リモートワークは「リモートワーク」という言葉だけでは説明できない

「私はかれこれ2年半ほどプログラマとしてリモートワークをしている。」

これは私の自己紹介です。ただ、この一文は人によって解釈が大きく異なるな〜、と最近よく考えている。

特に「リモートワークをしている」の部分。

リモートワークという言葉は最近では珍しいものでもなく、いたるところで耳にすることがあるようになった。テレワークという名前で呼ばれることもあって、総務省ですら次のようなページを公開している。

ただ、リモートワークは、組織や会社、チームによってまったく別のものと言っていいほどの差が出ると思う。それは単純に「リモートワーク」という言葉だけでは把握することはできないのだけど、色々な人とリモートワークについて話をしていると、あまり認知されていないような感覚を覚えている。

このへんを理解しないまま「リモートワークだ!ひゃっほー!家でのびのび仕事できるぞ〜〜!」と思ってると、実際転職してから「えっ…!?全然ちゃうやん…」「めっちゃつらい…」となる危険性が上がると思う。

そこで「リモートワークができる」という言葉を考えたときに、そこに含まれる様々な条件を思いつく限り洗い出してみた。なお、私自身リモートを経験した会社は現在の一社のみなので、ある程度の主観が入っている。ただ、知り合いにリモートワーカーが多く、色々な事情を聞く機会はあるので、まったくの的ハズレ・・ということはないと思う。

リモートワーク可能な人

チーム・組織において、リモートワークで働くことができるのは誰か

・誰でも可能
・特定の職能のチーム・個人のみ
・特定のチームのみ
・特定の個人のみ
・地方に住んでいる人のみ
・特定の事情がある場合のみ(体調面や家庭の都合など)

リモートワークが許される範囲。条件が緩ければ緩いほど、リモートワークは「みんなのもの」という認識が強くなる。厳しいほど「◯◯さんはリモートワークの人」といった印象になるため、リモートワークの課題は「◯◯さん」が自力で解決に導く必要が出てくる。ただ、ここが緩いということは、それだけ個人への信頼や信用が必要となり、かつ個人もそれに答える何らかの能力が必要になる。リモートワークの条件が緩い場合、それを維持するための反動で採用が狭き門なことが多い感じがある。

リモートワークの頻度

リモートワークをどの程度の頻度で実施するのか

・常にリモートワーク
・月や週に◯回 or ◯時間といった制限がある
・何らかの条件を満たした特定の期間のみ可能

常にリモートワークを可能としている場合、一緒に働きたいが地理関係などで難しいといった問題を解決するために導入していたりする。回数や時間制限がある場合は、台風が来てたりするのに「常に出社する」というストレスから解放するのが目的かもしれない。また、何らかの条件、たとえば子供が小さい間や体調面で一時的に不安がある場合に許可するケースでは、まだ働ける・働きたいのに何らかのハンデがある場合に、それを補うために導入されている可能性がある。

勤務時間

どういった時間帯に仕事をするのか

・全員が完全な裁量労働
・リモートワークをする・しないに関わらず、の出社/退社は同じ時間
・コアタイムなどが定められており、一日のうち特定の時間帯は全員がいる
・リモートワークをする人のみ時間の条件が変わる

リモートワークをする場合、コミュニケーション方法が問題になるケースが多い。チャットなどの非同期コミュニケーションである程度は解決できるが、確実に同期的にやりとりしたほうが速いケースは存在するため、どの程度他のメンバーと働く時間が揃うかは重要な要素になる。

申請の必要性

リモートワークを実施するにあたって何らかの申請が必要かどうか

・申請は不要で、いつでもできる
・リモートワークする前に何らかの申請が必要

これは「リモートワークが簡単にできるかどうか?」ではなく、「リモートワークが社内で特別なものかどうか?」の判断材料になる。特別なものであある場合、リモートワーク側はその自覚が必要になる。いつでも誰でもできる場合は、リモートワークの問題は全員の問題になるため、解決に向かいやすい。

メインがチームでの仕事 or 個人での仕事

リモートワーカーと他のメンバーとの関わり方

・チームで日々活発にビデオ通話なども含めたコミュニケーションを取る
・チームで毎日の朝・夕といった決められた時間のみやり取りする
・チームで時間は決めず非同期なコミュニケーションのみを行う
・完全に個人作業で、成果物のみで会話をする

