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忍殺TRPGリプレイ「シャドー・ネスト・ファクトリー」エピローグ後編

はじめに:この物語は以下の忍殺TRPGソロアドベンチャーリプレイを基にした後日談的ななんかです。
本編登場ニンジャも登場しますがマルチバース的なアレですので、公式とは実際無関係。


これまでのあらすじ)ソウカイ・シックスゲイツの一人、ヘルカイトが消息を絶った!とある廃工場にザイバツ・シャドーギルドの隠しアジトが発見され、シックスゲイツによるASAP調査が開始された。そこには重武装クローンヤクザやザイバツのニンジャ戦力が!ヘルカイトの安否はいかに…!?


◆◆◆


アンブレイカブルを爆発四散させ、階段で上階へ登っているソニックブーム達にIRCが届いた。

発信元は正面から突入したヒュージシュリケンだ。
#HUGESHURIKEN :業務用大型エレベータの電源が生きていた。ザイバツの連中もこれを使ってたみたいだな
#SONICBOOM :49階もあれば無理もねぇな
#HUGESHURIKEN :俺はこれからアースクエイク=サンと乗る。ソニックブーム=サンは他に使えるエレベータが無いか探して早く上に行け
#SONICBOOM :分かった、ASAPで行くぞ

「エレベータか…まぁ、ニンジャでも49階登るのは面倒だからな」ヴェノムファングが呟く。「おい、あれを見てみろ!」クラッシュハマーが指差す先には、分厚い扉と上下に並んだスイッチ…そこからは微かにサイバー光が漏れている!


◆◆◆


ここは48階。「ハアーッ!ハアーッ!…もう追って来ないか…!?」
既にヘンゲを解き痩躯のニンジャに戻ったアーバンウィルムは這う這うの体で撤退。しかし敵の情報は手に入れた、緊急IRC報告せねば。
「ハアーッ!ハアーッ!…ソウカイヤの襲撃です…!エルダーロッド=サンが戦死…敵戦力は少なくともシックスゲイツ級二人アバーッ!?」

「サヨナラ!!」アーバンウィルムの首から上が吹き飛び、爆発四散!

「もう一人いるぞオラーッ!!」ソニックブームが背後からソニックカラテ衝撃波でアンブッシュ殺したのだ!
「何かコソコソIRCで報告してたみてぇだが、ここのボス相手だろうな。こっちの戦力がバレたってなると、とっとと合流して全員で叩くのが最善か…」

当初はイナズマ・タクティクスによる早期制圧が想定されていた。ソニックブーム達が裏手の窓から突入したのもこの為だ。しかし結果は…
((あの女…手古摺らせやがって))アンブレイカブルとの戦闘が長引き、正面突破ルートのアースクエイクとヒュージシュリケンも想定外の動きをする羽目になった。

ショーギの盤面めいて戦況は移り行き、それに応じて戦略を変更せねばならぬ…その時、丁度アースクエイクとヒュージシュリケンが通路の向こうから現れ、ソニックブーム達と合流した。


◆◆◆


エレベータは49階には止まらない。不吉だからだ。
よって48階から階段を使うしかないが…「オイ、クローンヤクザがいるぜ」ヒュージシュリケンが見張りの存在に感付いた。数体のクローンヤクザが階段を巡回している。しかも皆ショットガンを装備しており、屋内では特に厄介だ。

「俺のダイシュリケンはここじゃ狭くて使えないぞ…アース、手はあるか」アースクエイクは沈思黙考し、答えない。「奴らまだ気付いてねえぞ、スリケンで殺せば実際死体だろ?」クラッシュハマーがアンブッシュ殺を提案する。「待て!相手は一体じゃねえ…一度で片付けられなけりゃ残りが撃ってくるぞ」ソニックブームが制する。「ならソニックブーム=サンが適任だと思うぜェ?」ヴェノムファングの指摘は、実際事実だった。

「そうだな、俺が前に出た方が良さそうだ…」ソニックブームは油断なきカラテを構え前進する。


◆◆◆


階段のクローンヤクザを一掃し、一行は49階に到達した。
「先行調査のおかげでだいぶ分かりやすくなったな、あんな若造でも十分役に立ってくれたぜ」ソニックブームがIRC端末の内部見取り図に目をやりつつ独りごちる。当然他のメンバーにもこの情報は共有されており、実際無駄がない。

