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雑談#17 欲望を消費し、欲望に奉仕するのか

 noteでは書き手のことを「クリエーター」と呼んでくれる。面映いことだ。だが、そのうち本当に意味のある創造をしている人がどれくらいいるのだろう。正直、疑問である。というのは、noteには収益化の機能もあるために、いかにして読まれるか、ビュー数を稼ぐか、スキをつけてもらうか、という数値目標が掲げられ、それを達成するためのハウツーが記事としてあふれている。note以外の場所(例えば小説投稿サイトなど)の場合もある。これは、創造的な記事なのか。私には、タコが自分の足を食っているようにしか思えない。

 そんな中、面白くて一気読みしてしまった記事があった。「わたしの二次創作日記」というタイトルで、子育て中に二次創作に出会ってハマり、最初は読み手として、それから書き手として沼にはまっていき、メンタルを病んでいく‥‥という過程が赤裸々につづられている。私はこの人と境遇はまったく違うけれど、やっぱり二次創作をしている一人として、共感することが多かった。

 この人は、二次創作初心者からどハマりし、その世界の独特の不文律を知らないままに、いろいろと辛い目に遭ってしまわれたようだ。そういうことは、あるだろう。私もずいぶん昔だけれど、痛い目に遭ったことがある。だから未だに、交流は苦手だ。
 もう一つ、「わたしの二次創作日記」で興味深かったのは、「評価依存」に陥ってしまった、ということだ。pixivではじめて自作小説を公開して、閲覧数が1ついたとき、はじめてブクマがついたとき、そのときの興奮は今も忘れられない。ただ、私の場合、閲覧数が1,000を超えたり、ブクマが二桁になったりすることは稀なので、正直、読んでもらえてたらありがたいという状態だ。だが、人気ジャンルのBLとなると、そもそもの読者層が厚く、それだけ競争も激しい。ブクマが1,000単位、閲覧数にいたっては万単位でつくことが普通だったりするのだろう。そうすると、お互いに作者同士がコメント付けあったり、紹介しあったり、交流が生まれることも普通にあるようだ。「同人」という言葉で表現されているように、まさに二次創作で「同人」(その意は、同じ志をもつ人、同好の士、仲間)とつながるわけである。
 ということは、逆に仲間とつながるために二次創作を書く、ということにもなってくるわけで、書きたいから書く、表現したいこと、伝えたいことがあるから書く、というよりも、同好の士であることを作品で示して交流したいから書く、ということが、大きな目的とだというなのだろう。

 ネットでいくらでも二次創作作品を公表できるのに、なぜ(昔それが仕事だったから、本当にやりたくない)印刷物を作り上げ、それを即売会で販売するという、お金がかかって面倒くさいことをするのか、以前から不思議でならなかったのだが、それは結局、同人と出会い交流したいということなのか、と最近になって私はようやく気づいたわけだ。

 では、目的は何なのか、好きになった同じ作品を欲望をもって消費し、そして同人たちの欲望に奉仕するために作品を書く、ということなのか。その報酬として得るのが「いいね」だったり「ブクマ」だったり「コメント」「感想」だったりするのだろう。それは、病みますよ。病む気持ちがわかりますよ。これもやっぱり、タコが自分の足を食っているような話ではないか。

 これはある面、システムの問題で、人間のメンタルというのは、人からの評価が目で見え、数字で数えられるように表現されることに耐えられるようにはできていないと思う。私は仕事がライターで、以前は広報誌や情報誌に文章を書いていたが、書いたものが人から評価されるという仕組みはなかった。世に出てしまえば、それで終わりである。いいねもないし、ブクマもない。閲覧数もないし、交流も生まれない。けれども、読んだ誰かの思いや行動を変えているかもしれない。本来、書くとはそういうものだし、だからこそ人の評価を気にせずに独善的になって自由な表現ができるのだ。

 noteにしても、Xにしても、収益化という仕組みができたことで、書くことがお金に変えられるようになってしまった。そうすると、結局は書くことが欲望に奉仕してしまうことになる。言論の自由、表現の自由とあるけれど、そうしたものとは程遠いと感じる。

 私にも、評価されたいという欲望はある。けれど、書いていると、書いている時間が一番楽しい。行き詰まったり、苦しかったり、迷ったり先が見えなくなったりもするけれど、やっぱり書いているときが一番楽しい。それは魂が自由でいられるからだ。それを、失いたくないものだと思う。
 

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