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マニュアルはない? ディズニーを愛する元SVがお伝えしたいこと2-⑤

ディズニーを愛する元SVがお伝えしたいことの2は、東京ディズニーシー開業後に何が起きているか、何がどうして変わったのかについてお伝えしています。
 
今日のnoteは、私が2020年から投稿してきたブログ(オフィス中村むねひらのブログ livedoor.jp非公開記事含め約500記事)のディズニー・テーマパークカテゴリー記事を紹介します。
 
内容は、間違った情報や認識により大混乱が生じているのではということが中心になります。
 
■何が大混乱か
1983年の開園以来、長年積み上げてきたマニュアルに関する「正しいこと」が、日本社会に正しく伝わっていないことによる大混乱。「ディズニー・テーマパークにはマニュアルはない」とする荒唐無稽な論考などで「ディズニー・テーマパークにマニュアルは無い論」がビジネスに利用されており、いわゆる「マニュアル悪者論」が日本の企業や働く個人の労働生産性を著しく低下させているという結果を招いています。
 
■定義 
ディズニー・テーマパークのマニュアルの定義は「標準作業手順書」そのものです。決して「取扱い説明書」ではありません。
ディズニー・テーマパークの運営マニュアルの正式名称はSOP(Standard operating procedure 標準作業手順書)です。アトラクションの立ち上げなど標準作業の手順が記されていますが、非常(Emergency)時や避難(Evacuation)時の作業手順も記されています。
 
■システム産業・ライセンスビジネスとマニュアルの関係
システム産業におけるブランド力の維持管理を行うのがスーパーバイザーです。TDL・TDSに限らずフランチャイズ店も同じですが、ライセンサー(ディズニー社、本部)とライセンシー(㈱オリエンタルランドや、店舗)が取り交わした運営上の契約書の一部がSOPであり、交わした契約を守らせるのが、スーパーバイザーが行うスーパーバイジングです。言い換えるとスーパーバイジングとは、ライセンシーがライセンサーとの契約、マニュアルに従って運営しているかをスーパーバイザーがチェックすることです。
 
■「マニュアルは100%存在する論」の根拠
㈱オリエンタルランドHPより
防災訓練
東京ディズニーランド、東京ディズニーシーでは、地震などの災害やその他の非常事態が発生した場合に迅速な対応ができるよう、従業員が取るべき措置手順をマニュアル化するとともに、マニュアル内容の周知徹底を図るため、開園前もしくは閉園後の東京ディズニーランド、東京ディズニーシー全197施設において防災訓練を実施しています。
http://www.olc.co.jp/ja/csr/safety/others.html (変更されたようです)
 
上澤昇㈱オリエンタルランド元副社長著 
『ディズニー・テーマパークの魅力-「魔法の王国」設立・運営の30年-』より
東京ディズニーランドがオープンして数年後、ディズニー社のマイケル・アイズナー会長、フランク・ウエルズ社長から「この東京ディズニーランドの運営とサービスこそ、ウォルト・ディズニーが理想に描いていたものだ。今度は私たちディズニー社側が東京ディズニーランドから学びたい」と高い評価を得ることができた。
近年ディズニー・テーマパークがアメリカ大学院のMBAクラスの「顧客満足」経営、顧客サービスのビジネスモデルと評価されているが、ディズニー社のマニュアルを超えたTDL方式がそこに影響していた。私はその評価に満足しながらも、それで終わらないために、マネージメント・スタッフに対し。「東京ディズニーランドはもうマニュアルに基づく理論を現場に応用するだけでなく、これからは現場から自らの質の高い理論をつくり出して欲しい」と激励した。
<引用終了>
 
㈱オリエンタルランド北村和久元常務講演録より
「山寺文化講演会」1990年6月 山寺文化保存会、山寺観光協会共催
東京ディズニーランドにはマニュアル、手引書みたいなものなんですが、こんなのが300冊あります。今使っているのが300冊です。
<中略>
切符を売る従業員のマニュアル、これを最初に見せてもらいました。読んでみますと、アメリカのマニュアルは大体そうなんですが、日本みたいに抽象論は何も書いていないんです。具体的行動も、仕方だけ書いてある。
 
一頁開いて見れば何と書いてあるか。「あなたの仕事はチケットを売るのが仕事ではありません。東京ディズニーランドにお越しになったゲスト(ゲストというのはお客様のこと)、と、まずコミュニケーションをするのがあなたの仕事です。」そこまで文書で書いてあるんです。
<引用終了>
 
日本経済新聞
2003年4月15日(東京ディズニーランド20周年)社説「独走するディズニーランド」
 もう一つは、娯楽では世界一のソフトとノウハウを持つ米ディズニーとの提携だ。TDLを運営するオリエン タルランドは、ディズニーに膨大なロイヤルティーを払い、「米国文化のコピー」とやゆされながらその厳格 なサービスマニュアルを徹底的に順守した。
 徹底したマニュアル主義は、ハンバーガーで成功した日本マクドナルドと共通している。
<引用終了>
 
