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通りすがりの魚屋さん外伝【アサシン断章】#1

都内某所。


ブガー!!ブガー!!ブガー!!


「Mystic Horizon」「Discovery」などの神秘的ルーン文字文言複雑怪奇な魔法陣が刻まれた室内にけたたましい警報音!
魔術ギルド構成員じみた風体
の職員が厳戒態勢に入る!

「侵入者です!」「どこの所属だ!?」「魔術ホロモニタ出します!!」

壁面の魔法陣からホログラフィじみて複数の監視映像が浮かび上がる……ショットガンアサルトカスタム拳銃で武装し黒よりなお黒い冒涜的色彩タクティカル黒服で統一された兵士達!

「あの忌々しい黒服……もしや!」「間違い無し!ドブガワ・グループの尖兵ぞ!!」

ドブガワ・グループ……出版系メガコーポとして成長し、現在では多方面に系列子会社が存在する巨大グループ企業だ。
しかしその裏ではヤクザ・コーポとの癒着が囁かれている。

「「「「鋼鉄の最新科学兵器にカビ生えたロートルのまじないで勝てるかッコラー!!!!」」」」


BLAMBLAMBLAMBLAM!!


「「「アバババーッ!!」」」
恐るべき弾幕!ギルド魔術戦士達が奮戦するも、物量差が歴然だ!

「もうすぐ敵がここまで到達します!」「あの邪神崇拝の徒にだけは、我々の精髄を渡してはならぬ」「魔術レリックが悪の手に落ちれば、世界は崩壊する……


Mystic Horizon On-line……通称みほおん編集部。
一般的には魔術や神秘に関する事象を会報としてオンライン発信する組織として知られるが、それはカバーストーリーに過ぎない。
その真実は、他世界との連結を安全に保つ、危険な魔術レリックを注意深く保全するといった世界の安定を保持する為の秘密結社である!

そしてこの一室がその中枢部だ。だが陥落も時間の問題だろう。

誰もが諦めかけていた、その時……。

「……まだ希望はあります。あの予言が真実ならば」
女が声を絞り出し、言葉にする。
「『アサシンの予言』か……確かこの品にまつわる……」
そう言うと男は鈍く輝く籠手を取り出した。
「希望に未来を託すのも、悪くないかもしれぬな……転送魔法陣、稼働準備!
最も年老いた男が号令をかけた!


『それ』が転送完了した2秒後、みほおん編集部は爆炎に包まれた。


――――――――――――


とある町で。

「魚ー、魚ー、ぴちぴち新鮮なお魚よー」

台車を引きながら魚を売る露出度の高い女性の姿があった。清水のように蒼く輝く髪と神秘的な紅い瞳が美しい。
彼女の売る魚は常に新鮮で、町の住民にも人気があった。

「ねえお姉さん」「あら、この時期はカツオがお勧めよ」「カツオは好きなんだけど、今日は別の話が……」「何かしら?」

一人の青年が魚を買いに来た……否、彼は何らかの相談に来たように見える。

その青年……レイは鞄を開けると、鈍く輝く籠手を取り出し、右手に装着した。
「レイ君、似合ってるじゃない」
「これが昨日突然家に届いて……お姉さんなら何か知ってると思って」
「どういうこと?」
「……ちょっと離れてて……」

レイが籠手の何らかの機構を操作すると、内部から両刃の短剣が飛び出す!これは宝飾品や防具ではなく暗殺用の武器に相違なし!!

「……少なくとも、魚をさばいたり貝を剥くものじゃないわね」
「やっぱりお姉さんにもわからないですか」
「何処かで見たような気がするんだけど、気のせいかしら……」

魚売りは刀身に刻まれた神秘的文様を見ながら沈思黙考する……。
しばらくして他の客が来たのでレイは刀身を仕舞い、魚売りは何時もの応対に戻った。

やって来た客は全身を黒服に身を包み、錫杖を手にした男だ……一見するとヤクザ・コーポの鉄砲玉と大差無い見た目だが、魚売りを長くやっている彼女には分かるのだ……敵意・害意がない事が。

「うむ、ここでは寿司も売ってるのか」「お兄さん、買っていく?」「丁度食べたかった所だ、ありがたい」「人数分だけ作れるわよ。お米無くなったら終わりだけど」

彼がレイの身につけている籠手をちらりと見ていたが、特に何も起こらなかった。

「ありがとな」「こちらこそ、ありがとう!貴方は旅人かしら?」「ああ。今日はこれから宿探しだ……ムンッ!!

