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ひと時のお熱い一発!

■90年代のレッチリ


“Under the Bridge“が収録された『Blood Sugar Sex Magic』は言うまでもなく傑作ですし、レッド・ホット・チリ・ペッパーズを世界的なバンドに押し上げたアルバムであることは間違いないと思います。ミクスチャー・ロックと呼ばれたジャンルがもう少し広くカテゴライズされて、オルタナティヴ・ロックという呼び方がされるようになり、レッド・ホット・チリ・ペッパーズもそういったところで人認知されていったと感じています。同時にパンクやファンクやハードロックやヒップホップなんでもごちゃまぜ感は薄くなって、オーソドックスなロックに寄っていったような気もするのですが、それでもフリーのベースとアンソニーのボーカルこそがレッド・ホット・チリ・ペッパーズの音の要でありました。

1992年ツアーで日本を訪れている途中にギターのジョン・フルシアンテが脱退してしまいます。
若き天才ギタリストと言われていたジョンはこの時すでにドラッグを常習しており、他のバンドのメンバーともちょっと歳も離れていたり、なんせレッチリが好きで好きでたまらなくてギターを始めたくらいの彼にとって、そのバンドで活動することへのプレッシャーも相当であったのだと思います。
ジョンはレッド・ホット・チリ・ペッパーズ脱退後、ギターを止めて隠遁生活に入ってしまったそうです。

■新しいレッチリのグルーヴ


アルバムのヒット、オルタナティヴ・ロックのムーヴメントと追い風が吹いている中、レッド・ホット・チリ・ペッパーズは大ピンチに陥ってしまうワケです。
そんな中、アナウンスされたのがオルタナティヴ・ロック伝説のバンド、ジェーンズ・アディクションのギタリストであったデイヴ・ナバロの加入でした。
デイヴ加入で制作された1995年リリースの『One Hot Minute』からの先行シングル曲“Warped”のPVを観た時、それまでのレッチリには感じなかった新しいギター・リフを感じてゾクゾクした覚えがあります。分厚く感じるギターの音はフリーのベースとの相性もよく、”Coffee Shop”、”Shallow Be Thy Game”など新しいレッド・ホッド・チリ・ペッパーズ独特のグルーヴが生まれていたように思います。
また、アルバムの曲調もこの新規グルーヴ路線ばかりでなく、バラエティに富んでいて、新しいデイヴ・ナバロのギターに対してレッド・ホット・チリ・ペッパーズらしさをフリーのベースで聴かせているという他にないケミストリーがある名盤になっています。
収録曲全曲を通して聴けるCD時代の傑作アルバムだと思います。

このデイヴ・ナバロ期は商業主義だったことと悪天候が原因で悪評高いフェスティバルとなった、ウッド・ストック94のステージで初披露されていますが、そのステージではメンバー4人が大きな電球を被った衣装で登場しレッド・ホット・チリ・ペッパーズらしいウィットの効いたステージで、その時もやっぱりレッド・ホット・チリ・ペッパーズは健在なんだと安心した覚えがあります。
このステージは映像化もされていますし、YouTubeでも観ることができます。
デイヴ・ナバロの在籍した期間は1999年までととても短いものでしたが、90年代のオルタナティヴ・ロック、グランジにも影響を与えたレッド・ホット・チリ・ペッパーズが強烈に感じられる時期でもあるので、是非『One Hot Minute』も聴いてみていただければと思います。
ただ、アンソニーもフリーもこのアルバム自体にあまり良い印象がないようで、後のベスト盤なんかもこのアルバムからの選曲が“Aeroplane”のみだったりします。
それにつられて、ファンであっても評価が低めになっていたりするんですが、個人的にはもの凄く思い入れのあるアルバムですし、曲はほんとに良いと思います。

■人気のTシャツ


『One Hot Minute』アルバムのアートワークも独特の90年代、オルタナティヴな雰囲気のあるデザインで、常に上半身裸のイメージとの対比が面白い良いデザインでこれまた良いのです。

80年代に起こったロックの産業化、スタジアム・ロック以降、ロックTシャツ、バンドTシャツがマーチャンダイジングとして完全に確立した90年代のものということもあって、アルバムの不人気に反比例してこの『One Hot Minute』とその時のツアー関連のTシャツは人気でいまや高額なものになっています。
で、このTシャツも『One Hot Minute』アルバムのアート・ワークがプリントされたもので、コピーライトも入っており、襟首まわりと袖の縫い付けがシングルステッチになっており、90年代仕様になっていますが、当時物のヴィンテージではありません。
ビンテージを装ったものでプリントは新しいものです。
これ、以前メタリカのDoris Tシャツの時に『偽ヴィンテージTシャツ』としてお話ししたTシャツです。『当時モノ』としてフリマサイトに商品を出していた業者から購入したら、届いたのがインクの匂いの残るプリントほやほやの新品Tシャツだった事件がこのレッド・ホット・チリ・ペッパーズの『One Hot Minute』Tシャツだったんです。
その時もお話ししましたが、基本的にデザインが好きで、着ることを前提に購入しているので、絶対に当時モノ、ヴィンテージじゃなければいけないといたこだわりがないので、今も楽しんで消え入る一着だから良いのですが、まちがっても何万円もの価値があるものではないので、そこは警鐘を鳴らしておきたいな、という気持ちもあり、今回良い機会なので、紹介しました。

■おまけ

SNS系の世界では『逆張り』で注目を集める手法もあるようですね。
それを狙ったわけではないですが、今回のこの動画と記事を作成するにあたって、あらためて”One Hot Minite”をじっくり聴いてみたんですが、やっぱり90年代中期の頃を強烈に思い出させる音でした。
分厚く、ヘヴィで、当時として新しいモノだったのです。90年代のロックの音がしているのです。

ご存知の通り、その後ジョン・フルシアンテの復帰、『Californication』『By the Way』と立て続けのヒットにより、Red Hot Chilli Peppers は世界的ロックバンドに上り詰めます。もちろんどちらのアルバムにも今やレッチリを代表する名曲が収録されており、それらの曲のメランコリックなメロディと叙情的なギターフレーズからジョンの影響力の大きさが伺え、レッチリが世界レベルになるのに必要な要素であることは疑いの余地はないのです。
ですが、あの退廃的で怪しい独特のグルーヴは他に例がなく、かつレッチリの中にあっても『One Hot Minute』にしかないと感じます。
そういう意味で『One Hot Minute』は見直されてもよいアルバムだと思います。

皆さんはどうお感じになられるでしょうか?


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