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巻き込まれて生きていく #羊1

面白いと思えることの比率を100%に近づけることを、仕事をする上での指標にしよう、となんとなく思うようになり数年が経つ。

そう思っているからか、人見知りでありながら面白そうなことにはなるべく首を突っ込むようにしている。ただ、そういうとなんとなく恥ずかしいので「巻き込まれ力」というようにしている。主体的に選択しているのに。

とにかく僕はいま、羊に巻き込まれている。
「東京ラムストーリー2」なる、タイトルだけ聞くとちょっとアレな感じの書籍の出版プロジェクトに。

羊齧協会(ひつじかじりきょうかい)という団体がある。飲食店や畜産農家、食肉業者といったサプライヤーではなく、消費者サイドから羊肉食を盛り上げようという団体らしい。協会のwebサイトには

羊齧協会は、消費者がコミュニティの力を使い、自分たちの好きな羊肉を普及させ、素人が美味しく楽しくどこでも羊肉を食べれる世の中を作るべく活動する、羊肉好きの理想実現機関である。

とある。
1997年に前身となる団体を立ち上げた後、2013年に「羊齧協会」と改称、活動を本格化したということだから、本格始動から4年ほどの団体ということになる。協会の沿革についてはこちらを参照されたい。
http://hitujikajiri.com/history/

しかしこの組織、その名前のあやしさに反して1300人を超える会員を抱えているというからなかなかすごい。2014年からは羊フェスタという羊肉食イベントを開催し、毎年多くの来場者を集めている。2016年の羊フェスタには僕も友だちを誘って行った。まだ、巻き込まれる前のことだ。

そして2016年の11月。
四川料理が好きすぎて「おいしい四川」というwebマガジンを立ち上げたあげくに書籍化され、四川人もおどろく内容の濃さで中華界隈をざわつかせている中川正道さんが「麻辣党(その後、大人の事情で麻辣連盟に改称)」というこれまた謎の団体を立ち上げた、その結成パーティの場に僕はいた。麻辣連盟は結成から半年後の2017年4月に、四川料理に特化したフードイベント「四川フェス」という、エッジ立ちまくりのフェスを開催。その四川フェスの実行委員会に、気がつけば僕も名を連ねていた。グラフィックデザインの会社をやっていることから、ビジュアル制作を担当することになった、というか買って出たのだ。例によってまんまと巻き込まれたわけだが、実行委員の顔合わせの場に行くと、そこにはブロガーやエンジニア、あとなぜか素人なのに四川フェスに出店しようとしている人、そして羊齧協会主席の菊池一弘さんがいた。しかしいわゆる業界関係者は一人もおらず、「中華料理好き!」なことだけで集まった消費者ばかり。どうやら麻辣連盟及び四川フェスは、羊齧協会の菊池さんがそれまでに培った手法と「四川人もおどろくほど四川料理愛が高まっている中川さん」という強力なコンテンツが合わさって結実したものだということがわかってきた。そして2人の企みは、ボランティアスタッフを始めとするたくさんの「中華料理好き」な素人たちのサポートと、「本物の四川料理を日本に広めたい」という素人の本気に触発されて実績もないイベントへの出店を決めたプロ(飲食店関係者)たちを巻き込んだ。そして花見の季節と好天にも恵まれ、1万人とも2万人超とも言われる来場者を集めて四川フェスは終わった。

話を羊齧協会に戻す。
彼らは2014年12月、羊齧協会監修という形で「東京ラムストーリー」という、タイトルを聞いてどう反応するかで年齢がわかってしまうという点において、極めて踏み絵的な名の書籍を実業之日本社より上梓している。内容はおおよそ、羊肉を食べられる飲食店のガイドブックだ。ただしその情報量というか、発している熱量がものすごい。仕事でやっている人がそれらしくお上手に作ったものとは一線を画しすぎる濃密さなのだ。

かく言う僕も、2007年に出張で中国へ行った時に食った羊肉串の美味さにヤられて以来の羊肉ラバー。しかしその頃、日本で羊肉を食べると言えばジンギスカン。もちろんジンギスカンも良いのだが、それ以外の食べ方でもあれこれ楽しみたいと感じていた。特に中国で食べた羊肉串!あの味を日本で楽しめる店は無いものかと探して探して、ようやく見つけたのが新大久保だった。あの日あの時あの場所で、とどこかで聞いたようなフレーズはさておき、とにかくあの当時この本に出会いたかったと、出版プロジェクトに巻き込まれた時にまず思った。僕と同様に羊との出会いの場を求めて街をさまよっていた人たちにとっては、闇夜にふっと差すほのかな月あかりのような書籍であったことと思う。

四川フェスを終えてしばらく経ったある日、東京ラムストーリーの第二弾を発刊するので関わらないか?と菊池さんからお声がかかった。
何を期待されているかはわからないまま、いつものように「やります!」とだけ返事をして、僕は東京ラムストーリー2の編集会議の場へと向かった。

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