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プロデューサーの熱い思いが伝わった「玄海灘」

主催:玄海灘を上演する会
提携:異文化を愉しむ会
原作:金達寿
脚色:有吉朝子
演出:志賀澤子
出演:二宮 聡、高井康行、和田響き、神由紀子、青山眉子 ほか
劇場:調布市せんがわ劇場
観劇日:2023年9月1日(金曜)19:00~

原作の「玄海灘」は、在日朝鮮人の小説家・金達寿氏が1952年~1953年に発表した作品。氏の代表先の1つで、芥川賞の候補にもなったそうです。

舞台は日本統治末期の京城(ソウル)。日本と関わりを持つ朝鮮人たちの苦悩と葛藤を描いた作品。僕は、お芝居は楽しく観たい性質なので、社会派の作品は敬遠しがちなのですが、この作品には大学時代の友人が出演されていて、よく一緒に芝居を観に行く友達も興味を持っていたようなので、観に行くことを決めました。“お客さんの大半が在日コリアンで、アウェー状態だったらどうしよう”、“政治色が濃く、観劇というよりも勉強会みたいになってしまったら……” なんて不安も少々。

ですが、実際にはいたってフツーの演劇でした。しかも、わかりやすく、エモーショナルな作品。勝手な偏見を抱いてしまい、関係者のみなさん、すみません。

史実に基づく作品で、内容はかなり重め。なので、「楽しかった」とは言いづらいのですが、ドラマとして非常に面白かったんですよ。脚本、役者さんたちの演技、演出のバランスがよく、プロフェッショナルで完成度の高い作品という印象。主役(立場が異なる3人の男性)だけでなく、全ての登場人物の一挙手一投足から目が離せなくなりました。

この作品をなんとしてでも舞台化したいというプロデューサーの思いが伝わり、座組が一丸となって、同じ方向に進んだ。そんな、熱量を感じられる作品でした。されど、観客への圧は強くない。それがいい。友人が「文学座よりも面白かったかも」と言っていましたが、僕も同感できる部分があり、フィールドが異なる俳優が集まるプロデュース公演ならではの厚みを感じる作品に仕上がっていたように思います。

とは言え、この作品を深く理解するには、ある程度の知識は必要で、僕にそれが不足していたのも事実。また、作品から伝わるメッセージを、どう受け止めるかも人によって異なるでしょう。

せんがわ劇場での8回の公演は完売だったそうです。再演したら、もう一度観に行きたいと思っています。


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