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We Are The Champion の50年

2021年の11月から、Queenを愛し、愛されたここ日本でQueen50周年展が開催されています。(2022年4月時点で大阪で開催中)
Queen結成50周年に寄せて、思い入れ深いバンドQueenについて何回かお話ししています。

■Queen結成10年の頃


僕がQueenを知ったのが1981年のことなのです。フレディ、ブライアン、ロジャーにジョンが加わったのが1971年のことらしいので、結成10年くらいのタイミング、丁度それまでの活動を総括するようなベスト盤グレイテストヒッツが出た頃でした。私が最初にQueenを聴いたことのも、友人の家にあったQueenのグレイテストヒッツだったと記憶しています。
ただこのグレイテストヒッツ、今やイギリスでもっとも売れたレコードと記録されているくらいのアルバムなんですが、曲順がよくなくて、一曲目が"Bohemian Rhapsody"から始まるんです。まぁ、誰もが感じることだとだと思うのですが、この曲は一曲で完結しているような曲なので、この曲を聴いちゃうと次に何聴いても耳に入ってこなくなるんですよね。そういう意味では"Bohemian Rhapsody"が収録されている”A Night At The Opera 邦題:オペラ座の夜”の構成は完璧で最後にこの曲を持ってきており、終わった後にイギリス国家である"God save The Queen"をブライアンがギターで演奏してオペラの幕が降りる演出になっているんですね。そうすると”A Night At The Opera”アルバムを聴いた約45分という時間がそこで完璧に終わるワケです。

■"We Will Rock You"からの"We Are The Champion"


話が逸れてしまいましたが、このグレイテスト・ヒッツの最後は"We Will Rock You"〜"We Are The Champion"の流れになっています。この2曲は1977ねんにリリースされた『News Of The World』のA面頭の2曲ですが、二曲ともにQueenを代表する曲の枠に留まらず、世界中の至るところで、サッカーのチャント(応援歌)のようなスポーツを高揚させる場面や表彰のセレモニーなどにも使われる定番の曲になるほどキャッチーな曲になっています。多分、何百年の後にも残る古典的な曲になる曲でしょうし、もうROCKというカテゴリ的な枠には収まらないものになっているような気がします。
Queen自体もこの曲がエポックメイキングになることを感じていたようで、『News Of The World』リリースに伴うツアーのセットリストからアンコールで必ずこの2曲を続けて演奏するようになっています。
確かにアンコールで出てきて"We Will Rock You"で観客との一体感はピークに達するでしょう、そして荘厳な雰囲気の"We Are The Champion"です。この曲は歌詞からして、Queenが自らの音楽やバンドとしての歴史を踏まえて、ある意味ロック音楽の枠を打ち破るイノベーターであったことを自己肯定的に宣言するような内容になっていて、一聴すると音楽業界や自分達に理解を示さなかった聴衆にたいっする勝利宣言にも聴こえます。なのでやもすると「何を偉そうなこと言ってんだ!」と反発を喰らうリスクも含んでいるように感じます。
この「我々は勝利者だ」と宣言することはその時点、その後も含めてロックのメンタリティには登場してこないものです。それを1977年という時にやったQueenというバンド、フレディ・マーキュリーはいかに特異な存在であるかということです。

■1977年という時のQueen


1960年代に世界に広まったBeatlesというポップカルチャーにおけるロックの革命は70年代に入ってその時代のインテリジェンスを一気に引き寄せるユース・カルチャーになりました。ロック黄金期と呼ばれる時期です。ただその時期のロックもユース・カルチャーに根を張ったものだっただけに、大人達の作る世界に対するリベリオンである側面を持っていましたし、ロックが反抗の叫びだったからこそ若者の文化として広がったという、まさに鶏と卵のような関係だったワケで、それがロックであり若者文化の象徴だったわけです。
そうして次第にロックというカルチャー自体が肥大化する中で、その内側から再び既成概念を打ち破るべく反抗の狼煙をあげたのがパンク・ロックでした。パンクをロックンロール・リバイバルと表現した人もいたのですが、正にその通りだったんだと思います。そんなことが起きていた1977年という時にQueenはパンクよりプリミティブな表現で「我々はお前をロックする」と言い、「我々は勝利者だ」と高らかに宣言してしまうのです。
その「我々」がQueenというバンドで自己完結してしまっていてはそれは反発どころか嘲笑の対象でしかなかったのかもしれませんが、Queenは「我々」に聴衆である我々も取り込んでしまいます。Queenと一緒に"We Will Rock You"と叫べば、いつの間にかQueenを聴いていない隣人に対して私が「ロックしてやる!」と言っている気になりますし、フレディと一緒に"We Are The Champion"を歌えばいつの間にか自分を取り巻く世界に対して「決して屈しない」と宣言している気分になります。それが次々に伝播して、次々に広がって30年以上広がり続けた、だかこそこの曲は本当に勝利する場面で使われる曲になったんではないでしょうか?
そんな風に思うのです。

■Queen×ChampionコラボTシャツ


今回のTシャツです。
Queenの"We Are The Champion"がスポーツ競技の勝利の場面で使われる曲だからってワケではないんでしょうけど、スポーツ・メーカーのチャンピオン社ってのがありまして、そのロゴにかけてこんなTシャツがあったりしますけど、これは公式のものではないので、まぁパロディTシャツ枠ってことですけど、オフィシャルからもチャント出ています。
これは2021年にQueen結成50周年を記念してロンドンのポップアップショップで販売されたQueenとチャンピオン社のコラボのTシャツです。白い方はそのままWe Are The Champion と入ってます。グレーの方は自転車に乗った女性がデザインされていて、Queenの"Bicycle Race"という曲にかけているんだと思いますが、かなり気に入ってよく着てるものです。

あの時代に唯一パンクのムーブメントに微動だにしなかったQueen。
ロックという若者文化の大きな流れに流されることなく突出した存在になり始めたQueen。
はからずとも、この後のQueenはロックの呪縛から解放されたようにバラエティに飛んだ曲を作り始め、シンセサイザーは使っていないという看板も下ろすことで、世界中にその音楽を知らしめることになったQueenはまさに孤高のチャンピオンになったと言えるのではないかと思うわけです。

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