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福島第一原子力発電所事故の真相 ― 全編

安全管理の専門家としてのnoteへの「記録」です。(約25,000文字)
 
1-1から1-4までの要点と第94回国会参議院エネルギー委員会の要点を記します。
 
1-1要点
・昨年(2019年)9月19日に東電原発事故の刑事事件としての判決が下され、旧経営陣に無罪が言い渡された。
・事故の真因を知るためには「現場の所長が経営陣に含まれるかどうか」を出発点にしなくてはならない。
 
1-2要点
・事故の真因を知るためには、1981年5月の第094回国会 エネルギー対策特別委員会議事録を読む必要がある。
・福島第一原子力発電所には、安全装置が「バックフィット(設備のアップデート)」されていなかった。
 
1-3要点
・事故の真因を知るためには、運輸技術審議会答申「今後の鉄道技術行政のあり方について」の要点を知ること。
・「予見できなかった」のではなく、「予見しなかった」ことこそが問題である。
・安全管理の専門家が含まれていたのか、メンバーの思考回路に問題がなかったのか。
 
1-4要点
・労働組合による原発の安全管理に関する意見が国会へも届いていた。
・中曾根首相の国鉄民営化を契機に労働組合という組織は機能しなくなった。
・事故の真因は事故防止の思想と事故防止の体制(システム)にある。
 
筆者は1-3で「人類が引き起こした地球史上最悪の事故、チェルノブイリ原子力発電所爆発事故のあの恐怖が今日本に・・・」と書きました。書いたのはJR福知山線脱線事故直後の2005年5月のことです。その後、2007年5月には福島第二原子力発電所で、同年11月には四国電力伊方原子力発電所で「ディズニーランドに学ぶ安全管理」という演題で講演をしました。貴重な情報も教えて頂きました。
 
2007年当時の原子力発電所の安全管理から類推できる福島第一原子力発電所事故時の安全管理を、今後このブログで公開していきます。「目からウロコ(真実が見えて来る)」になるかもしれません。
 
■福島第一原子力発電所事故の真相に迫る 1ー4

今回は思考、思想とバックフィットをテーマにして書きたいと思います。結論は「現場を知らない経営陣の思考、思想には安全管理が欠落している、そのためにバックフィット(設備のアップデート)がなされず事故に至った」が事故の核心であるということです。
 
参議院会議録情報 第094回国会 エネルギー対策特別委員会 第7号1981年五月二十九日(金曜日)
第94回国会 参議院 エネルギー対策特別委員会 第7号 昭和56年5月29日 | テキスト表示 | 国会会議録検索システム (ndl.go.jp)
https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=109413809X00719810529&current=3


 
全国電力労働組合連合会政策局長の高松実氏の発言を引用します。
 
○参考人(高松実君)
特にスリーマイルアイランドの事故が、人為的なミスの重なりにより大きな事故に発展をしていった経過を踏まえまして、人為的なミスをいかに最小限に食いとめていくか、またそれに対応するような保安規定の見直しなど、運営体制の確立などを求めますとともに、仮に人為的なミスが発生をいたしましても、十分カバーできるようなハード面、設備面を整える、いわゆる品質管理のあり方などを電力経営はもちろんのこと、関係各位に要請してまいりました。
 また、労働組合としての組合員を初め、従事者に対しましても、みずからの技能におぼれることなく、安全を最優先に心がけるよう指導、教宣をしてきたところであります。その観点から、今回の敦賀原子力発電所の事故は、まことに重大であり、地域住民の方々を初め、多くの関係者の皆さんに多大の御迷惑をおかけいたしておりますが、事故の事前防止に労働組合として力が及ばなかったことについて、責任を痛感をしているところであります。目下、事実関係の把握に当たってまいりましたが、ほぼ全容が明らかになる中で、次々にこれまで知り得なかった新たな事実が明らかになるという事態は、率直に申し上げまして組合も背かれたと断ぜざるを得ないと思いますし、憤りの気持ちでいっぱいであります。この結果を会社が謙虚に反省をし、会社が責任の結末を厳格に措置して、特殊性の強い原子力発電を管理運営するに値をする経営体制の確立を断固として求めていきたいと考えているところであります。
<中略>
 そのためには、先ほど申し上げましたように、経営に対しては厳しく運営管理体制を含めたあり方というものを求めていかなければならないというふうに考えておりますし、また直接従事をしております労働組合の立場から、十分チェック機能が発揮できるような組合運営のあり方というものも、抜本的に考えていかなければならないと考えております。この両者が相まって、まず原子力発電の安全というものについて、当事者みずからが責任を持って対応するということを前提として、行政のチェック機能というものに対する見直しを要請をしてまいりたいと考えている次第であります。
<引用終了>
 
