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なぜ今「ニット」なのか?

今、上質な「ニット」製品が人気を集めています。それは、モノがあふれて使い捨てることが当たり前になった中で「特別な1枚を大切に着続けたい」と考える人が増えているからです。

こんにちは、記者のカミュです。今回から、村松啓市さんのnoteページで連載をもたせていただくことになりました。この連載を通して、世界で活躍するデザイナーの村松啓市さんの魅力や、その作品について、ご紹介していきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

■「ニット」ってどんなイメージですか?

皆さんは「ニット」にどんなイメージをもたれているでしょうか? 私は……正直言って、ちょっとダサいと思っていました(笑) こんなことを言うと「ニット」がお好きな方には怒られてしまうかもしれませんが、でも本心です。

「ニット」=「セーター」というイメージで、子どもの頃、親が買ってきたちょっとダサいセーターを無理やり着せられていた記憶があります。母が手編みで編んでくれたこともありましたが、正直それはもっとダサい(笑) だからきっと、「母親が自分のためにわざわざ編んでくれた」という付加価値がなければ、おそらく選ばないようなものでした。

これを読んでくださっている方の中には、「ニット」に対して以前の私と同じようなイメージをもっている方もいらっしゃると思います。

そう思っている皆さんに、ぜひ見ていただきたいものがあります。次の写真は、すべて「ニット」製品です。

↓手編み機で編んだカシミヤ混の大判ストール

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↓オーガニックコットンのヘアバンド

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↓ニットカバーポット

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↓ニットのウエディングドレス

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いかがでしょうか? これでもダサい?(笑)

■「ニット」製品に対する誤解

こんな話をしている私自身、自宅のクローゼットを見てみると、確かに「ニット」製品をあまりもっていません。改めてなぜなのかを考えてみると……

・家で洗濯ができなそう
・伸びたり縮んだりすぐに傷んでしまいそう

こんなところかなと思います。でも実はここには、「ニット」製品に対する大きな誤解があるんです。村松さんにお話を聞いてみました。

一般的に流通している、低価格の安い「ニット」製品には、そもそも素材にいい「糸(毛糸)」が使われていません。とにかく柔らかく、軽く、原料にコストがかからないように作られた「ニット」は、お店で触った瞬間の柔らかさを最大限意識して作っているので、しばらく経つとすぐに毛玉がたくさんついたりごわごわしたりしてきます。それで「ニット」製品に対するイメージが悪くなってしまう人が多いのかもしれません。毛玉のできやすさや製品の取り扱いについては、糸の原料や、糸の作り方、編み方など、さまざまな要素があるので、一概には言えないのですが、少し固めな風合いのニットのほうが毛玉ができにくかったり、デザインのテクニックで変わります。

そう言われてみると、丁寧な仕事で作られたような「ニット」製品に、私はあまり触れる機会がないような気がします。

同じ3万円を出すなら、「ニット」よりコートを買っちゃいますよね(笑) でもそれはきっと、「ニット」製品の本当の良さに、まだ触れたことがないだけなんだと思います。だから私は、本当にいい「ニット」というものがどういうものなのかを、もっとたくさんの方に知っていただきたいなと思って、「AND WOOL」のようなことをやっているんです。

「AND WOOL」のすごいところは、単に村松さんがデザインだけをするのではなく、材料である糸や製造の作業工程を含め、完成するまでのすべてを、一から全部作っていることです。その「ニット」にとって一番いい材料や方法が隅々までよく考えられているので、私たちが普段触れている「ニット」製品とは、まったく違うものが完成しています。

私たちの商品で一番人気がある「カシミヤ混のストール」は、繊維が細いため、いわゆる「ニットの毛玉」と言われて皆さんが思い浮かべるような、大きくて取りにくい毛玉はできづらいです。使い込めば、それなりにダメージは出てきますが、ヴィンテージみたいな雰囲気がでるような、そんな毛糸を使用して作っています。

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村松さんのお話を聞いていると、私たちが「ニット」に対して大きな誤解をもっていることがわかります。本当にいい「ニット」製品を触ったことがないからです。そうなると、実際に見たり触ったりしたくなりますよね。

■なぜ今「ニット」なのか?

村松さん率いる「AND WOOL」は今、ファンを着実に増やし、商品はもちろん、ワークショップなどもとても人気を集めています。商品がすぐに入荷待ちになってしまったり、ワークショップの定員がすぐにいっぱいになってしまったりと、世の中の「ニット」人口が確実に増えていっていることがわかります。でもなぜ今「ニット」なのでしょうか?

その答えのヒントになりそうなことが、村松さんの1つの活動から見えてきます。それは、手作業で作る完全オーダーメイドの「ニットのウエディングドレス」のプロジェクトです。

とても繊細で美しいドレスなのですが、これをわざわざ注文しようという人って、どんな人なのだろう……とちょっと思いませんか? 村松さんに伺うと「普通の方ですよ(笑)」と。このドレス、昨年クラウドファンディングが行われて以降、途切れなくずっと注文が続いているのだそうです。私とは違って「ニット」の本当の良さを知っている人たちが、すでに全国にはたくさんいるんだということがわかりました。

ただ、皆さんもちろん普通の方ですが、人生の「特別な日のためにわざわざ特別な1枚を用意したい」という気持ちからだとは思います。手作業で作られる「ニット」はまさに「特別」です。そういう場面に、これ以上ふさわしいものはないと思います。

今、「ニット」が支持され始めているのは、「すぐにダメになってしまう服を次々使い捨てていく」よりも「特別な1枚を大事に着たい」「大切な1枚を子どもや家族、大切な人に着せたい」という価値観でモノを見るようになった人が、増えているからなのかもしれません。

「ニット」は、今の時代を生きる人たちの価値観や生活スタイルに、最も合った「衣類」なのではないかなと思いました。

(記者:カミュ)


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