見出し画像

KODOミクのすゝめ

俺たちの…鼓童ミクが帰ってくる…!!!

「初音ミク×KODO(鼓童) スペシャルライブ(以下鼓童ミク)」とは、2020年東京オリンピックの関連企画の一つとして実施されていた、コンサートのことである。
 初演は2017年3月。2018年も6月に開催された。そして2020年、元々の主題であるオリンピックが開催される年にも公演が予定されていた。
 しかし、既知の通り新型コロナウイルスが蔓延したことで、2020年の鼓童ミクは中止となる。以降、再演の情報は流れず、鼓童ミク自体が幻になると思われた。

 そんな節に、この大本営発表である。
 この数年の間に初音ミクたち(ピアプロキャラ)を知り、興味を持った人は多いだろう。
 しかし、
 「太鼓とバンドライブってどうなの?」
 「ミクと太鼓演奏って合わなくない?」
 とお思いの方も少なくないだろう。
 この記事は、そういう方に鼓童ミクが何たるかを可能な範囲で解説し、来る6月3,4日の公演に足を運びたくなることを目指す。

選曲がアツい

 はじめに語りたいのは、そのセットリストである。
 下記に、2017年公演のセットリストを示す。

1.★BURNING!
2.千本桜
3.ゴーストルール
4.初音ミクの消失
5.エイリアンエイリアン
6.ワールズエンド・ダンスホール
7.紅一葉
8.からくりピエロ
9.ロミオとシンデレラ
10.裏表ラバーズ
11.★巴
12.★峰の風
13.リモコン
14.いーあるふぁんくらぶ
15.Celluloid
16.Packaged
17.積乱雲グラフィティ
18.★SHAKE
19.ワールドイズマイン
20.初音ミクの激唱
21.39
22.Tell your world
23.桜ノ雨

 ★印は、鼓童のオリジナル曲である。2017年は、前年にMIKU EXPO Japan Tourが開催されたり、同年に初音ミク10周年を記念したマジカルミライ2017が開催されたりしている。そのあたりからの楽曲も多い。
 そのため、このあたりのライブを経験されている方にとってはとっつきやすいだろうと思う。
 鼓童オリジナル曲もあるが、それは通常のライブで聞いたことがない曲と同じ扱いでいい。筆者の私見だが、「SHAKE」は原曲も楽しい仕上がりなので、音楽サブスク等で視聴してみてほしい。

 初開催となった2017年は、太鼓と合成音声という異色すぎる組み合わせに疑心暗鬼になり、行くのを躊躇っていた方も少なくなかった。また、公演を鑑賞するまで、どうなるか不安だった方も居たという。(現に筆者もそうだった)

 ところが、マジカルミライを始めとする初音ミクライブを担当してきたバンドメンバーと、世界各地で和太鼓の演奏を繰り広げてきた鼓童メンバーが初手に出してきた「Burning!」が、来場客の不安を抹消した。
 演奏を重ねるたびにコールの声は増幅し、瞬く間に会場と演者は一体感を形成した。

 また、マジカルミライやMIKU EXPOなどでは見ないような選曲も見られたのは、目を引くポイントだろう。「紅一葉」はそれを象徴する選曲だろう。
 この曲自体が持つ和の雰囲気が、鼓童の和楽器によってシナジーを産み、他の公演ではまず味わえない音響体験をもたらす。
 この曲に限ったことではないが、バンド演奏と和太鼓の音は大変に心地いい。アップテンポな曲では、腹の底に響くほどの太鼓の音がとめどなく押し寄せ、やはりバンドライブにはない味わいをもたらすのだ。

暴れる筋肉

 鼓童ミクのポイントとして欠かしてはならないのが、鼓童メンバーのことである。
 通常、マジカルミライなどのライブでは、ステージに立つのはピアプロキャラたちのみであることがほとんどで、バンドメンバーは大抵、ステージ端で演奏に専念する。
 
 ところが、鼓童ミクではその常識をぶっ壊しに来る。
 そもそも、ピアプロキャラたちを映し出すスクリーンは、演者たちが演奏する位置よりも高い位置に配置されている。そのため、あらゆる位置に演者が配置され、楽器の演奏を繰り広げる。
 
 先程のセットリストでいうと「初音ミクの激唱」のタイミングでは、大太鼓の下に鼓童の方がスタンバイしている。そして大サビの詠唱ゾーンで、音ゲーマーも真っ青な連打をやってのける。ちょうど、太鼓に向かって腹筋をする感じでバチを捌くため、それがどれだけ辛いかは想像に難くない。
 また「リモコン」では、鼓童の方が客席にほど近い部分で鐘を鳴らしたり、ペンライトの振りを煽ってきたり、間奏で鏡音レンが見せるバック宙もやってみせる。
 
 実際に過去に公演を見た方はご存知だろうが、鼓童の方もノリノリなのだ。
 身体に背負った太鼓を叩きながら小躍りしたり、あるいは太鼓と真正面に向き合い、激しいバチ捌きで燃えるような演奏をしたりする。

ハズレ席はない

 もう一つ忘れてはならないことがある。それは会場がNHKホールであることである。
 ある程度の方は、NHKホールの中には入ったことがなくても、その構造をご存じだろう。そう、年末恒例の紅白歌合戦の会場だからだ。
 その会場での演奏会となるため、客席はステージに向かって少しずつ段差になっている。つまり、幕張メッセやインテックス大阪と異なり、どの席でもある程度はステージを視認することができるのである。
 また、音については(私は専門家ではないので多くは語れないが)当然どこにいてもしっかり聞こえる。SS席ではない分類となる2F席、3F席でさえ、ステージをしっかり見られる上、太鼓の音もちょうどよい音圧で味わえる。

 その上、鼓童ミクでは全チケットにオリジナルペンライトが1個ついてくる。それでSS席が9,000円少々なのはお買い得すぎるのである。

畏れること無かれ

 いかがだっただろうか。私の文章力では、十分に鼓童ミクの素晴らしさを伝えることが適わない。
 それでも少しでも興味を持ってくださった読者諸君は、6月3,4日にNHKホールへ足を運んでほしい。
 一つ言えることとしたら、初音ミクが広げる新しいエンターテインメントの幅は、時に我々の想像を超えてくる。しかし、そのたびに期待を超える感動体験をこれまで幾度となく提供してきた。
 鼓童ミクはその一つの到達点とも言える。足を運べば、そこに新たな興奮があなたを待っているだろう。

 なお、鼓童ミクは公式アナウンスの通り、今回が最後である。おそらく二度と無い公演となる。
 畏れること無かれ。

たかが1円、されど1円。読者様のお気持ちは、個人サークル「Sewing Future」の創作活動(同人誌発行・衣装製作)の補助費として充てさせていただきます。