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グレートデーンは怖くない

グレートデーンという犬種をご存じですか?
かのウィキピディアによると、オスは体重が54ー90kg、メスは45-68kgほど。
体高が76-100cmにもなるという、遠くから見ると恐らくポニーと見間違えてしまうくらい大きな犬です。
初めて出会ったときは、その大きさにとても衝撃を受けました。

我が家には、犬が2匹いるのですが、2匹とも牧羊犬の雑種でボールや枝を追いかけながら、走り回るのが大好き。
なので運動は、もっぱらすぐ近くにある地元のビーチで思いっきり走るのが日課です。
そのビーチで数年前までよく見かけた数匹のグレートデーンに、ある日男の子が出会った時のお話です。

そのグレートデーンの飼い主は、年配の夫婦。
最初に見かけた頃は確か3匹(いや、恐らく3頭と数えたほうが正解なのかもしれません)いました。
広いビーチを悠々と歩き、とても穏やかなそのグレートデーンたちは、訪れる人たちの目を引きます。

犬たちが大きいからだけでなく、実はこの飼い主夫婦も静かなビーチで注目を浴びる理由でもありました。
休暇を楽しみに都会からやってくる人たちに人気のある田舎町ではありますが、派手な観光施設はないので、夏以外は静かな地元のビーチで、このグレートデーンたちの飼い主夫婦は時々怒号を飛ばしていました。
穏やかな性格の犬たちですが、他の犬たちに出会うと、遊びに誘うように興奮して走り出すこともあります。
そんな時にその飼い主夫婦は、犬たちに吠えます。

「近寄るんじゃないよ!」

周りに話を聞くと、その夫婦とトラブルになった人たちは少なからずいるようでした。
犬同士が興味を示して近ずこうとすると、こちら側が責められてしまいます。
とても犬に対して寛容な人たちが多い地域で、犬に罪はないのを多くの人たちが承知しているため、その夫婦の行動は少し目を引きました。

ある夕方、我が家の犬たちと散歩を終えて帰ろうとビーチと駐車場をつなぐ小道を抜けようとしていたところ、誰かがなにやら騒いでいるのが聞こえてきました。
声がする方に目をやると、恐らく5歳くらいの男の子がそのグレートデーンたちに囲まれて泣いており、おそらくその男の子の家族であろう女性が数人、どうしたらいいかわからない様子でみていました。
自分の背丈とほぼ変わらない犬たちに近寄られ、離れようと逃げる男の子を犬たちは楽しそうに追いかけます。
そこでその飼い主たちは、その男の子に大きな声で強くこう繰り返すのです。

「泣くのをやめろ! 走るのをやめろ!」

大きな犬たちに追いかけられ、そのうえにまた知らない大人に叫ばれる。
それはその男の子にとって、恐怖以外の何物でもなかったでしょう。
その光景を呆気にとられて見ているうちに、まもなく飼い主たちは何とか犬たちの興味を男の子からそらすことに成功し、離れていきました。

思い返せば、私がまだ10歳くらいの頃、たまに現れる野良犬たちに一度追いかけられたことがあります。
一緒にいた妹と何とか公園の滑り台のてっぺんまで登って、二人で泣いて助けを求めました。
大人になって犬を家族として迎えてから、彼らの素晴らしさを学びましたが、それに対しての知識が無かった当時の私たちにとっては、その経験はとても怖いものでした。
今思えば、逃げる私たちと追いかけっこをしていたのかもしれません。

犬は友だちになれるんだということを、いつか知ってくれる日が来るといいなと願いながら、あの日ビーチで泣いていた男の子のことを、思い出してみました。









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