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昔の話ですが……

今からちょうど30年前、転勤で割りと僻地に移り住んだ。

社宅はまだ新しく、風呂もトイレも居間もキッチンも広く、申し分の無い造りであった。

ただ、国道沿いでトラックも多く通る為、物凄く音が煩いのだが、他は特に不満は無かった。

ちょうど、国道と川に挟まれる感じの立地で、夏は川の流れる音が心地よかったが、車の音さえ無ければ最高の環境だったに違いない。

私が入った社宅は、5戸ある内の1番大きくて広い造りだったが、本来は社長が来た時に泊まる専用だった為に、常時空けていたのだが、社長の了解を得て私が入る事となった。

僻地だった為に、社員や業者が来た時には、旅館代わりに使っていたらしい。

私が転勤するかなり前に、その業者の一人が、夜も暮れた為にそこに泊まる事となったのだが、夜中に帰ってしまったらしい話を小耳に挟んだ。

よく出入りする業者だったので、それとなく聞いてみたのだが、私が今そこに住んで居ることを知っているので、なかなか口を割らないのである。

頼むから教えてよ〜❗と迫っても、終いには何も無いですよ〜と。

パート従業員も社員も、恐らく半数ほどは知っているようであったが、皆で口裏を合わせて断固として口を割らないのである。

まぁ、過去に引っ越した先は例外無く瑕疵ありだったので、今回も例外であるはずも無いとは思ってはいたのだが、新しい家であるし、その家で何かあったワケでもあるまい。

まぁ、その内分かるだろうと、それからはあまり気にせず、ほぼ忘れかけていた。

暫くの時が過ぎ、まだ小学生であった娘が外で遊んでいて、そろそろ家に入ろうとした時に、ドアの上の欄間のような感じでガラ張りになっていたその向こうに、大きな顔があって娘の方を見ていたと。

怖くて入れなくて、私が帰るまで外にいた事があった。

チャランポランな娘たが、嘘は言わないので、多分本当に見たのだろうと思った。

それからと言うもの、夜にテレビを見ていると、何か黒い物が凄い速さで床を動き回るのが見えるようになる。

直接見えることはなく、テレビや他の何かを見ている時に、視界に入る形で見えるのだ。

ちょうどカツラと言うか、ウィッグと言うか、部分カツラみたいな感じで、物凄く気持ちが悪かった。

それは、ただ見えるだけで、特に金縛りに遭うとか、物音がするとかそのようなことは無かった。

そのアデ◯ンスかアートネ◯チャーか、はたまたスベ◯ソンか、何かは分からないが、もう慣れてしまって、見えてもいちいち言わないし確認しないし、ほぼ無視していた。

そんなある日のこと、私が寝ている部屋は湿気でカビが生えないように、押入れの戸を開けっ放しにしていた。

その袋棚に、靴が入っていた箱を幾つか置いていたのだが、夜中にいきなり落ちてきて、私の頭の近くだったのでビックリしたが、空箱なので万が一当たってもちょっと痛いくらいであろう。

また落ちてきたら面倒くさいので、タンスと床の間の隙間に入れようとしたが、びちびちで、無理矢理押し込んで眠りに着いた。

朝起きると、その箱がタンスと床の隙間から出ていたのである。

てか、誰や❗って、娘は寝たら朝まで起きないし、私が寝ぼけてやらない限り、出るはずもなく、しかも無理矢理突っ込むほどキツイのに、誰かが故意に出さない限り、出てくる事はあり得ない。

そもそも袋棚から落ちて来るのもあり得ない。

何かの拍子に落ちるように、すれすれで置いて居たワケじゃない。

これはヤバいでしょ(⁠@⁠_⁠@⁠)

それでも、そういう事に慣れている私は、気にしないで忘れかけていた。

すると、ある日の夜、台所から誰かが歩いて来る。

台所から居間に移動し、ソファにぶつかり方向転換、私の部屋を覗き込む形で足音が止まる。

戸を開けていたので、寝ている私を見る形である。

流石にどんな奴か確認してやろうと起き上がったが、誰も居ない。

姿が見えないのではどうにもならないので、そのまま寝る事にしたのだが、そのまま足音は娘の部屋に入っていった。

業者が夜中に帰ったのは、きっとこれなんだろうと思った。

娘も押入れの中で何かが壁を叩いてると。

後から聞いた話では、若い男女が為さぬ仲で一緒になれなかったとか、親の反対で一緒になれなかったとかで、ダイナマイトで心中を図った場所だったらしい。

少し離れた川の上流では、母親が娘を川に突き落としただったか、娘が母親を突き落としただったか、そんなこともあったらしい。

そうこうしている間に、また転勤となり、そこから離れる事ができて、ラッキーだった😂

おわり

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