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不器用で臆病だった高校生の僕の手紙

「君が好きです。」と 素直に言えず 夜空の星を眺めて

たぶん わたすことは できないけど

今 君に 手紙 書きます…。

ZONEの楽曲『僕の手紙』より引用


むっくんは高校生の頃ちょっと不思議な関係の先輩に片想いをしていた。
その先輩の名前をM先輩と呼ぶことにしよう。

むっくんは小学生の頃から剣道の稽古を続けていた。

M先輩は高校から剣道を始めた1学年上の先輩。

むっくんの進学した高校は男女合同で稽古をする剣道部だった。

しかも、そのM先輩は3月生まれ。あと数日遅く産まれていたら同学年だったかもしれない。

そんなM先輩と一緒に試合形式の稽古をすることが度々あった。

中学高校の部活といえば、上下関係がしっかりしている。また同学年であっても実力や経歴によって序列のようなものがある印象だ。(少なくとも当時はそうであったと記憶している。)

なので、学年はM先輩が上、剣道歴はむっくんの方が長く、手前味噌だが、M先輩と手合わせをした時は33勝4敗ぐらいの実力差があった。

少し時代は遡り、小中学生の頃、特に女子いじめられていたむっくんは、高校に入学する前から同世代の女子に苦手意識を持っていた。しかも、中学校の剣道部は我々の代が卒業したら廃部になることが決まっており、後輩を入れさせてもらえない剣道部だった。校長と教頭が顧問というのも異例の措置だったであろう。思春期の人間関係を学ぶ大切な時期に上下関係をしっかり学べなかったのが非常に痛く、他人とコミュニケーションを取ることを苦手にしていた。

ところがM先輩はとても親しみやすく話しかけてくれ、剣道でわからないところは素直にむっくんに訊いてくれることもあった。部活中も部活が終わった後のスクールバスまでの少しの時間もフレンドリーで、笑顔で気さくに話しかけてくれたおかげで、ずっと心を閉ざしていたむっくんの、少しずついじめられていた頃のトラウマが和らぐどころか、気づいた頃にはM先輩に憧れるようになっていた。それが恋愛感情だと気づくのにはそう時間はかからなかった。

月日は経過し、入部し数ヶ月経った高校1年生の秋、むっくんは剣道弐段の審査を受審した。
剣道の審査は試合形式の実技、形(カタ)と呼ばれる演技試験。最後に筆記試験が課されている。(むっくんが受審した十数年前のとある都道府県の話)

当時の弐段の平均的な合格率は実技が約5割、形と筆記試験の合格率は9割以上と言われていた。

この弐段の審査を受審する少し前から、「昇段審査に合格したらM先輩に告白しよう」と考えていた。それと同時に先輩や同期からは「むっくんの今の実力じゃ弐段合格は厳しい。」とも言われていた。

もう…なるようになれ、そう思いながら何時間だろうか、会場となった大きな体育館で座って自分の実技試験が始まる順番を待っていた。

審査のことを考えていたら緊張することになるし、「どうせ受からないだろうし・・・」M先輩と稽古した日々や、部活仲間と遊びに行った日を思い出したり、もし告白が成功したらあの遊園地に行きたいなーなんか考えたりして緊張をごまかしていた。

長かった私の待ち時間が終わり、番号が呼ばれ、いざ約1分の実技審査…。相手はむっくんが得意とするタイプの剣士で、実技試験は奇跡的に突破。

お昼休憩を挟み、いざ午後の審査。形と筆記試験が控えていた。自分でもまさか実技試験に受かると思っていなかったので、演技を見せる形の審査の時には告白のことも、あったか、なかったかは定かではないが、緊張していて足運びがぎこちなくロボットのようになってしまった。

その結果…まさかの形の審査で不合格
当時、形の審査は不合格者の番号が張り出されるという形式。先輩方も同期からも「おめでとう。最後の筆記試験の準備やな。念の為番号見に行くか」というような言葉をもらい、念のために行ってみると…そこに私の番号が記載されていた。。。

