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ヘヴィ・メタル、ダサくて悪いか?!

■80s、熱狂の時


先日の夏休み企画でアナログレコードを取り上げたのですが、80年代中頃はちょうどメディアがレコードからCDに変わろうとしているところでした。レコードが主流でCDだと収録時間がながいのでボーナストラックが着くというお得感でオーディオ機器含めて移行させようとしている時期だったんでしょうね。
もちろん、アナログレコードとCDそれぞれに良し悪しあると思うのですが、アナログの時代の良かったところは、新譜のリリーススパンの短さだと個人的には思っています。片面約20分、トータルで40分強の8~10曲が1年か2年ごとに聴けるというのはファンである忠誠心とじっくり聴く耳を養うのには良い環境だったと思うのです。特に、10代の頃って1年ごとに生活のリズムもかわるし、3年ごとに環境がガラリとかわるし、そういう意味で記憶にその時聴いていた音楽が強く結びつくというようなことが起きたんじゃないかとも思うんです。

いつもお話ししているのはそんな記憶のお話しが多いのですが、今回もそうです。
中学1年生の時に知ったヤバいエディのアイアンメイデンは、高校1年生の時にエジプトの王様になって見た目も芸術的な別次元の存在になり、翌年のライブでエディはステージセットとして登場し、アイアンメイデンの音とともに衝撃的なビジュアルイメージを記憶に刻むような体験でした。更にその記憶をこれでもかと固定するかのような死霊復活ビデオでのライブ追体験以上、ほぼ記憶の増幅改ざんのような行為です。そもそも動くメイデンのメンバーを観ることすらそれまでほとんどなかったので、もう一気にドーンと来た感じでした。

そんな熱量が冷めないうちに、次のアルバムの発表になるわけです。そりゃ、濃いファンが作られるのもわかっていただけますよね。
で、リリースされたのが“Somewhere in Time”です。
あの、殺人ゾンビが、エジプトの王になったかと思えば、今度は近未来のロスアンジェルスでバウンティ・ハンターをやっているわけです。しかも若干アンドロイド感もだしているし、これはまんまブレードランナーです。シーズン11でも取り上げましたが、1982年の時点ではヒットしなかったにもかかわらず、やっぱりそのビジュアルはショッキングだったということでしょう。映画公開から4年後1986年のアイアンメイデンのアルバムカバーはそのまんまブレードランナーなわけですから。

■アルバム”Somewhere in Time”


この“Somewhere in Time”アルバムのアートワーク、デレグ・リッグスの描き込みがすごいんです。
まさに、レコードを聴きながら、ジャケットを眺めるのに最高でした。
「おお、ここはアカシアアヴェニューなのか」
「エイシズ・ハイの戦闘機スピット・ファイアが飛んでる」
「イカロスが落ちている」
「深夜の2分前」
「娼婦シャーロットがいる」「黒猫がいる」
などなどアイアンメイデンの曲やこれまでのアートワークにちなんだものが描かれているのをみつけたり、
ブレードランナーでアンドロイドをつくっているタイレル社や原作者のフィリップ・K・ディックがやっぱり登場しているんだなと思ったり、それまで写真だったメンバーも描かれているのも面白かったですね。
これはさすがにCDの大きさだと細かすぎてわかんないんですよね。
まぁ、楽しかったです。
そして、いつのまにかエディもカッコよく描かれているし、それも意外ですよね。
あんなヤバそうな殺人ゾンビだったのに、なんだかヒーローみたいになってしまって。

■Somewhere on Tour in JAPAN


そのカッコいい?ヒーローのようなエディがプリントされたTシャツです。
1987年にはこの“Somewhere in Time”のツアーが日本でも開かれました。
海外ではスタジアム級のスケールになっていたアイアンメイデンですが、日本での人気は超メジャーアーティストとまでは行かないため、あのでっかいツタンカーメンのエディが割れてそこから更に巨大ミイラのエディがせり出してくるようなフルサイズのセットを日本には持って来れていなかったのですが、この時は確か初めて武道館公演があり、ほぼフルサイズを持ち込んだということも話題になっていた記憶があります。
ただ、当時19歳になったばかりの私が参加したのは名古屋市公会堂で前回のパワースレイブツアー時と同じ会場でした。名古屋が日本公演の初日でした。

■かっこいいぞ!メタルのスタイル!


さぁ、前回のパワースレイブのライブは本当にもの凄い熱気だったので、サム・ホェアも気合を入れていくぞ!
と思ったわけです。で何を着て行こうか?と思ったんですが非常に悩むワケです。
というのもビデオでみるアイアンメイデンはメンバー全員ピッタリとしたスパンデックスの派手な色のパンツに、わりと派手なカラーのこれまたピッタリとしたシャツを着てたりして、で足元はブーツだったりスニーカーだったりするので、まぁ死霊復活がDVD化されていて、そのレビューコメントなんかを見ると、衣装がダサいとかピッタリタイツで股間部分がもっこりしているとか、衣装のことは散々に言われていたりするんですが、いまから40年も昔の話なわけですよ。そりゃ時代とともにスタイルは変わるわけです。確かにおしゃれ、ファッショナブル、真似したいとは思わなくとも、「あぁ、当時はこういうのがカッコよかったんだなぁ」と思わないかなぁと。
やっぱり、私は今見てもカッコイイと思うんです。それはやっぱりリアルタイムの記憶だからでなんでしょうか?
取りあえず、今見ればピチピチタイツの変な衣装であったかもしれませんが、当時はカッコよかったわけです。

■ヘビィ・メタル、ダサくて悪いか?!


