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フランク・ロイド・ライト展①建物を建てるための思考

 建築の学校の授業で必ず出てくるコルビジェ、ミースと並ぶ建築家の巨匠、フランク・ロイド・ライト。その巨匠の展覧会がパナソニック汐留美術館で開催されています。学生時代、不勉強だった私は学び直しの意味も含め会場に足を運びました。
 展示冒頭から浮世絵愛好家、日本好きのライトが語られ、日本との繋がりが説明されています。浮世絵は当時日本では庶民の娯楽として親しまれていたが、輸出品の包装紙に使われるなど、それほど高尚な芸術としてみなされていませんでした。一方、海外の方から見ると、ゴッホやモネも絶賛して模写してたように、非常に価値が高いものとして評価されました。この構図は、最近、北海道のニセコなど地方の観光地が海外から評価され投資されると同じで、日本人が自身の文化、地域の価値に気づかず海外から高い評価を得てはっとするみたいな感じです。

 話を展示内容に戻すと、初期のドローイング、名作と言われる落水荘や、日本にある帝国ホテル、自由学園明日館、住宅の原寸モデルなど建築好きにとっては見ごたえのある内容です。
 全体を通じ、ライトが設計に取り入れたことを箇条書きにすると

  • 地域に根ざした材料を使う

  • 女性運動家たちとネットワークを形成し職場環境、教育環境の改善に取り組む

  • コンクリートへ関心を抱き、普遍的な建築を目指す

  • 幼少期に興味があったブロックに着想をえて住宅の規格化

  • カーテンウォールや細い柱を活用し、都市の無秩序な拡大を防ぐため建物を高層化

  • 多様な文化を学び、先住民の建築の要素を取り込んだり、バクダットの都市計画案等を作成

などと、ピカソが青の時代からキュビズムなどへ変遷したように、ライトも時代の流れによりスタイルがだいぶ変遷していきました。
 こうした建物を建てる際の考慮すべき事項は、今の建築家、いや、建物を建てる方全てに必要な思考ではないでしょうか。今の技術を使うという点では、高層木造建築、3Dプリンターで作る家、VRを活用した建築体験、AIを活用した設計・積算などが考えられます。
 一方、社会問題を解決する、地域の素材を使う、多様な文化背景を理解し計画に反映させるという点は、近年、きちんと考慮されているのか疑問に思う建物も多いことは気がかりです。資本主義経済の観点で、法規制の中で法床面積を1㎡でも多く積み上げるという命題が優先された結果なのかと思われます。
 頭では、より良いもの、価値あるものを作りたいとわかっていても、仕事上、クライアントの手前、そうもいかないんだよねという声が聞こえてきそうですが、後世まで残る建物及び都市の価値を高めるためによい落しどころが見つかるとよいと考えた次第です。
 次は、展示のメインであった帝国ホテルについて書く予定です。

PS 10年いや20年?以上仕事で手書きの設計図を見る機会がなくなりましたが、建築家の手書きのドローイングをリアルでみると迫力というか人の魂、息遣いまで感じられます。あの空気感、雰囲気は一体どこからくるんだろうといつも不思議に思います。


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