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自棄っぱちのエゴティスト



我が家は初夏から本番の夏に掛け、身動きの取れないお家柄です。

まずもって飼い主のわたくしが夏バテを起こしやすく、炎天下の中外出すると秒でノックアウトされること。

それともう一つ、我が家にはミニチュア・シュナウザーの十々丸(ととまる)と言う犬がおりまして、いつの間にやら齢も八歳と相成ったのですが、幼い頃からお留守番訓練を散々頑張ったにも関わらず、多分これはもうこの子の生まれついての性分なのでしょうが、ひどく寂しがり屋で分離不安症気味なのですね。気味と言うかもう分離不安なのでしょうね。

わたくしと主人が同時に二階に上がって自分だけ居間に取り残されると「ヒーヒョ!ヒーヒョヒョ!アヒョオォォー!アヒヒヒョォーオ!!」と云う、お前は一体何の鳥なんだよと云う様な鳴き声で叫び続けますし、一度やむにやまれぬ事情で家でのお留守番を余儀なくさせた際は、翌日ストレス性の大腸炎を発症し下血が止まらなくなると云う有り様。

あの時は凄かった…病院へ行き注射を打ち薬を処方して頂き、血は何とか止まったものの水の様なうんこが噴水の如くトトの肛門から噴出され家中のあらゆる物に飛沫汚染を施し、トトには申し訳ないけれどどうにもこうにも笑いが止まらなかった…。

いや、可哀想だったのですよ。随分と心配しましたし汚物は消毒しましたし介護もしたのですが、何かもう家中うんこまみれなのが面白くて面白くて。わたし頭おかしいのかな?

そんな寂しさ豆腐メンタルドギーマンなので、外出の際は必ず同行させますし、ホームセンターも犬OKの所にしか行きませんし、車の中でのお留守番は何でだか平気なので車内でのお留守番に適した季節限定でしか遠出や時間の掛かるお買い物やアミューズメント巡りなどと言った外出が出来ないのです。

世の中には「動物と人間を同等、若しくは動物を上位として持っていく考え方はおかしい」と言う考えの方も居られるでしょうが、やはり生き物好きのわたくしとしては、犬でも猫でも鳥でも虫でも爬虫両生類でも齧歯類でも何でもかんでも「一緒に暮らして貰っている」と云う意識と「生き物は不平不満を訴えられない、ならば人間が彼らが少しでも過ごしやすい様に愛を持って出来る限りの環境を整え、学び、人間側が努力や忍耐をすべき」と云う考えを持っているので、煉獄の様な陽気の時期はこの様に喜んで引きこもるのです。クーラーすーずしー。

そんな中でそれでもこの季節になると、今でもわたしは心に引っ掛かりを感じてしまいます。四年前のあの夏に、黒猫を保護した事は本当に正しかったのかと。
夕暮れ、カラスやヘビなど子猫の天敵も多い自然の中、いくら待っても現れない母猫、迫る動物病院の診察終了時刻、それら自然に反した人間側の、ある意味勝手な事情にかなり心を焦らされていた故の「保護」と言う判断。

もしかしたらもう数分でも待っていれば母猫が戻って来ていたかも知れない。命を懸けて産んだ子供が一匹突然消えてしまった事を母はどれだけ悲しんだであろうか。母の記憶のない黒猫はどんな思いで生きているのだろうか。我が家で今こうして生きている事を、でもそれが幸せと思ってくれているであろうか。

いくら考えてもやむ無い事なのは分かっているのですがね。母と子の絆を千切ってしまった身なのに、いけ図々しくも己の心までも千切ってしまうと言う。トトの豆腐メンタルはわたし似なのでしょうね。すまんな…こんな飼い主で…。

なるたけ精一杯の愛情をもって健やかに、共に暮らして行く事が、せめてもの母猫さんへの償いであり契りなのかな。

みんなそうだよね。
千切ろうとも、結ぼうとも。