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主演がいいね! 「ガラパコスパコス ~進化してんのかしてないのか~」

「ガラパコスパコス ~進化してんのかしてないのか~」
作・演出・出演:ノゾエ征爾
出演:竜星涼、高橋惠子、藤井隆、青柳翔、瀬戸さおり、中井千聖 他
劇場:世田谷パブリックシアター
観劇日:2023年9月23日(土曜)18:00~

竜星涼さんが演じるのは派遣業でピエロを演じる青年。老人ホームに慰安訪問して、パントマイムで入居者に花を渡したりすることもあるようです。そして、花を受け取った老女(高橋惠子さん)が、青年の家にまでついていき、一緒に暮らし始めることになる。そんなお話。はたから見れば、青年が老女を監禁している状況。老女が消えた老人ホームは大騒ぎ、老女の家族も大騒ぎ、青年の家族や勤務先も事実を知っててんやわんや。そんな展開。

比較的わかりやすい展開なのですが、セリフによってわかるわけではありません。青年も老女も、セリフはものすごく少ないんですよ。舞台の壁が黒板になっていてね、登場人物たちがチョークで書く言葉が、物語の理解の一助となる仕組み。舞台には傾斜になっていて、チョークの文字は床面にも広がっていきます。

この作品の鍵となる存在として、バスを待つ女性(そういう役名ではないでしょうが)がいます。中井千聖さんが、老女の孫と2役で演じているのですが、最後にバスがやってきて、みんなで乗る(とイメージさせる)演出があります。その場面の演出もインパクトがあって、かっこいいんですよ。

というわけで、僕の感想を読むと、ものすごくいい作品に思われるかもしれませんが、そうでもないんですよね。どこか、わかったようなわからないような、深いような浅いような、もやもや感が漂う作品でした。小劇場的な若さとか、あざとさが気になるというか。再演なので、ノゾエ氏が若いときに書いたのでしょうが、今、この座組みで上演するなら、もっと進化したものを観たかったと思いました。

でもね、それでも、僕は観てよかったと思っているんですよ。観終えた後味もいい。その理由は、竜星涼さん。彼の演技をちゃんと観るのは初めてだったのですが、舞台映えして、身体の動かし方もきれいで、心地よい空気感を作り、演技も軽やかで嫌味がない。彼を観ているだけで満足できました。

二枚目俳優が、きちんと二枚目としての役割を果たしていたというか。演じた役柄は二枚目である必然性はないのですが、彼がいないと成立しない舞台になっていたと思います。やっぱり、主役って大事ですね。

※アイキャッチ画像は、「ガラパコスパコス ~進化してんのかしてないのか~」の公式ウェブサイトより転載しています

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