーを作ったてって聞いたような気がする。それを聞いたから作ったのに、こういう人は珍しい?
「昔の初心者はよく作ったって話じゃなかったんですか」
「そう、昔の初心者はよく作りましたよ。キットがあるんです」
「え?ラーメンタイマー工作キットがあるの?」
 ネットで調べてみると、確かにある。ラーメンタイマー工作キット。また、手練れの人はさまざまな工夫を凝らしてオリジナルのタイマーを作っているのも見つかる。
 そうか、こうやって、押しボタンを幾つにしようか、液晶表示はどのように見せようか、どんな箱に入れようか店に探しに行く、初めて作るから自然と今回のような道をたどったけど、世の中には工作キットがあるのか。なんだか、友人と登山に行って、頂上で友達と会い「え?そんな険しい道を登ってきたの?こっちにいい登山道があるんだよ?」と言われた気分だった。
 振り返ってみると、先輩にうまいことそそのかされて作ってみたものの、どういう仕組みにしようか、どういう部品を選ぼうか、1つ1つ自分なりに一生懸命に考えて作ったと思う。これに没頭することができて、楽しかった。
 こうやって、電子工作を始めたのでした。

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