チームでやる場合は、リモートワークの問題はチームの問題になるため、個人の悩みとなりづらい。かつ、ビデオ通話などのコミュニケーションを頻繁に利用する場合は、リモートワークでありがちな「孤独感」はだいぶ薄れる。だが、逆に言うとリモートワークでも、すべての働く時間が個人で制御できるわけではなくなる。

オフィスの有無

出社するオフィスがあるかどうか

・オフィスが無い
・オフィスがあるが出社義務はない
・オフィスがあり基本的に出社する

オフィスがどの程度比重を占めているかで、社内制度のどの程度がリモートワークを前提として構成されているかに影響してくる。オフィスがなければ社内申請などの様々な手続きはほぼ間違いなくインターネットで完結しているはず、というかそうでないとオフィスは捨てられない。また、オフィスの比重が小さいほど、リモートワークを便利にするための道具やサービスの恩恵を受ける人も増えるため、それらの導入の敷居が低くなる。ただし、オフィスの比重が低ければそれだけ対面で他の人に会う機会は減っていくことになる。「何か本当に困ったら対面で話して解決したい」という考えがある場合には相性が悪い。

コミュニケーション手段

リモートワークをする・しない人をすべて含めてどのようなコミュニケーションを取るか

・ビデオ通話の繋ぎっぱなしや顔写真の常時共有などで、常に相互に声をかけあえる
・チャットなどの非同期コミュニケーションが中心だが、必要に応じて「誰でも」「すぐに」ビデオ通話などで会話できる
・チャットなどの非同期コミュニケーションが中心。ビデオ通話をしようと思うとリモートワークをしていない側は準備が必要
・チャットなどの非同期コミュニケーションのみ

実際に仕事をする場合はこれが毎日積み重なっていく。ここにストレスを感じると多分ツラくてやってられない。常時見えている・声をかけることができる場合は、体感的にはオフィスにいるのとそんなに変わらない。だが、「声をかけられる」「見られている」という状況は発生するので、それ自体に抵抗がある場合は相性が悪い。

リモートワーク側に制限されること

リモートワークをすることによって、制限されることがなにかあるか

・ない
・一部のミーティングなどは参加できない
・アクセスできない情報が発生する

コミュニケーションツールを活用していても、これがあると情報の格差が発生する。これについては、リモートワークをするにあたっては一切無いのが理想。格差があるメリットは一切無い。メリットがあると思っていても、それは錯覚。

組織の権限を持つ人間とリモートワークの関係

普通の社員ではなく、社内において一定の権限を持つ人、たとえば役員などがどの程度リモートワークに関わっているか

・権限を持つ人間もリモートワークを実践している
・リモートワークの制度策定などにのみ関わっている
・一切関わっていない

リモートワークは日々いろんな問題が発生する。そしてそれは個人やチーム単位では解決不可能な問題であることも多いが、その本質は実際に体感してないと理解しづらい。社内で権限を持つ人間が深くリモートワークに関わっているかどうかで、どの程度スムーズに問題を解決に導いていけるかに影響がある。関わっていない場合は、メンバー・チームに適切に権限委譲されているかどうかが重要。

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ガーッと書いたが、だいたいこんな感じかな〜と思う。

「他にこんなのもあるよ!」とか「これは違うよ!」とかがあれば教えてほしい。

なお、誤解が無いように言うと、色々と列挙したけど「これが良くてこれが悪い」という話ではない(情報格差の話とかは別)。組織やチームによって大事にするものは違うので、それに応じてもっとも相性の良いリモートワークの形は異なり、すべてにマッチする完璧なものなんて存在しない。「うちはリモートワークはダメだと思うので採用しません」というのも勿論間違いではない。

いちばん重要なのは、その「リモートワーク」と呼ばれるものが、これからリモートワークを始めようとする人のイメージするものとどの程度一致しているかであって、そこがズレると企業側も働く人も不幸になる。企業側は「リモートワーク」がどのような制度でどのような方針で導入しているのかをハッキリ明示すべきだし、リモートワーカーになろうとする人も、あらかじめ詳細に確認してきちんと把握していくのが大事だと思う。

最後に言いたかったのは、タイトルにもある通り「リモートワーク」という言葉を説明するのに「リモートワーク」という名前しか存在しないのが問題だと思っている。たとえば、リモートワークで超有名なソニックガーデンさんの実践しているものと、大企業が実験的に一部社員にのみ許可しているものとでは、もはやまったく別のものといって良いほどの違いがある。それらを一概に「リモートワーク」と呼んでいること自体どうなんだろうな〜という気持ち。

というわけで、誰かいい感じに整理していい感じに名前つけてください!!

おわり


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