突如黒ずくめの男が錫杖を振るう!乱心か?否。守ったのだ……CLAN!!……何らかの飛来物が鈍い金属音と共に弾き飛ばされる。それは……恐ろしい!黒よりなお黒い冒涜的色彩の投げナイフだ!


「「「「レリックを差し出せオラーッ!!!!」」」」


三人の目前に現れたのは、あの投げナイフと同様の冒涜的漆黒タクティカル黒服に身を固めたヤクザ・トルーパー半ダース!一様に漆黒電磁ダガーナイフと漆黒カスタムショットガンで武装している!恐怖!逃げ出す通行人!!

「レリックが何だか知らないが、狙われてるのはおまえのようだ!気をつけろ」黒ずくめが左手でレイを指差し、右手で油断なく錫杖を構える。
「僕ですか!?」然り。先のナイフの投擲軌道から見てもレイが狙われていた事は明白だ。
「ヤクザ・コーポ絡みならやる事は一つね!」魚売りも臨戦態勢!

「「「「降伏しろッコラー!!!!」」」」
ヤクザ・トルーパーは一斉に漆黒カスタムショットガンの銃口を向け威圧!
だが魚売りも黒ずくめの男もこの程度では怯まない。レイを守るように二人で前に出る!

「行けぇーっ!!」
魚売りのラインの乙女じみた怖ろしくも神秘的なシャウト!それと共に背後から何らかの飛来物が複数出現、矢のようにヤクザ・トルーパー達に襲いかかる!
銀色に輝くそれは……殺人サンマだ!
殺人サンマの槍の如く鋭利な口先がトルーパーの心臓を貫通……しない!
それらは悉く漆黒タクティカル黒服に弾かれた!

「「「「無駄だオラーッ!!!!」」」」
ヤクザ・トルーパーは一斉にショットガン発砲!三人を散弾の雨が襲う!


BLAMBLAMBLAMBLAM!!


「ルリャーッ!」
魚売りのラインの乙女じみた怖ろしくも神秘的なシャウト!彼女の目前に超自然の水面がドーム状展開!散弾を弾き返す!
「斯様な術を使えるとは、ただの魚屋ではないな」黒ずくめの男は魚売りにちらと目をやりながら錫杖を構え直す。その体捌きからは只ならぬ実力者であろう事が見て取れる。

「お兄さん、腕っぷしは自信ある?」「武術の心得は少々」「わたしが弾切れまで粘るわ、向こうが突っ込んで来たら何とかしてくれる?」「心得た!その間あいつを頼む」


BLAMBLAMBLAMBLAM!!
BLAMBLAMBLAMBLAM!!


「ルリャーッ!」
怖ろしくも神秘的なシャウトと共にショットガン射撃の第2波、第3波を超自然の水の障壁が弾く!そして……!!
「「「「最先端科学なめんなッコラー!!!!」」」」
ヤクザ・トルーパー達はショットガンを下ろし、突撃体勢を取った!

「レイ君は任せて!」「作戦通りだな!」
魚売りは一歩下がってレイを守り、黒ずくめが錫杖を突き出し突撃する!

「喝ーッ!!」ゼンめいたバトルシャウトと共に錫杖が金色の軌道を描く!
「アバーッ!?」先頭のトルーパーの頭蓋骨を破砕!
一人即死!残り五人!

「喝ーッ!!」ゼンめいたバトルシャウトと共に金色の円弧軌道が逆回転!
「「アバババーッ!!」」二人のトルーパーの頸椎を同時破砕!
二人即死!残り三人!

残る三人と相対した所で黒ずくめは気付く……それは遠目には分かりにくいが、危険なものだ!
「気をつけろ!手榴弾がある!!」
その言葉と同時に握り拳大の漆黒の物体が、魚売りとレイの方向へ飛んできた。

「ウワッ!?」狼狽えるレイ!
「ルリャーッ!」だが魚売りは怯まない。
怖ろしくも神秘的なシャウトと共に足元に超自然の波紋が走り、そこから金属光沢を放つムチめいた長大な触手が伸びて飛来物を弾き返す!
「フヌーッ!」黒ずくめは状況判断しトルーパーから間合いを離す。
跳ね返された飛来物はトルーパーの頭上で爆発!


CLA-ABZZZZZZ!!!!


名状し難きダークマターじみた漆黒スフィアが見るも悍ましい色彩の放電と共に膨張!尋常の爆発物でない事は明白だ。
「ア、アバッ」
逃げ遅れたトルーパーの一人が巻き込まれる!胸から上がゴアめいて崩壊!
即死!残り二人!