なので、ライブに行くのにも少しでもそのスタイルに近づけたいと思うわけです。
まず黒いタイトなTシャツを用意して上にデニムのジャケット、Gジャンと言うやつですね、これを着ていくことにしました。ここはまあ無難な感じです。肝心なのはボトムです。ただのジーンズはダメでした。こんなの予備校に行くときのかっこまんまじゃん!

って感じです。かといってピッタリパンツもないわけです。なるべくピッタリ目のシルエットが出るパンツ、あれこれ探すほど衣装を持ってなかったのですが、ありました。19歳の予備校生でも持っているよピッタリ目のボトムが。

それは運動用のジャージパンツでした。昔のジャージは体操選手が着用するそれのようにズボンの裾がひらひらして邪魔にならないよう裾をかかとに引っ掛けるループのあるものがありました。なので、そのタイプは先に向かってテーパードしているので、足が細くシュッと見えるのでした。その上からスポーツソックスを履いて、靴はReebokのハイカットスニーカーを合わせました。Gジャンを脱げば、おぉ、なんとなくスティーブ・ハリスっぽくなくはない

ジョッパーズ・パンツっぽくも見えるからこれで名古屋まで行けるぞ!とそのスタイルで出かけたのです。

田舎の単線路線からJRに乗り換えてたところ、「おぉ、ヒロセ」と声がしました。偶然、高校の同級生と電車に乗り合わせたのです。その彼は林くんと言って私の住む田舎の隣町の、えーともっと山の方へ行ったもっと田舎と言ったらよいのでしょうか、そんなところに住んでいて夜間の大学に行っているとのことで昼間アルバイトして名古屋の大学へ向かう所ということだったのですが、高校に通っていたころは何というか、リーゼントみたいな髪型で今で言うヤンキースタイルだったんです。まぁ、正直おしゃれでもなかったですし、見た目はそこそこだったので残念だなーなんて思っていたんです。大きなお世話ですが。まぁその時も決しておしゃれって感じではなかったんですが、昼間働いて名古屋の大学に通っているっていう大人の余裕みたいな感じもあったのかもしれませんが、なんだか私のことを品定めでもするように全身上から下までこうなめ回すように見たあとにですね、「フッ」とやったんです。
「あれ?今、鼻で笑った?」と思いましたね。
「ダサいと思ったね?」と。

で、何処に行くんだと聞かれたので、今からコンサートで名古屋市公会堂まで行くんだ、と。
誰のコンサートだと聞かれたので、アイアン・メイデンだ、と。
アイアン・メイデンなんて知らん、どんな音楽だと聞かれたので、ヘヴィ・メタルだ、と。

「ヘビメタ?、フッ(笑)」

あ、また鼻で笑った!
挙句の果てに、「メタルのコンサートってジャージで行くもんなの?」
決して、洒落てもいない田舎者に鼻で笑われる屈辱、まぁ確かに常人には理解しがたいスタイルだったかもしれません。その時のスタイルは今回のイラストで表しておきます。

というわけで、会場に着くまでは相当にモヤモヤしたのですが、ライブがはじまれば、パワースレイブのライブ以上の盛り上がり、ライブアルバム、ライブビデオの影響もあって、コール&レスポンスや盛り上がりどころも完璧、凄まじい熱気のライブで、動きやすく、通気も良い、ジャージにスニーカーで大正解だったと、そういう思い出のライブになったというお話しです。
ヘヴィメタルのスタイルって確かにファッショナブルではないし、洒落てはないですが、こうスタイルを確立しているという意味では個性的だと思いますし、それを貫けばカッコよさに繋がるものもあると思うんですよね。
ロブ・ハルフォードのレザー&スタッズやクリフ・バートンのベルボトムやデイヴ・ムスティンの白いシャツにスリムジーンズにガンベルトとかも、ということで、林君、ヘビメタは決してダサくないですよ。

■おまけ

2022年の10月にアイアン・メイデンの2023年のヨーロッパ ツアーのスケジュールが発表されました。ちょうどこの動画をリリースした翌週のことです。
次のツアーは最新アルバム”Senjutsu”と1987年にリリースされた”Somewhere in Time"の曲を中心にセットリストが組まれると言ったことも同時に発表され、古くからのファンを熱狂させました。
ブルースは白髪にはなりましたが、再びロン毛にしているようで、これがなかなかかっこよかったのですが、ステージではちょんまげ風に結えていたので少し残念です。(侍を意識したのでしょうか?)
スティーブはここのところハーフ・パンツスタイルでステージに立つことが多いようですが、願わくばあの頃のようにピッタリとしたスパッツスタイルで登場して欲しい、そう思うのは私だけでしょうか?

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