「こっちはヒュージシュリケンだ、前方問題ない!」前を固めるのがアースクエイクとヒュージシュリケン、背後をソニックブームが警戒しながら『問題の部屋』へと向かう。「例の部屋の調査はブリーフィング通りか、オニイサン」クラッシュハマーがソニックブームに問う。

「そうだ、ここまでクソみてぇな事もあったが調査内容は変わらねぇ…ただ、UNIXの類はダイダロス=サンに任せてあるから勝手に触んなよ」
「ハッキングで情報を漁る手間が省けたぜ」安堵するヴェノムファング。彼に高度なUNIX知識は無いに等しい。クラッシュハマーもそれは同じである。

そのような会話をしている内に先行調査で明らかになった『問題の部屋』の前まで辿り着いた。「ヒュージ、ブリーフィング通りソニックブーム=サン達が突入したら扉の前を固める」「アース、分かったぜ」
そしてソニックブームを筆頭に三人が部屋の扉を開けエントリー!!


◆◆◆


階下にてアーバンウィルムの爆発四散跡を検める黒装束のニンジャあり。「エルダーロッドのみならずアーバンウィルムまでも…許さぬソウカイヤ」


「報告は聞いていたが…ヒデェ悪趣味な部屋だな、オイ…!」ソニックブームが拷問に使われたと思しき椅子に唾を吐き毒づいた。「まったくだ」血で汚れた床を見回しながらクラッシュハマーが頷く。「((あいつの格好より悪趣味なものを見る羽目になるとはな))…あれは何だァ?」ヴェノムファングのニンジャ観察眼が壁際の何かを捉えた。

「おい、これはまさか!」ヴェノムファングとクラッシュハマーの目に映ったのは…ナムサン、傷だらけの背負い式カイトである。「…間違いねェ、こいつぁヘルカイト=サンのもんだ…」ソニックブームが眉根に皺を寄せた。「「つまり、ヘルカイト=サンはもう…」」残る二人が顔を見合わせた、その時!

部屋の奥のデスク上に設置されたUNIXからIRC発信が!三人がモニタを見ると、そこにはキリステ紋アスキーアートが表示されていた!スピーカーから合成音声が流れ始める。

『ドーモ、ダイダロスです。アジト中枢機密UNIX掌握完了しました…扉の電子施錠を解除しておきましたので、突入チームはそちらも調査して下さい』

見れば、確かにUNIXと反対側に重厚そうな鋼鉄の扉がある。
ニンジャのカラテでもこじ開ける事は困難だろうが、鍵が開いているならば…。「…入るぞ」三人はカラテ警戒しながらエントリーした。


◆◆◆


扉の奥の部屋にはニンジャ用と思われる牢獄が設置されており、傷つき血で汚れたオフホワイト装束のニンジャが囚われていた。
「…ヌゥ…ソウカイヤの…増援か…」「「あなたが…!?」」「…間違いねぇ、ヘルカイト=サンだ!まだ息があるぞ!!」ソニックブームが確かめる。

「とっとと錠前ブッ壊して助けるぜェ!イヤーッ!」ヴェノムファングが左腕クローを振り下ろす!だが壊れぬ。所詮戦闘用サイバネとは程遠い代物なのだ。「もう一発!イヤーッ!」右腕チョップ!みしりと軋み音が鳴るが、完全破壊ならず!

「もういい、俺がやる!イヤーッ!」クラッシュハマーのカラテストレートが炸裂!錠前はバラバラに破砕!「クソッ、いいとこ持って行きやがって…!」毒づきながらヴェノムファングが牢の扉を開ける。

ヘルカイトは拷問の影響でかなり衰弱している。「これはZBR打たねえとスシ食うのもキツそうだな…」「俺はZBRを持ってますぜ」ヴェノムファングが懐から取り出したZBRアンプル(ジャンキーから奪ったものだ)を抜け目なくソニックブームに渡す。「口は悪いが気は効くじゃねえか…」

ZBRを注射するとヘルカイトは自由に動けるまでに回復した。とはいえダメージは決して小さくない。「…ありがたい…改めてドーモ、ヘルカイトです…この地区で不審なニンジャ活動を調査していた所、不覚を取った…」「ドーモ、ヘルカイト=サン。ソニックブームです…随分とやられたみてえだな。スシ食って早めに治したほうがいい」ソニックブームは腰の強化タッパーからオーガニック・スシを取り出し、ヘルカイトに渡した。


◆◆◆


漆黒のニンジャ装束には鱗が意匠されており、メンポの端からは爬虫類じみて裂けた口に醜悪な鱗状の頬が覗く。
白目の無い漆黒の瞳はオブシダンめいた無慈悲さをたたえていた。


「ドーモ、ザイバツ・シャドーギルドのブラックドラゴンです。ソウカイヤの犬ども、ここが貴様のオブツダンとなろう!」

「ドーモ、ブラックドラゴン=サン、ソウカイ・シンジケートのヒュージシュリケンです」
「ドーモ、ブラックドラゴン=サン、ソウカイ・シンジケートのアースクエイクです…」
圧倒的なアトモスフィアとキリングオーラが激突する!!

