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魔王、猫になる。〜魔王さまのほのぼの世界征服ライフ〜 第19話 魔王、散歩する。

 我輩は魔王である。名はトラ吉。

 早朝、寝ている主人たちをおちょくり、網戸の前でいつものようにチャッピーたちを待っている。

 朝は涼しくて風が心地よい。

「ちゃーちゃん、涼しいうちに散歩行ってみようか。」

 主人①よ、散歩とは聞こえが悪いが、要は我が領土(なわばり)の拡大であるな。

 よかろう。

 魔王たる我輩の領土(なわばり)に相応しいか視察してくれようぞ。

「お、やる気満々だね? ちゃーちゃん、じゃぁこれつけるよ。」

 な、なんだその拘束具は。

 我輩は何にも縛られぬ存在であるぞ。

 ……。

「はい、できた!」

 屈辱である。

 これではまるで家畜ではないか。

 だが、魔王がこのような些細なことで腹を立ててはいかんな。

 今は主人①に従っておこうではないか。

ーーー

 うむ、今日は良い天気であるな。

 しかし、この世界の文明には驚かされる。

 転生直後などは腰を抜かしたほどだ。

 しかし、この「こんくりーと」とか言う石はなんと丈夫で優秀か。

 ここまで綺麗な平面を地面に作ることができるとは、相当に加工がしやすいのだろう。

 魔王城建築の際にはこの「こんくりーと」を素材としてくれよう。

 そして、この「こんくりーと」の上に塗られておる白い線はなんなのだ。

 表面は「こんくりーと」とは異なり少しザラザラしているぞ。

 幅はちょうど我輩と同じぐらいだな。

 猫族専用の道なのだろうか、ひとまず上を歩いてみようぞ。

 なんだ、この肉球に伝わる心地の良い感触は。

 実際に触ってみると絶妙な凹凸があり、それがザラザラとなんとも心地よいのだ。

 この線の上で寝転がった日にはもう……。

 ええい、もう我慢できんわ。

 なんという肌触りだ!

 魔王城が「こんくりーと」製ならば、この肌触りの良い白い素材を床として採用しよう。

「あー! ちゃーちゃん。汚れちゃうよぉ。」

 構わん。

「はい、ちゃーちゃん。暑くなってくるからそろそろお家に戻るよー」

 なに? この白い線をまだ調査せねばならんのだ。

 チャッピーなどは常に外で暮らしているのだぞ、まだまだ我輩も大丈夫……。

ーーー

 けしからん。

 抱えられてしまうと抵抗ができんというのに。

「じゃあ、汚れちゃったから体拭くよー」

 主人①よ、その必要はない。

「ちょっと、あばれないの! 寝っ転がって汚れちゃったでしょ。」

 外で横になったぐらいで汚れたなど過保護すぎるぞ。

 それに、この猫という種族の体になってからどうも衣が濡れることに抵抗がある。

 即刻やめるのだ。

「ついでにお尻も拭こうかー」

 なに!? なぜ今なのだ!?

 少なくともそこは外に出て汚れてはいないはずだ。

「ほら、じっとしてて!」

 そこはダメだ!

 やめろぉぉぉ……。

 そう、その時が来るまでは?


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