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伝わるイベントレポートを書くために気をつけていること

ウェブを中心にライターをしていたり、企業でオウンドメディアを担当していたりすると、一度はイベントレポートを書く機会があるのではないかと思います。割と気軽に「書いてよ〜」なんて依頼を投げられがちですが、うっかりすると全文書き起こしになってしまったり、起きた出来事の箇条書きになってしまったりと、一筋縄ではいかぬものです。

まあイベント自体が面白ければバーっとまとめたもので十分読まれる場合もありますが、せっかく書くならちゃんとイベントの様子を伝え、読んでよかったと思ってもらいたいですよね。

私自身イベレポが得意なわけではないのですが、昨年から月に数本ペースで書き、フィードバックをもらうなかで、徐々に自分なりの方法論が掴めてきた気がしています。日頃あまり振り返る機会がないので、イベントレポートを書くときに気をつけていることをまとめてみたいと思います。

◎導入の書き方

・問題意識、目的、誰が、何をするかを示す

導入なんて「イベント名と日時を並べといたらええやろ」と思うかもしれませんが、導入はそのイベントにどのような価値があるのか、そしてなぜこのイベレポを読むべきなのかを説明するパートです。気を抜かず丁寧にいきたいところ。

そのためには大体「(1)イベントの問題意識やその背景」と「(2)イベント/主催者の目的」、「(3)イベントで誰が何をするか」を整理して伝えるよう意識しています。

トークイベントの場合は「(1)について話し合う」が目的の場合がほとんどなので(2)は省略するケースが多いです。

例えばこんな感じ。

「仮想通貨」や「ビットコイン」といった言葉が、テレビのニュース番組からも聞こえてくるようになった。最近では、IT技術を駆使した金融サービスが次々と登場している。新たな金融サービス群は「FinTech」と呼ばれ、従来のお金のあり方に変革をもたらすと期待が集まっている。(1)
本来、複雑なものでありながら、日々の生活と密接に関わるお金を扱うサービスにおいて、UIデザインはどのような役割を果たしているのだろうか。(1)
UIデザインを追求するコミュニティー「UI Crunch」の第11回では、「金融業界に革命を起こす、FinTechスタートアップのUIデザイン」と題し、FinTech分野におけるデザイナーの役割について実例をもとに話し合った。(3)(https://unleash.tokyo/2017/09/19/ui-crunch-11th-report/)

書き手の主観が入るイベレポの場合は、自分の問題意識、何を期待してそのイベントを訪れたのかを加えるといいと思います。

・“どんな誰が”を明示する
(3)で「誰が」を紹介する場合には、ただ「所属+名前」を並べるだけでなく「なぜその人たちなのか」を説明できると、よりそのイベントの価値が伝わるでしょう。例えばゲストが複数いる場合それぞれの立場を書いたり、

(例)HR Techの最先端で事業を展開する佐野氏、独自の成長を遂げる「ほぼ日」の組織を支えてきた篠田氏(https://unleash.tokyo/2017/07/25/hrtech_kaigi/)

一人一人を形容するのではなく、どういうゲストを呼んだのかをまとめたりなどします。

(例)ゲストスピーカーにはウェルビーイングとメディアの両テーマに関わりのあるお三方をお迎えしました。(http://soar-world.com/2017/12/15/event20171016/)

◎イベント本編の書き方

本編はいろんなケースがあると思うので、今回はプレゼン、複数人のトーク、ワークショップ/ハッカソンの場合を例に挙げて解説していきます。

・プレゼンは「トピックの提示+詳細」で整理する
基本はプレゼンに沿って話された内容を要約していくので、割とやりやすいかもしれません。

ただしプレゼンをそのまま書き起こすと死ぬほど長くなる場合もあるので、冒頭の問いと紐づくトピックを2〜3個をピックアップして、各トピックにつき1段落を意識してまとめていくことが多いです。ここは深堀した方が良いなというトピックがあれば複数段落使って深堀りして、他のトピックを省略する場合もあります。(構成の話はいつか別の機会に...)

だいたいどの段落で何を書くかが決まったら本文に取り掛かります。イベントレポートで人が話している様子を書く場合、「地の文+発言」or「発言のみ」がメジャーな書き方だと思います。前者の方が情報の密度を濃くしやすい、後者の方が気軽に読みやすいといった特徴はありますが、まあ好みかなと。

「地の文+発言」〇〇さんは〇〇について次のように指摘します。 〇〇:〇〇は××だと考えています。対して△△さんは◽︎◽︎という捉え方を示します。 △△:◽︎◽︎という捉え方もあるのではないでしょうか?
「発言のみ」〇〇:〇〇は××だと考えています。△△:それは◽︎◽︎とも捉えられるのではないでしょうか?