「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」ブラックドラゴンは即座にヒュージシュリケンとの間合いを詰めカラテストレート連打!恐るべきカラテ力量だ!だがヒュージシュリケンもシックスゲイツの一角!素早いフェイントを織り交ぜたカウンター打撃を繰り出す!

「イヤーッ!!」ブラックドラゴンの懐に飛び込み、ヤリめいたランスキックを放つ!「イヤーッ!!」ブラックドラゴンはブリッジ回避、そこからヒュージシュリケンの頭部に蹴り上げを試みる!ヒュージシュリケンはスウェー回避!だが続けざまに倒立姿勢からのウインドミル蹴りが襲う!
「イヤーッ!」「ヌウーッ!」ヒュージシュリケンは間合いを離さざるを得ない!!


◆◆◆


「おい、外が騒がしいぜ?」ヴェノムファングが通路の戦闘音に気付いた。「これはアブナイ奴だ、俺には分かる」クラッシュハマーもただならぬアトモスフィアをニンジャ第六感で感じ取っていた。

その時、ソニックブームのIRC端末にアースクエイクから連絡が!
#EARTHQUAKE :ザイバツ・シテンノの一人、ブラックドラゴンと遭遇
#SONICBOOM :あのブラックドラゴンだと
#EARTHQUAKE :ヒュージシュリケン=サンと二人で足止めするが、時間の問題だ。そっちの調査はどうだ
#SONICBOOM :ヘルカイト=サンは生きており、救出した
#EARTHQUAKE :先に脱出させた方が良いだろう…不味い、ヒュージがアブナイ

アースクエイクからのIRCはそこで切れた。
「これ実際ヤバイ奴じゃねえかァ!?」ヴェノムファングは狼狽する。彼のニューロンにネオサイタマの死神に襲われた時の恐怖が蘇る!
「ビッテンジャネゾコラーッ!!」クラッシュハマーはヤクザスラングでヴェノムファングを恫喝!臨戦態勢だ!


◆◆◆


「イヤーッ!」ブラックドラゴンがトライアングル・リープでヒュージシュリケンの死角から肉薄し、一撃必殺のチョップ突きを狙う!その指先は鋭い鉤爪!アブナイ!!「イヤーッ!!」「グワーッ!?」アースクエイクが決断的インタラプト!巨体から繰り出されるビッグカラテ打撃にブラックドラゴンが吹き飛ぶ!

ブラックドラゴンは見事なウケミから床を蹴り流れるようなトビゲリで反撃!「イヤーッ!」「イヤーッ!」アースクエイクはダブル・ビッグカラテパンチで押し返す!再び間合いを取って着地したブラックドラゴンは二人をオブシダンめいた瞳で睨みつけると、カーボン製メンポを外した!

肉食爬虫類めいて針状の鋭い歯が並ぶ口が露になる!バイオサイバネだ!「シテンノ!!」ブラックドラゴンが気勢を上げると共に黒い煙が二人に向けて吐き出される!彼の恐るべきヒサツ・ワザ、毒霧ブレスである!だがアースクエイクは敢えてこれに向かっていく!自殺行為か!?

否、アースクエイクには策があった。「イヤアアアアーッ!!」両腕を広げ高速で回転!その巨体から生み出されるカラテ斥力はさながらハリケーンの如し!おお…ゴウランガ!ブレス霧散!その勢いのままにブラックドラゴンに突撃!ブラックドラゴンは易々と大ジャンプ回避するも、目前にダイシュリケンが飛来!

