[書評] 0秒経営 組織の機動力を限界まで高める「超高速PDCA」の回し方

著書:星崎尚彦

こんにちはシステム開発会社でWebディレクターをしているmugicokeといいます。
日々Webやマーケティングの勉強をして(いるつもり)おりますが、今回は先日会社近くの書店で購入した、メガネスーパー社長である星崎尚彦氏の著書の書評を掲載させて頂きます。

はじめに

ここ数年、メガネスーパーにおけるEC好調の記事、またその好調を牽引された川添氏のインタビュー等を度々目にしてきた。
川添氏はメガネスーパーに入社された2013年、クリエイティヴの改善、メルマガ運用の改善等を皮切りに様々な改善を行ったそうだが、そう言ったものの1つとして『【キャラバン隊】による店舗改善』なるものの記事を先日Webで拝見した。
その【キャラバン隊】とは、星崎社長を隊長とし、店舗の売上アップの為に役職・部署・地域を超越して活動・支援する有志の集団とのこと。
星崎社長自ら毎週末に大型車を運転し、社員40~50名、多い時は80名くらいで店舗を回り「最新の店」に変えていく。
社員は店内、店外のそれぞれの役割に分かれるが、その一つでポスティングがあり、川添氏はそれを担当しているとのことで、その際は3万歩も歩くと事もあるらしい。
EC担当者が3万歩!しかも社長自ら運転をしてそんな泥臭い(失礼ながらそう思ってしまいました)ことを!?
そんな社長はどのような人なのだろう?
そんな興味・好奇心が芽生えた矢先、出版されたばかりのメガネスーパー社長で星崎氏によるこの著書を書店で発見し、思わず購入した。

本書の概要

幾つもの企業再生を行った星崎氏が、メガネスーパーの社長に就任したのが2013年。
当時の業界では若者向けでファッション性が高く、リーズナブルな商品を打ち出してきた新興勢力の台頭により、老舗のメガネスーパーは窮地に追い込まれていた。

その様な中、「自身が現場になる」と言う意思の元、お店の店先で社長自ら呼び込みをしたり、ポスティングをしたりしつつ、顧客の声に耳を傾けていった。
それと共に、元気が無くなっていた社員たちの声も聞き、様々な改善案どんどん投入してく。

普通の企業であれば決定事項の実施に多少の準備期間をもうけるが、メガネスーパーは決定後即アクションである。極端な話、翌日にはアクションを開始する。
そんな素早いアクションを繰り広げ、窮地に追い込まれていた経営もV字回復を果たす。

星崎氏はとにかく熱い男であるが、決してワンマン社長ではない。
眼鏡のプロフェッショナルである社員に対する尊敬の念を持ち、社員としっかりコミュニケーションをとり、彼らの持つプロの視点や技術をお客様のために活かすことを説明/理解してもらった上で改善を実施していく。
当初は完全な部外者扱いであった星崎氏だが、社員へのリスペクトと顧客愛を含んだ「熱い想い」は徐々に社内で浸透していき、いつしか社員が星崎氏を引っ張るようになっていく。
経営再建に目処が出てきた後は、『アイケアカンパニー』として新興のライバル会社とは違ったブランディングを打ち出し、それも見事成功。その勢いは2018年現在、更なる勢いと共に加速中である。

サブタイトルにある、あのお馴染みのキーワードがでて来ない。

星崎氏の熱さ溢れる本書を一気に読んでしまい、そのタイトルである『0秒経営』を実現する為のスピード感にも思わず感化された。
その余韻に浸っている中、ふと思った。

あれ?『PDCA』と言うキーワードがでてこないな?

そう『PDCA』と言う、今やお馴染みのこのキーワードが、本文の中では一言も出てこない。

達成したい目標を立てて計画を作成 ⇒ 計画に沿って実施 ⇒ 実施後はその評価 ⇒ その評価に基づく次のアクションを行う。
PDCAはザックリ言うとこの様なことだが、自分自身、社内外問わずよく口にするキーワードだ。
正直これを口にする事で、なんとなく出来ている感と言うか、自己満足とに浸っている感が自分自身の中で多少ある気がする。
その為か、他人から『PDCA』と言う言葉を聞くと、『本当に分かっている?』、『口で言うのは簡単だけど、それを実施できている?』と、少し斜に構えてしまう時がある。

以前、在米の有名なマーケターの方とお話をさせて頂いた際、『日本人はよく分からない英略語をやたらと使いたがる』と言っていた事を思い出した。
自分はそんなベタな日本人だからか、そう言った略語をよく使っているし、新しい略語を見ると『覚えなきゃ!』と躍起になってしまう(でも覚えが悪くてなかなか覚えられないのだが)。
しかしそれで覚えた言葉の幾つかは上っ面だけの知識であり、芯からそれを理解できていないのかもしれない。

本書の本文内で『PDCA』を使用していないと書いたが、もしかしたら星崎氏はあえて『PDCA』を使用していないのかもしれない。
そんな上っ面な言葉ではなく、見て、知って得た深い理解を基に想いを込め、実施する。それを例えば1ヶ月単位で検証と言う杓子定規的なやり方じゃなく、きっかけや気づきがあったら即評価を行い、次のアクションを即行う。
星崎氏の言う『0秒経営』とはまさにそれだ。
『PDCA』と言う言葉は使っていないが、下手なプレゼンの説明よりも腹落ちできた。

最近は以前より勉強する時間が増えて自分自身で多少の満足感を感じているが、その知識の多くが上っ面なのかもしれない。大事なのはその知識知見をどう活かすかだ。
本書を読んだ後、『勉強したのはすばらしい。ならばそれを活かす為にアクションを起こせ』星崎氏からそう言われた気がした。
知識を付ける事は大事だが、それ以上に大事なのはそれを行動に表すことである。
得た知識、理解をどうアウトプットして社内外で活かすか。
本書を読んで自分は『アウトプット』、『スピード感』の大切さと言うものを改めて感じ取ることができた。

【最後に】もう1つでてきていないワード

本文の中で、実は『EC』と言うキーワードも出てこなかった。
読み終えた後、気になって川添氏のプロフィールを見返したところ、川添氏は前職でも星崎氏のもとで活躍していたらしい。
星崎氏がメガネスーパーで最初に改善を手掛けた旗本6店を『直轄領』と呼んでいたが、それに習った歴史的表現を使うとしたら、川添氏は恐らく旗本となるのだろう。星崎氏が徳川吉宗としたら、紀州から江戸に連れてきたお庭番に当たるだろう。しかもその筆頭格、いやもしかしたら家老の様な存在なのであろう。
なるほど、今更『ECも業績V字回復』など書く必要もないわけだ。星崎氏にとって『EC』も『実店舗』と同意義なのだろうし。

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