■誤報などの実際
“TDLにはマニュアルは存在せず”グーグル検索結果
 
FNNプライムオンライン 
埋め立て時にまだ誘致は白紙…8代目社長が語る東京ディズニーリゾート“進化”への想い
2019年4月18日 木曜 午後10:00
https://www.fnn.jp/articles/-/1717
「ディズニーでは、サービスに関するマニュアルがないんです。東京ディズニーリゾートに訪れるゲストに一人一人に純粋に楽しんでいただきたいということと、素敵な思い出をお持ち帰りいただきたいというキャストの思いを届けるため、自主的に行動してほしい、ということを伝えています」
 
接客マニュアルは存在せず、キャスト一人一人が考えて、ディズニーの精神に基づいた接客を行う。その精神を学ぶために東京ディズニーリゾートでは、パークでの研修を含めて5日から1週間という時間を掛けている。
<引用終了>
 
日刊工業新聞
「TDL」がオンリーワンであり続ける、ポートフォリオ経営
オリエンタルランド代表取締役会長兼CEO・加賀見俊夫
2019年03月30 ニュースイッチ
TDRでは主に約2万人のキャスト(準社員)がオペレーションを担っている。ゲスト(顧客)サービスにマニュアルを設けず、ディズニー・フィロソフィー(哲学)や行動指針「SCSE(安全、礼儀、ショー、効率)」など、考え方を共有・共感してもらうことで、自ら考えて行動できるキャストを育成している。人財というソフトパワーがTDRの魅力を一層引き立てている。日
「TDL」がオンリーワンであり続ける、ポートフォリオ経営|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社 (newswitch.jp)
 
 
早稲田大学商学部井上ゼミナール 研究報告書 ブランドと組織文化 2005年1月  
ディズニーフィロソフィー:TDLにはマニュアルは存在せず、すべてこの、ウォルト・ディズニーの哲学にであるディズニーフィロソフィーに則った対応が教育されている。これもまた書物は存在せず、理念や精神といった概念的なものである。「夢を見ることができれば、それは実現できる」「我々は、決して忘れないのです。すべての始まりが1匹のねずみだったことを」などといったものがこれに相当する。これをキャストに浸透させるため、ディズニー・ユニバーシティという機関が存在する。(慶応ビジネスレビュー2004)
 
第3章 第2節‐2 組織文化分析 ②価値 「マニュアルは必要無いのである」 
http://www.waseda.jp/sem-inoue/brand&corporateculture.pdf
 
President
2014/12/03 11:00
なぜディズニーにはサービスマニュアルがないのか?
事例共有で「暗黙知」を豊かに
https://president.jp/articles/-/14001
 
DIAMONDO ONLINE
なぜディズニーランドはマニュアルがなくても成功できるのか
川原慎也:船井総合研究所 東京経営支援本部
2010.4.12 0:30
https://diamond.jp/articles/-/7853
 
東洋経済0NLINE 2017/04/01 8:00 https://toyokeizai.net/articles/-/165744?page=2
ディズニーキャストには、実はマニュアルが存在しません。
どのボタンを押せばアトラクションが動くか、止まるか、といったような動作を記した手順書はあります。しかし、「お辞儀の角度」「笑顔のつくり方」というようなサービスマニュアルは存在せず、キャストは企業理念である「ゲストにハピネスを提供する」ことと、「SCSE(安全・礼儀・ショー・効率)」という行動基準以外、ほぼ従うべき事柄はないのです。
櫻井 恵里子 : ディズニーの元人材トレーナー/西武文理大学サービス経営学部専任講師
 
■最後に ― マニュアルの効用と契約の意味
 
京都に「山本精工株式会社」というアルミニウム加工会社があります。この企業のマニュアルに対する考え方は私のマニュアル論に大変近いものです。
 
山本精工株式会社 山本常務談(過去の発言)
良いところは学び、参考にする。個人のノウハウをデータ化する、マニュアル化する、人伝えして共有し、一度自分の仕事をなくして、新しい仕事にチャレンジする時間を生み出す。このサイクルを企業内に根付かせ、中身の濃い厚みのある企業になる。
<引用終了>
 
ここまで記してきましたように「ディズニーランドにはマニュアルが存在しない論者」が多いことには閉口します。このことが日本の生産性を押し下げている要因の一つと私は考えています。
 
GDP4位転落と生産性向上に関するnote   マニュアルの有効性|中村むねひらより
 
朝日新聞 2008年 社説
 
兵庫県
<中略>
素材などを生産している。ここで96年から若返り作戦を進めた結果、生産性が3倍へと飛躍的に向上したという。
 〇〇〇〇は他企業より一足早く、10年前にベテラン社員の大量退職が始まった。だが、ベテランのノウハウや知識を中堅以下へうまく引き継ぐことができないことが悩みだった。
 そこで、中堅の管理職がベテランから徹底的に聞き取り調査をおこない、継承すべき知識と捨ててもいい知識を整理分類した。その成果をコンピューターに入れ、だれでも簡単に引き出して利用できるようにしたのだ。
<引用終了>
 
タイトルに「マニュアルの有効性」と書きましたが、上記社説を単純化するとノウハウのマニュアル化となります。つまり、この企業は、ノウハウをマニュアル化することによって生産性を3倍に向上させたのです。

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