「イヤーッ!」ミニマル打撃でダイシュリケンの軌道を逸らし、致命傷を回避!しかしアースクエイクとヒュージシュリケンに挟み撃ちにされ、このままではジリー・プアー(徐々に不利)である。

ブラックドラゴンはヘルカイトの始末とアジトの放棄を選択した。


◆◆◆


「テメェら落ち着けッコラー!!」
ソニックブームが彼らを恫喝する!圧倒的なソンケイの前にニュービーである二人は平伏するしか無い!「いいか、よく聞け!すぐにお前らの手に負えねぇ奴が来る!ヘルカイト=サンと一緒に窓から脱出しろ、わかったな…アァッ!?」

ソニックブームが説明し終わる頃にはヘルカイトはカイトを背負い直し、UNIX室の窓を開けて既に空へ飛び立っていたのだ!「あの野郎…」ソニックブームは小声で毒づいた。

「まぁいい、ここは俺に任せててめぇらは窓から脱出…ドーモ、ソニックブームです」

「ドーモ、ソニックブーム=サン。ブラックドラゴンです。あの蚊トンボを逃がしたのは貴様か」

「…ドーモ、ブラックドラゴン=サン。ヴェノムファングです」
「…ドーモ、ブラックドラゴン=サン。クラッシュハマーです」
残る二人はアトモスフィアに気圧され、アイサツするのが精一杯である。

「ドグサレッガー!!だったら何だってんダッコラー!?」ソニックブームは腰を落としソニックカラテ衝撃波を放つ!ブラックドラゴンは距離を詰めながらミニマルな横跳びで回避!「イヤーッ!イヤーッ!」「イヤーッ!イヤーッ!」ソニックブームはソニックカラテ衝撃波を時間差連射!二発、三発!ブラックドラゴンは全弾紙一重で回避、最後の四発目は天井に届かんばかりの大ジャンプ回避!

だがこれは次の攻撃の予備動作に過ぎぬ。「シテンノ!!」壁を蹴りその反動で強烈なトライアングル・リープ・キックを繰り出す!一気にワン・インチ距離に飛び込み決着する算段か!?「イヤヤヤーッ!!」ソニックブームは対空ポムポム・パンチで応戦!両者のカラテが衝突する!


◆◆◆


ヴェノムファングとクラッシュハマーはソニックブームの指示通り開いた窓から脱出すべく、連続側転で後退!「「オタッシャデー!!」」
いち早くクラッシュハマーが力強いカラテを発揮し窓枠に飛び乗る!ヴェノムファングは左腕が使えぬが、ストリートで培われたパルクールめいたムーブで身軽な側転を繰り出しその後に続く!

「「イヤーッ!」」二人は49階の窓から飛び降り脱出せんとする!既にザイバツ機密データはダイダロスの手によりソウカイ・ネットに転送済みだ。ここはソニックブームの言う通りシックスゲイツに後を任せて撤退すれば良いのだ!

一方ブラックドラゴンはソニックブームの拳を蹴り、反動でネコ科猛獣めいて跳躍!「イヤーッ!」そのままソニックブームの頭部を…狙わない!
飛び越えたのだ!「スッゾコラーッ!!」「シテンノ!!」毒霧攻撃!だがこれは実際目眩ましに過ぎぬ。ソニックブームは一瞬の状況判断で扉側へ移動、間合いを取りソニックカラテを構える!

だが!「イヤーッ!シテンノ!!」その恐るべきシャウトの主は、既に部屋の中には居なかったのだ!


◆◆◆


49階は実際高層階であり、しかも不吉である。ニンジャと言えど何の防備もなく落下すれば実際死ぬ。だが適切なウケミ…前転で落下衝撃を地面に全て放出する等…すれば負傷する事はない。
高いカラテを持つタツジン級ともなれば、高高度を飛行するマグロツェッペリンやVTOL機から生身で飛び降りる事もできるのだ。

ヴェノムファングとクラッシュハマーはニュービー・ニンジャではあるが、最低限の高所落下ウケミ・トレーニングは当然積んでいる。
後はトコロザワ・ピラーに戻り、ここで遭遇したザイバツニンジャ戦力とヘルカイト救出の報告を…!

だが!「イヤーッ!シテンノ!!」恐るべきシャウトが響き渡る!

ナムアミダブツ!窓から飛び出したブラックドラゴンが空中のヴェノムファングめがけて殺人的トビゲリを放ったのだ!その姿は引き絞られた弩から放たれた無慈悲なる黒き矢の如し!

彼らは自然落下に身を任せており、取れる回避ムーブは無いに等しい。さらにこのトビゲリが命中すれば即死、それを免れても致命的な負傷により遅かれ早かれ爆発四散するだろう。二人のニューロンが異常加速し、主観時間が泥めいて鈍化する…その時!


