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青い車

スピッツの「青い車」を皆さんご存じでしょうか?

「ロビンソン」が入った「ハチミツ」の一つ前のアルバム「空の飛び方」に収録されている曲です。シングルにもなっていて、1994年6月28日発売になっていますから今から26年前ですね。メンバーが26歳~27歳。若青年期といっても良い、若さと経験が良い感じにブレンドされたひとつの魅力的な時期と言ってもよいかもしれません。

この曲、歌詞の内容から「死」を歌っているのではないか?という説があるようです。その理由としては作り手の草野さんが「死とセックス」について歌っているという趣旨を以前言っていたとのことですが、それについて私が思っていることを少々お話したいと思います。

歌詞に触れてみましょう。

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おそらく「死」というキーワード、そして車で二人で行こうというところから心中?という解釈をされる方もいると思うのですが、たぶん、ですが草野さんの「輪廻」をどう捉えているか?を慮ることによる解釈の違いなのではないか?と思います。

私は草野さんは実は可愛いロマンチストだと思っています。

可愛いものを愛でる事が好き。可愛いものを見つける事が好き。

人が気がついてないひっそりと生きているようなモノが好き。

カマキリが好き。露草が好き。

この町で俺以外君のかわいさを知らない(大宮サンセット)

話は逸れましたが、草野さんは”ひっそりと、でも懸命に生きるもの” を可愛いと思う傾向にあると思っています。むしろ生きることに対して前向きとはいわずとも、”生きること”をできるだけ肩肘を張らず楽しみたいと思っている方なのではないかと。

では、「輪廻」をどう思っているのでしょうか?

この事について触れてるのを残念ながらどこかのインタビューなどで見たことはないように思います。

輪廻転生:人が生まれ変わり、死に変わりし続けること。▽仏教語。「輪廻」は車輪がぐるぐると回転し続けるように、人が何度も生死を繰り返すことを指す。「転生」は生まれ変わること。「転生輪廻てんしょうりんね」ともいう。(三省堂 新明解四字熟語辞典より)

輪廻、というか輪廻転生なのではないか?という仮説で進めたいと思います。何度でも生まれ変わるということに重点をおきたいのです。

これは恋の始まりの歌だと思っています。

初めて両思いになる。ひとりではない生活が始まる。それは期待と恐れとがごちゃまぜになった感情と、いままで一人で完結してきた世界からの脱却なのではないでしょうか。永遠に続くと思われたひとりの世界から踏み出すのは嬉しい?怖い?すばらしい?天にも昇る気持ち?それを"掟に飽きる"と表現する草野さんのぎゅっと詰まった集約語彙力。

君の青い車で海へ行こう…曲の疾走感と共に彼の決心と高鳴りが伝わってくるようではないですか?

ひとりでいたときに感じていた恋のイメージはそんなの本当にあるんだろうか、本当は想像しているより綺麗なものじゃないんじゃないか、本当にこれはホンモノの恋愛だと信じていいのだろうか…逡巡したのかもしれません。

でも、思うんです、彼は。

いや、これはホンモノだと信じようと。君の青い車で海へ行こう。きっとこれは輪廻転生しても何度生まれ変わっても続くような本物の愛だと。信じると決めたと。そうそう、生きるということは木々も水も火も同じことだから恋も大きな生きるという丸い輪廻の中の一つなんだよ…

私はこの青い車をそう聞きました。素敵だと思いませんか?心の落書きが踊り出しちゃうんですよ。可愛い…

現実もちゃんと見つつ、でもロマンを抱かずにはいれない若青年の恋の歌。

もしかしたらそんな大きなスケールの恋の歌なのかもしれない…と思って聞いてみるのはいかがでしょうか?


写真提供: <a href="https://www.photo-ac.com/profile/441390">七彩</a>さんによる<a href="https://www.photo-ac.com/">写真AC</a>からの写真