パブリック・シェイミング(Public Shaming)という暴力
米国の政治コメディ番組に、ビル・クリントン元大統領との不倫スキャンダルで有名になったモニカ・ルインスキーが出演していた。
テーマは「Public Shaming(パブリックシェイミング)」直訳すると「公的な場での辱め」、大勢の前で特定の人を吊るし上げる行為を意味する。モニカ・ルインスキーは、20年間、米国で最もPublic Shamingを受けてきた人物の一人だ。彼女は自身のTEDトークで当時の体験をこう振り返る。
私に向けられた注目と批判、ニュースにではなく、私個人に向けられた注目と批判はかつてないものでした。いろいろな烙印を押されました。売春婦、あばずれ、ふしだら、売女、淫売。そして「あの女」と呼ばれたのです。 無数の人々が私を見ていましたが、実際に私を知る人はほとんどいませんでした。
John Oliverとのインタビューで彼女は、いかに仕事を得るのが大変だったか、それでも名前をなぜ変えなかったのかを、ジョークを交えて力強く語っている。
そんな彼女に対し、YouTubeのコメント欄は「素晴らしい人だ」などと前向きな声が届いている。しかし、そんなことを書き込めるのは、たまたま彼女が元気に生きているからだ。番組のホストJohn Oliverは「誰もがコンテキストや起こり得る結果を踏まえて、誹謗中傷に加担するべきかを熟考する義務があるはずだ」と訴える。
また、Public Shamingが起きる背景には、私たちの社会が抱えているバイアスがある。
例えば、このスキャンダルは「The Lewinsky Scandal」と呼ばれている。これからもずっとスキャンダルに言及される度に、ビル・クリントンではなく、彼女の名前が晒されてしまう。また、モニカ・ルインスキーは何度も「なぜ名前を変えないのか」と問われたという。ビル・クリントンに「名前を変えた方が良い」と言った人はおそらく誰一人としていないだろう。
日本でも、特定の誰かがPublic Shamingを受けている様子をネット上で頻繁に見かける。その暴力を受けた個人の人生への影響だけでなく、「なぜその相手だけが批判に晒されるのか」と社会のバイアスを問う力が求められているように思う。
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