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負けることの希望—— 『Losers』

Netflixで『Losers』というドキュメンタリーシリーズを観ている。

ボクシングやサッカー、バスケットボールなど、スポーツ選手の「負け」にまつわる8つのエピソードからなるシリーズだ。

1話目には父親のすすめでプロになった黒人ボクサーが、キャリアの絶頂期に選手生命を絶たれ、どのように第二のキャリアを切り開いたのかが描かれている。

元々ボクサーとして戦うことに葛藤していた彼は、KOされたときに「安堵」を覚えたと振り返る。そこから、彼は執筆や俳優、舞台監督、ボクシングの演技指導など、輝かしいキャリアを手にする。あれ、この人全然「Loser(負け犬)」じゃないのでは。

心理学者のマーティン・セリグマンによると、人が失敗や挫折から立ち上がるには以下3つのPから抜け出す必要があるという。

自責化(自分が悪いのだと思うこと)
普遍化(ある出来事が人生のすべての側面に影響すると思うこと)
永続化(ある出来事の余波がいつまでも続くと思うこと)

私が彼の立場だったら、しぬほど自分を責め、もう人生終わりだ、この先ずっと良いことなんてない...と落ち込んだはずだ。

しかし、彼が3つのPには囚われることはない。なぜなら、そもそも彼はボクサーである自分にしっくり来ていなかったから。彼にとって負けることは、父親に与えられた「ボクサーという役」からの解放でもあったのだ。

エピソードの終盤、彼はこんな言葉を口にする。

マイルス・デイヴィスは言った。自分らしくプレーできるまで時間がかかる時もある。いつも自分を追っている。お前は誰だ?と。それでいい。

いつか彼のように思いっきり挫折する日がやって来たなら、「私は誰だ?」と自分に問いかけてみたい。もしかしたら、自らに課せられた役から抜け出す手がかりが見つかるかもしれないから。

そんな負けから生まれる“希望”をみせてくれるエピソードだった。早く他のエピソードも一気見せねば。

最後まで読んでいただきありがとうござました!