「あの爆弾はシャレにならん!巻きで行くぞ!」
「わたしも援護するわ!行けぇーっ!!」

超自然水面から魚眼レンズじみた巨大な二つの眼球……ダイオウイカだ!一瞬で伸びた触腕がトルーパーの一人を絡め取る!
「アバーッ!?」
そのまま大蛇めいて首を締め上げ、300度回転捻じ切り!
即死!残り……「敵の数が合わない!」

黒ずくめの言う通り、残り一人いる筈のヤクザ・トルーパーがどちらの視界内にも居ないのだ。
「気をつけて!レイ君!」魚売りがその場で振り返る!

「死ねーッ!死ねッコラーッ!!」

最後のトルーパーが漆黒電磁ダガーナイフを構えレイに躍りかかる!
「ヒエーエエエエ!?」避けようとし転倒、地面を芋虫めいて転がるレイ。
「ルリャーッ!」魚売りは殺人サンマ二刀流を短剣めいて構えた!
しかし薙ぎ払いを、刺突を連続で放つも漆黒タクティカル黒服の前に致命打を与えられない。

「オラーッ!!」トルーパーがダガーナイフ斬撃を繰り出す!
「ルリャーッ!!」魚売りはこれを片方の殺人サンマで受け、もう片方でカウンターの喉首突きを狙う……。
「ルリャ……ンアーッ!?」しかしナイフの電磁ショック機構が作動!
サンマの焼ける匂いと共に魚売りまでも電流に苛まれる!
「ヌウーッ!」黒ずくめは加勢に走っているが間合いにはまだ届かぬ!


(二人が戦っているのに……僕は……そもそも何で……)


レイのニューロンが加速し、思考は情報の波間に沈む……。

……幾つもの時代の、様々な土地のビジョンが見える……古代エジプトのアブシンベル神殿……パリのノートルダム大聖堂……青森戸来村のキリスト墓……ヴァチカン教皇庁……。

……そして、巡礼者じみたフードの男が鈍く輝く籠手を受け取る姿……。


「オラーッ!!」トルーパーの電磁ダガーナイフがレイに迫る!

「イヤーッ!!」だが……おお、何たる事か!レイは果敢にも立ち向かい、籠手でナイフの切っ先を逸らしたのだ!
しかも籠手は明らかに金属製のそれでありながら、電磁ショックを全く寄せ付けない!
「ッコラァ……!!」トルーパーはナイフを振り上げ、レイの脳天に振り下ろそうとする……だが、それが死を招く事となった。

「イヤアァーッ!!」「アバババーッ!?」

おお!見よ!驚愕せよ!トルーパーがナイフを振り下ろす前にレイが突き出した籠手から飛び出した仕込み刃が頸動脈を両断即死せしめた!

ヤクザ・トルーパー全滅!!


「今日はもう店じまいにしましょう」魚売りが心底うんざりした顔で呟く。
それはレイを戦いに巻き込んでしまった罪悪感からだろうか。
「南無阿弥陀仏……」黒ずくめの男は錫杖を鳴らし略式念仏を唱えている。
そしてレイは……戦慄とも畏怖ともつかぬ表情で血に濡れた刃を見つめ続けていた。


――――――――――――


「しかし悪いな魚屋さん、宿まで世話して貰ってな」
「何、危ない所を助けてもらったしお互い様よ……ところであなたの事は何て呼べばいいかしら?」
「俺か?通りすがりの禅僧だ。ボンズでいい」禅僧は寿司をつまみながら言葉を続けた。「もっともモグリで、この通り生臭者だが」
「あら、そう」魚売りは奥ゆかしくそれ以上追及しない。

その時、部屋の隅で縮こまっていたレイの携帯端末に着信があった。

「アー、もしもし……モチヅキさん?レイです……何だって、もう一度!!」

「……爆発……みほおん編集部が!?」

みほおん編集部が爆発。その言葉に、禅僧も真顔で振り返った。


――――――――――――


魔術ギルド構成員じみたローブに身を包んだ女が路地裏からふらふらとおぼつかぬ足取りで歩きだし、宿の扉に手をかけ……そして倒れ込んだ。

彼女の衣服は所々破れ、体は傷だらけであった。唇から微かにある言葉が漏れる。



「……アサシンブレード……」



#2へ続く

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ポストツイッター時代の到来に備えているわ。

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無銘

ここは考察や二次創作、パルプ系小説や与太話に使うつもりよ。ニンジャ成分多め…

通りすがりの魚屋さん

魚売りのお姉さんのミスティックでヒロイックな活躍を描く一話完結バトル小説よ!(不定期連載)
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