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「ブラウン管より愛をこめて」〜さすがチョコレートケーキ、ていねいな作品でした〜

劇団チョコレートケーキ「ブラウン管より愛をこめて ー宇宙人と異邦人ー」
脚本:古川 健
演出:日澤雄介
出演:伊藤白馬、岡本 篤、青木柳葉魚、林 竜二、緒方 晋、清水 緑、浅井伸治、足立 英、橋本マナミ
劇場:シアタートラム
観劇日:2023年7月2日(土曜)14:00~

チョコレートケーキは “史実を細かく調べた真面目な脚本を上演している劇団” というイメージがあります。が、今回はちょっと趣きが異なるタイトルで、テレビで活躍中の橋本マナミさんが出演されたりするので、どんな作品になるのか、と気になっていました。

舞台は、1990年代のテレビ制作会社。「ワンダーマン」という特撮ヒーロー番組を作っていて、予算がなくて派手な特撮シーンを盛り込めなかったり、本当は大人向けの番組を作りたい、という屈折した思いがあったり……。そんな中で起用された脚本家が書いた脚本に、社会問題を連想させる表現が含まれ、大人の事情が絡み合って、みんなが苦悩するという展開。

あとで、劇場で配られたチラシやTwitterなどを見て知ったのですが、実際に「ウルトラマン」の脚本家で、社会問題を描き、物議を醸した人がいたそうですね。ということもあり、いつもよりは軽めのタイトルながら、チョコレートケーキらしい骨太の内容でした。

といっても、重くなりすぎず、しなやかで、わかりやすい展開。「差別はよくない」というシンプルなメッセージがダイレクトに伝わり、なおかつ、大人の事情で「長い物には巻かれろ」というか、妥協して保身してしまう、そんな現実にも向き合わされます。「自分だったら、どうするだろう?」そんなことを考えながら、観ていました。

テレビや映画の制作現場のお話って、劇中劇と、その舞台裏を重ねて描くことができるので面白いですよね。舞台装置や空間利用も的確で、まとまりのある作品に感じられました。手放しで「感動した!」「面白かった!」という感じの作品ではないのですが、「観たほうがいいよ」と人にすすめたくなる作品でした。

それから、橋本マナミさん。人気女優さんの役で出演されているのですが、そんなに迫力が感じられる方ではないんですね。ぶっちゃけ、そんなに上手くはないというか……。でも、今回の作品では、熱い演技をされる方が多かったので、彼女の控えめな演技が功を奏していたようにも思いました。もし、狙ってそうされていたのであれば、あっぱれです。

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