約90%の受審者が合格すると言われていた形の審査で不合格であっても筆記試験の受験資格はあったので、無事に筆記試験は通過した…がその後の事は覚えていない。
もちろん数ヶ月後に形の再試験に合格して剣道弐段を取得した事は覚えているが。。。

その当時、家庭の問題も抱えており、新たなクラスにも馴染めず、家にもクラスにも居場所がなく、先輩に振られたら居場所もなくなり、もう生きている意味なんて…というような状態だった。それも相まって、M先輩に告白する勇気は出なかった。

どうやらその頃にはむっくんがM先輩のことが好きだということは周囲にバレバレだったらしいが・・・。周りからは「早く告白しろ」と言われることもしばしばあったが、唯一かもしれない居場所を失うぐらいなら今のままの時々話せる関係でもシアワセだと感じてしまっていた。

時が流れて数ヶ月後。

むっくんが剣道部に入って最初の冬だっただろうか、翌年の春だっただろうか・・・M先輩が昇段審査を受けることに。M先輩もむっくんを頼ってくれるし、

M先輩が合格したら告白しよう。

と再び決意を固めると共に気合を入れてM先輩を指導。

ところが、先輩は実技試験で不合格。

またしてもむっくんは告白ができなかった。
しなかったとも言えるかもしれないが、
とにかくフラれるのが怖かった。

その後、先輩は大学受験へ、むっくんは日々の勉強と剣道部の活動へ邁進…と行きたがったが、むっくんは少しずつ心に不調を抱えてだんだんと高校に通えなくなってしまった。。

そしてM先輩が高校を卒業した約3ヶ月後、むっくんはその高校を静かに去った。

君とは 不釣り合いかもしれない

僕は 微かに 見える星

だけど 必ず 輝いて見せる

その時に 君に言えるよ…

ZONEの楽曲『僕の手紙』より引用


まだ、十数年経って輝いていないけど言わせてください。
やっぱりM先輩、私はあなたが好きでした。


このnoteは私の自己満足かもしれない。
M先輩や、当時の部活仲間が読んだら違った感想を持つと思う。ひょっとしたら私のことなんて忘れてるかもしれない。

大人になってM先輩に再会する機会があった。それも高校や剣道とは関係のない場所で。
その時はお付き合いしていた人がいたので、その時は込み入った話はできなかった。ここでも私の優柔不断な弱さと自身のなさが出てしまったんだろう。当時の恋人とお別れして初恋の先輩に告白するという選択をする勇気は持てなかった。

序盤はむっくんという三人称で書いているところにもまだ、自信が持てないんだと思う。そして約10年もら会っていないMさんを忘れられないことも。多分あの「好きという感情」が本当の初恋だった。あなたは今でも忘れられないとても大切な人です。


でも、まだ、いつかまた会う機会があれば言わせてください。私はM先輩が好きだった、あなたのおかげで今こうして文章を書いて生きていると。私のカチカチに固まった心を開いてくれてありがとう・・・。と。

何度も告白するチャンスはあった。
でも私は告白をしないという選択をした、いや、してしまった。 
だからこうして今でも時々Mさんのことを思い出すんだろうな…。

ZONEの僕の手紙という曲の歌詞を一部引用した。
この曲は私が高校生の頃、とてもよく聞いた曲だ。
特に、再度引用するが

君とは 不釣り合いかもしれない

僕は 微かに 見える星

だけど 必ず 輝いて見せる

その時に 君に言えるよ…

ZONEの楽曲『僕の手紙』より引用

にあるように、輝いた時に伝えようと思っていた気持ち、まだ六等星ぐらいの明るさかもしれませんが、私はMさんが好きです。

約10年会っていない今のこの気持ちがLoveなのかLikeなのか、Respectなのかは正直言ってわからない。
遠方に住んでいるあなたにはステキなパートナーがいるかもしれない。だとしたら迷惑かな?

ただ、高校時代はあなたが好きだったことは変わらない。もし、このnoteが入賞した時は言わせてください。Mさん、やっぱりあなたが好きです…。


#あの選択をしたから

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