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ライセンス契約と「こころの産業」 ディズニーを愛する元SVがお伝えしたいこと2-③

本日のnoteはライセンス契約と「こころの産業」 についてです。
 
東京ディズニーランドも東京ディズニーシーも、ディズニー社とのライセンス契約に基づいて運営しています。もちろんディズニー社がライセンサー(承認権を与える側)でありオリエンタルランドがライセンシー(承認権の許可を得た側)です。
 
東京ディズニーランドが成功した理由の一つがライセンサーのディズニー社とライセンシーのオリエンタルランド間の信頼関係が構築できたことにより、オリエンタルランドの主体性が十分に発揮できたことです。
 
このことにより、例えばスプラッシュ・マウンテン運営の技術的問題やエンターテインメントショーにおいて「日本製」が認められるようになったり、日本的サービス(おもてなし)がディズニー社から高く評価されるようになったりしたと私は捉えています。
 
しかし、です。これは東京ディズニーランドワンパ-ク時のことであり、さらに言えば東京ディズニーランドの最高運営責任者であった上澤昇元副社長の功績と言っても過言ではありません。加賀見元社長は東京ディズニーランドのパーク運営に関わっていない、したがってパーク運営に関しては無知の可能性があるとも言えるでしょう。
 
東京ディズニーランドのパーク運営に携わったマネージャーやスーパーバイザーは皆、同様に捉えていると容易に推察されます。
 
東京ディズニーランドの最高運営責任者として上澤昇元副社長が成し遂げたことは、まさにテーマパーク事業を「こころの産業」として確立させたことです。
 
「こころの産業」についても上澤昇著 『ディズニー・テーマパークの魅力-「魔法の王国」設立・運営の30年-』から引用、紹介します。
 
 ディズニー社との契約を一カ月先に延ばしたものの、綱渡りのように見えた。早速、勢い勇んで乗り込んだオリエンタルランドの取引先の三井信託銀行では「遊園地にはとてもそんな融資はできません」とまことにつれない応答に終わった。二人はことの難しさに思わず慄然とした。もう一カ所ということで、次に行ったのが日本興業銀行だった。沼田副知事は高橋さんの要請に沿って今度は、「千葉県が全責任を持って、将来にわたって金融機関にご迷惑をかけるようなことを一切おこないません」という言葉を添えてくれ、応答出てくれた副頭取の菅谷隆介さんを痛く感動させたということだった。菅谷さんは「日本の将来はこれから重厚長大の産業から、東京ディズニーランド・プロジェクトのような新しい産業が求められる時代が来る」と話されたという。かつてご自身もディズニーランドに行った経験を持つ菅谷さんは東京ディズニーランドと「こころの産業」と呼んで評価し、「融資については私が音頭を取りましょう」と言って協力を約束してくれた。高橋さんはその時の思いを私に、「地獄で仏に出会った。あの時、菅谷さんが協力を引き受けてくれてなかったら、東京ディズニーランドは実現することはなかった」と言って生涯、恩人としていた。
<引用終了>
 
それでは「こころの産業」とは。
ディズニー主義 正直 信頼性 誠実 敬意 勇気 開放的 
ディズニーフィロソフィ 「全世界の人々の幸福の創造」
 
卓越した創造知と実践知を有するライセンサーであるディズニー社の主義・哲学をパークで実践し、事業として成立させることと私は理解しています。
 
そして、ライセンシーであるオリエンタルランドは、パークの最高運営責任者のもと、実際にパーク運営を落ち度なく実践してきたのがマネージャーでありスーパーバイザーです。もちろん、東京ディズニーランドの成功は本社部門を含めすべてのキャストの尽力によるものであることは言うまでもありません。
 
しかしながら、加賀見社長体制になり「OLC 2010 Vison」ではスーパーバイザー制度を廃止する方針が示され、ASM(アシスタントマネージャー)制度に切り替わると発表されました。
 
アトラクションやサービス施設の運営ではなく、パーク運営に携わる運営部のスーパーバイザーは、最高運営責任者や「オリジナル・ナイン(アメリカでパーク運営の基本を学んだ9人、加賀見元社長は含まれません」と共にパークを歩き、指導されてきました。
 
私はこの時から「2010年には100%の確率でゲストに提供するサービスの品質は低下する」と考えてきました。
そうなりました
上澤昇元副社長が退任され「一強」
最後に
 
サービスは結局相手に対する「思いやり」である。考えてみれば、これは機械文明の発達と、戦後の物質主義文明に走りすぎて結果、すっかり忘れてしまった日本人の美徳であった。「思いやりの心」をもつ企業は顧客を必ず満足させ、従業員の士気と世間の評判を必ず高めることができる。この精神に支えられた顧客サービスの実際を見て、アメリカのディズニー社のトップが「東京のディズニーランドはロサンゼルスのディズニーランドの水準を超えた」と素直に評価してくれたのだ。東京ディズニーランドのために書き変えた運営マニュアルと顧客サービスの方法は、その後アメリカのディズニー社のテーマパークに逆移出して、むこうのサービスの向上に役立っているのだ。
 <引用終了>

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