個人的には「地の文(トピックの提示)+発言(詳細)」を1つの単位として構成を考えるようにしています。例えばこんなような。

(例)アルマノ氏は信頼低下を引き起こした原因の一つは、政府と市民の対話不足にあると考えている。(トピックの提示)
アルマノ氏「政策に関連するミーティングのうち、政府と企業やポリシーメーカーの間で行われているのが70%、残りたった20%しか労働組合やNGO、市民団体との対話に割かれていません。一般市民の影響力が圧倒的に少ない(詳細)(http://unleash.tokyo/2017/11/06/meetup-with-alberto-alemano/)

・複数人のトークは「何を話しているのか」地の文で補足

対談の場合も構成のつくり方はさっきと同じです。ただプレゼンほど流れが整理されていないことが多いので、結構思い切って交通整理する場合もあります。また当日話されていない内容でも、記事だけ読んだ人が理解しづらいかなと思えば、情報を補足するケースもあります。

こちらも「地の文+発言」or「発言のみ」は好みですが、私はトピックごとに3〜5発言くらいが並ぶ形でまとめることが多いです。いずれも「地の文(トピックの提示)+発言(詳細)[ + 地の文(前の発言から次の発言への繋ぎ)] 」の単位で組み立ててます。こんな感じ。

http://soar-world.com/2017/12/15/event20171016/

地の文は前の発言を補足し、次の発言の方向性を示す形で書けると、読者のストレスが減るかなと思います。

また、専門的だったり抽象度が高かったりして、読者が置いてかれそうな場合は、次の段落に移る前にここで話してるのはどういうことかを2,3文付け加えると、情報が羅列されてるだけのイベレポから一皮むけた感じになります。

また、これはライターがどうこうできないケースも多いのですが、発言のバランスはなるべく偏らないようにしてます。ほぼ一言しか喋ってないみたいな場合は、提出先と事前に書き方をどうするか相談しておくと安心かもしれません。

・ワークショップは情景が浮かぶように
ハッカソンやワークショップを取材する機会もあるかと思います。基本的に起きた物事を説明していくので楽に思うかもですが、ぼんやり書くと現場にいなかった人には一ミリも伝わらないテキストになってしまうことも。

読んで絵が浮かぶように「誰が」「どこで」「何をしているか」わかりやすく分解して書きましょう。あとハッカソンやワークショップ用語にも注意です。「ワールド・カフェ」や「ペーパータワーゲーム」などワークショップではみんな知ってる言葉であっても、ターゲット読者によっては説明を加えた方がよいかも。

(伝わりづらい例)ワークショップではグループで“愛着”や“誇り”についてワールド・カフェを行った。
(伝わりやすい例)ワークショップでは数分ごとにテーブルに座る人の組み合わせを変えながら対話を行う“ワールド・カフェ”の手法を採り、「愛着はどのようなときに生まれるのか」「誇りはどのようなときに生まれるのか」について、参加者が自由に意見を交わした。

http://unleash.tokyo/2018/03/30/mimicri_community/

下の文章には主に3つの要素を追加しています。
・テーブルに座ってる人が議論する(誰がどこで)
・ワールドカフェの手法で入れ替えを行いながら対話する(どのように)  
・愛着と誇りについて答えを出すのではなく自由に話す (どのように)

参加者が全体に向けて意見を共有する場面でも先ほどの発言部分の書き方に沿って、何について何の意見を交わしたのか(トピックの提示)+ それでどんな発言が出たのか(詳細)かを整理していきます。

「愛着はどのようなときに生まれるのか」「誇りはどのようなときに生まれるのか」について、参加者が自由に意見を交わした。(トピックの提示)
愛着は「『好き』が重なっていったとき』や「苦労を乗り越えようとしたとき」に、誇りは「役割を果たせたとき」や「何かを言い続けたり実践し続けたりしたとき」といった意見が挙がった。(詳細)

よほどライブ感が求められているではない限り、その場で話している内容をそのまま文字にするのではなく、順番の入れ替えや情報の補助、要約してあげた方が読みやすくなるのかなと思っています。

◎締めの書き方

・導入の問いへの回答、あるいはヒントを切り取る
ここまでグダグダと偉そうに述べてきましたが、締めを書くの超絶苦手です。導入の問いかけに対してどんなヒントが得られたか、頭をひねって唸りながら書いてます。

もうひとつ意識しているのは記事の目的です。例えば主催する団体がイベントのアピール用につくりたいならそのイベント自体にポジティブな印象が残るよう未来に向けて開かれた締めを書きたいですし、特定の分野に特化したメディアに掲載するレポートなら、その媒体の読者にビビッドな視点を提供する締めを届けたいものです。

基本的にイベントの数時間で明瞭な結論が出ることってないので、こういう視点が得られたねとか、こういう方向に議論が盛り上がったのはこういう意味があるよねなどなど。自分なりに気づきを切り取るよう意識すると良いかなと思います。

◎最後に

これがベストプラクティス!なんて言うつもりはないので、他の皆さんが気をつけてることもぜひ教えてください〜!(個人的にはブロガーの方がよく書かれている感想ベースのイベレポも大好物

最後まで読んでいただきありがとうござました!