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誰とも知れぬ者 -序章-

ここは何処なのか。私は死んだのか。否、そもそも私は……?

目を開けると、私は知らない場所にいた。
遥か上には揺れる水面らしきものが見えるが、もしそうなら私は息ができないはずだ。

身を起こして辺りを見回すと、水中洞窟のような地形が続いていた。
遠くには珊瑚やウミユリに似た様々な色の生物らしきものが自生し、花畑のようだ。
時折頭上を光の粒が魚のように泳ぎ去っていく。

突如目の前に波紋が走り「それ」は現れた。

「火と鋼をもって地に満ちし者の魂よ……我が領域は汝を歓待する」

わからない。
見えるのは異様に白く細い一対の腕と水棲生物の鰓じみた半透明の触手、それとヴェールに覆われた人間の顔に似た頭部だけだ。
言っている事の意味も分かりかねる。

「……よく分からない?人間がここに来るの初めてだから緊張しちゃって」
「親しみやすい雰囲気がいいわよね?」

「それ」はドレス姿の美しい女性になった。

「何か質問はある?」

山ほどある。


【続く】

スキするとお姉さんの秘密や海の神秘のメッセージが聞けたりするわよ。