「イヤーッ!!」「グワーッ!?」二人の視界を白い影が横切った!


◆◆◆


ウケミ着地に成功した二人のニューロンには、白き矢の如き急降下トビゲリが黒き矢を打ち落とす姿が焼き付いていた。ヘルカイトのインタラプトである。「ヌウーッ…!」遥か遠くで呻くブラックドラゴン。

「借りは返したぞ…!!」

誰に向けられたのか分からぬヘルカイトの言葉を背に、ヴェノムファングとクラッシュハマーはトコロザワ・ピラーへと急ぐ。
「早くあのオバケについて上に報告を…!」「…オニイサン、後は頼んだ…」


◆◆◆


「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」シースネークは先行調査終了後もアジトに戻らず、トレーニングルームに残り一心不乱に重ラバーサンドバッグを連打していた。彼女のしなやかな回避技術や敏捷性、正確な投擲技術はニュービー・ニンジャの中でも優れたものがあるが…

((…カラテだ…カラテなんだ…!))

基礎体力や正面切ってのカラテ戦闘力には乏しい。
ノーカラテ・ノーニンジャ…ソニックブームはソウル由来の強力なジツを持ちながら、それに驕る事無くカラテを研鑽しあの圧倒的な強さを見せた。曰く、カラテを極めた者が上を行くと。

その言葉を体に刻み込むように、重ラバーサンドバッグに無慈悲なパンチやキックを叩き込んで行く。一打ごとにシースネークの体にニンジャアドレナリンが満ちる!

「イヤアアアーッ!!」最後のカラテ・ストレートがサンドバッグにめり込む!!自主的トレーニングを終えた彼女はメンポの隙間から熱い息を吐いた。「まだまだね…」その顔はメンポを着けていても上気しているのが判る程だ。

汗を拭い水を飲むと、彼女はその場でザゼンした。ヘイキンテキを保つ為である。目を閉じ、昂ったニューロンをフラットに戻す…これもまた、ニンジャのトレーニングには欠かせない。

ふと澄み渡ったニューロンに強いニンジャアトモスフィアを感じ、彼女は再び目を開く。オフホワイト装束は傷つき血に汚れているが、なお衰えぬ威圧感は間違える筈が無い。
彼こそ…。


「ドーモ、はじめまして…ヘルカイト=サン。シースネークです」
「ドーモ、シースネーク=サン。ヘルカイトです…お前の情報にも助けられたな」


◆◆◆


「ヌウーッ…ヴェノムファング…覚えたぞ!!」


如何にザイバツ・シテンノの一人とて、シックスゲイツ級三人を正面から相手取っては勝ち目は無い。ブラックドラゴンは廃工場アジトを放棄し撤退した。「アース、奴を逃がしていいのか!?」「ヒュージ、深追いすれば実際危険も大きい」

最後にヴェノムファングを仕留めんとしたのは一人でもソウカイ・ニンジャを屠らんとするシテンノの矜持であったのか?それだけではない。

トコロザワ・ピラーに到着した二人…その片割れ、ヴェノムファングの腰に吊られていたのは…ナムサン!アンブレイカブルの愛刀であった!
ブラックドラゴンはこれを目にしたのである!彼女は将来有望な誇り高きザイバツ戦士であり、特に気に掛けていた一人であったのだ。

ブラックドラゴンの怒りはどれほどのものだったであろうか。ヴェノムファングには知る由も無かったが…


◆◆◆


トコロザワ・ピラー、謁見の間。
ヴェノムファングとクラッシュハマー、更にはヘルカイトが首領ラオモト・カンの元に平伏する。

「「まず報告いたします」」「ムハハハハハ!!!!言うてみろ」
「ヘルカイト=サンはブラックドラゴンなるザイバツの恐るべきニンジャに拘束・拷問されていましたが我々が救出し、無事ここにおられます」
「…私の不覚の致す所であった、すまないラオモト=サン…」ヘルカイトがさらに深くドゲザする。

「ムハハハハハ!!!!こうして実際無事に戻れたのだ、コウボウ・エラーズと言うではないか!!」「…ラオモト=サン…」
「…続きを。ザイバツ機密UNIXは既にダイダロス=サンがアドミン掌握しました。直に報告が上がってくるでしょう」
「ブラックドラゴン以外のニンジャは恐らく全滅、ブラックドラゴンもシックスゲイツ三人相手では長くは持たないと思われます」

その時!『ドーモ、ラオモト=サン。ダイダロスです…機密UNIXデータを解析した結果、ザイバツのアウトポストがネオサイタマに多数存在する事が判明…モニタに転送します』

モニタ上にはネオサイタマの3Dマップの上に幾つもの赤い点!全てザイバツのアジトを示している!

