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ある日の事件

 繁華街で突然、大声が響いた。
「誰かっ、あの自転車を捕まえてくれっ!」

 振り返ると、この人混みの中を自転車が猛スピードで逃げていく。後ろ姿なのではっきりしないが、男であることは間違いない。
 周辺はたちまち物々しい雰囲気となり、買い物客も通行人も一斉に足を止めて様子をうかがっていた。
 どうやら、重大な犯罪をやらかしたらしい。

 その場にいた青年が携帯を耳に当て、緊張した面持ちで何か話している。警察に通報しているようだ。焦っているせいか、要領を得ない。相手から何度となく、状況の確認を求められているのが見てとれた。
「ですから、逃げていったんです。はい? いえ、そうじゃなく、自転車がです。えっ? 違う違う、自転車の盗難じゃなくてですね……ええ、はい。そうです、犯人です。犯人が、自転車に乗ってですよっ!」

 そこへ30代半ばの男がやって来て、集まっている人に向かって言った。
「あのう、ぼく、非番の郵便配達員なんですが、その逃げていった犯人を捕まえてきますよ。これも郵便局員の仕事だと思いますので」
 たまたま居あわせたバイク屋の店主が、
「なら、うちのバイクを使ってくれ。なぁに、ぶっ壊したってかまわねえ。あんたの心意気に惚れちまったのさ」と申し出た。
 郵便配達員は礼を言うと、ショー・ウィンドウに飾られていたスズキ・ハヤブサにさっそうとまたがった。彼の目つきがキリッと引き締まる。

 リア・タイヤに白煙を絡ませ、ハヤブサが店から飛び出してきた。わたしの目の前で停めると、
「乗らないか」と、手を差し伸べる。
「えっ、わたし?」わたしは戸惑いつつも、思わずその手を取って、あっというまにタンデム・シートに乗せられていた。
「つかまってっ!」郵便配達員が言う。
「あ、はいっ」
 ものすごい加速で、ハヤブサは商店街を走り始めた。

 ものの数秒で、逃走する自転車に追いついてしまう。
「おらおらおらっ、待てや、この犯罪者めっ!」郵便配達員の怒号が飛ぶ。反射的に振り返った自転車の男は、真後ろを最速のバイクがぴったりとつけているのに気づき、よほどたまげたと見える。ハンドル操作を誤り、そのまま練り物屋に突っ込んでしまった。
 呆然と座りこんだ男の頭には、はんぺんとこんにゃくがきれいに積み重なっていて、片方の鼻の穴にはごぼう巻きが詰まっている。
 観念したらしく、正座をし、黙ってがんもどきを囓り始めた。わたし達はバイクを降り、その場で警察に連絡をする。

「で、あんた、何をやらかしたんだ?」郵便配達員が問いただした。
「手を洗わなかった……」ぼそっと答える。
「は? なんだって?」
「トイレから出た後、手を洗わなかったんだよ」
「それだけか? 他にも隠してるだろう?」と郵便配達員。
「……おれ、寿司屋やってんだけど、トイレ行って、手を洗わなかったんだ。そしたら、客にばれちまってよ。で、逃げたってわけよ」

 郵便配達員は、彼の頭を平手でパンッとはたいた。
「公衆衛生隠匿罪は大罪だぞ、おいっ!」
 わたしも同意し、何度もうんうん、とうなずくのだった。 

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むぅにぃ

こんにちは、むぅにぃと申します。 いつも空想ばかりしています。 眠ることが大好きで、必ず夢を観ます。 夢はいつもリアルで、総天然色3DMAX(@^○^@)匂い・味付き! ドビュッシーが大好き。
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