「「「只今戻りました」」」
そこに現れたのはソニックブーム、ヒュージシュリケン、アースクエイク!「スミマセン、ブラックドラゴンは取り逃がしました」ソニックブームが頭を下げる。他の二人も同様だ。

「ムッハハハハハ!!!!よいよい、ヘルカイト=サンは助かった、情報は得られた、それで十分ではないか!!」
「これでザイバツのネズミ共をイチモ・ダジーンにしてくれよう!!!!」哄笑するラオモト。オイランが皆の元に報酬の札束を運んできた。
そしてヴェノムファングとクラッシュハマーにもだ。「「アリガタキシアワセー!」」


◆◆◆


報酬を受け取った二人は特に中身も無いスカム会話をしていた。
「やっぱりああいう改まったアトモスフィアって緊張するよなァー」「俺はこう…ヤクザオヤブンと会う時みてえにだな…」「俺は根っからのストリート育ちだからわかんねェよ。それより金入ったから今度こそサイバネ…ん?」

トレーニングルームを通りがかった時、ヴェノムファングは慣れたアトモスフィアを感じ取ったのだ。「シースネーク=サン!いるな!?」

「その声は!ドーモ、ヴェノムファング=サン。シースネークです…隣は?何処かで見たような気がするが」
ソウカイヤは巨大組織であり、構成員の活動時間もそれぞれ異なるため例え同期のニンジャであっても実際面識があるとは限らない。

「ドーモ、シースネーク=サン。クラッシュハマーです」
「ヴェノムファング=サンとは実際友人なのか?」「いや、今回の任務で初めて会ったな」「クラッシュハマー=サン、こいつはあの廃工場を最初に調べてザイバツが関わってるって明らかにしたんだぜ」「…こいつとは」

クラッシュハマーはこのアトモスフィアを訝った。
「ヴェノムファング=サン、シースネーク=サン、あんたらの関係は…」


「「腐れ縁だ」」


◆「シャドー・ネスト・ファクトリー」エピローグ完◆


◆◆◆


ニンジャ名鑑#XXXX
【ヴェノムファング】
ソウカイ・シンジケートのニンジャで、ストリートギャング出身。憑依ソウルは毒液を自在に操るかなり高位のものだが、現在の彼はその力を殆ど引き出せていない。ニンジャスレイヤーに切断された左腕を民生用義手を違法改造したクローに換装している。
ニンジャ名鑑#XXXX
【クラッシュハマー】
ソウカイ・シンジケートのニンジャ。元ヤクザ・バウンサーであり、ソニックブームを特に慕っている。ジツは持っていないが、モータル時代から鍛え上げられた容赦ないヤクザカラテで敵を圧倒する。
ニンジャ名鑑#XXXX
【アンブレイカブル】
ザイバツ・シャドーギルドの誇り高き女ニンジャ戦士。ニンジャソードの高いワザマエを持つ他、素手のカラテも優秀。
ムテキ・アティチュード使用者でもあり、敵の一撃を無効化した後隙を突いてカウンターカラテを仕掛けるなど油断ならぬ使い手。
ニンジャ名鑑#XXXX
【エルダーロッド】
ザイバツ・シャドーギルドのニンジャ。アデプト位階。
元バトルボンズであり、高いボー・カラテのワザマエを持つ。優れたニンジャ筋力とニンジャ器用さから放たれる高速のボー捌きは敵に恐怖を与える。また奥の手としてボーをカラテ強化するジツも隠し持つ。
ニンジャ名鑑#XXXX
【アーバンウィルム】
ザイバツ・シャドーギルドのニンジャ。アデプト位階。
小柄でニンジャ野伏力に優れ、斥候任務やスリケン投擲によるアンブッシュ攻撃を得意とする。エルダーロッドと行動を共にする事も多い。
カラテ戦闘時にはジツを行使、鋭い爪と歯を備えた巨大トカゲ人間の姿にヘンゲして戦う。


スキするとお姉さんの秘密や海の神秘のメッセージが聞けたりするわよ。