お読み頂くことで理解して頂けたと思います。労働組合の局長の思考からはこのような発言がなされるということを。
 
残念ながら中曾根首相の国鉄民営化を契機に労働組合という組織は機能しなくなり、結果的に上記のような現場労働者の「声」が会社(使用者)に届かなくなり、人間の目という安全装置が働かなくなり、その結果として重大事故につながるという極めて危険な社会に日本は変質してしまいました。
 
非組合員とみなされる役員だけを「経営陣」と東京電力がしていたならば、事故の真相のほとんどはそこにある、と筆者は確信しています。
 
39年前の参議院エネルギー委員会ではバックフィット(設備のアップデート)の問題も指摘されています。
 
日本科学者会議原子力問題担当常任幹事の舘野淳氏の発言を引用します。
 
○参考人(舘野淳君)
法律との関係で最後に一言つけ加えますならば、バックフィットという問題があります。これは新しい規制ができましたら、その規制を以前の施設にまでさかのぼって適用するということなわけですが、このバックフィットは一般的には行われておりません。これは技術的に言いますと、原子力技術が急速に進歩してきている技術だからということは言えますが、その規制の面からしますと、国民の安全を守るためですから、積極的にこのバックフィット、つまりさかのぼって適用するということを進める必要があるのではないかと思います。
<引用終了>
 
1-2でもこのように書きました。
 
1971年に稼働した福島第一原子力発電所の原子炉は、GEのマーク1型です。1984年に完成したフィリピンのバターン原発は、メルトダウンによる水素爆発を想定し、原子炉建屋か原子炉格納器内の水素を還元させ、水にしてしまい、水素爆発を防ぐというアメリカ製の「安全装置」が設置されていますが、福島第一原子力発電所には、そのような安全装置が「バックフィット(設備のアップデート)」されていませんでした、と。
 
事故当時の政権は民主党政権でした。「ベント(水素の排出)作業が遅れたのは菅直人首相の思いつき視察のせいだった」と批判されましたが、安倍首相流に表現すると「それには当たらない」のです。
 
朝日新聞「論座」元首相は映画『Fukushima 50』をどう見たかというタイトルの菅直人元首相へのインタビュー記事のサブタイトルは「事故のリアリティはよく出ている。ただし描かれていないことも多い」です。現場と経営陣との関係は書かれていますが、現場と労働組合の関係はどうであったのか、事故の真相に迫っていきたいと考えます。
 
最後に一言。裁判でも津波による事故は予見(以後予測)できたのかが争点・論点にすり替わっていますが、事故の真因は事故防止の思想と事故防止の体制(システム)にあるということを強調しておきます。
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要点
・労働組合による原発の安全管理に関する意見が国会へも届いていた。
・中曾根首相の国鉄民営化を契機に労働組合という組織は機能しなくなった。
・事故の真因は事故防止の思想と事故防止の体制(システム)にある。
 
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■福島第一原子力発電所事故の真相に迫る 1ー1
 
昨年9月19日に東京電力原発事故の刑事事件としての判決が下され、旧経営陣に無罪が言い渡されました。
判決に対する読売新聞と朝日新聞の社説には大きな違いが見受けられました。
 
読売新聞
「自然現象についてあらゆる可能性を考慮して対策を講じることを義務付けていれば、不可能を強いることになる」との考え方を示した。当時の原発の安全対策に、「ゼロリスク」まで求めなかったのはうなづける。
 
朝日新聞
民事裁判に比べて刑事刑事裁判では厳格な立証が求められるとはいえ、あまりの乖離に驚く。未曾有の災害を引き起こしながら、しかるべき立場にあった者が誰一人として責任を問われない。人々が納得できるだけの説明が尽くされたか、大いに疑問が残る裁判となった。
<終了>
 
読売新聞の「ゼロリスク」まで求めなかったことはうなずける、と書いたのは、同意語である「フェールセーフ」を求めなくても良いと論説すること捉えられ、言葉を換えれば事故は起きても仕方ないと公言するものであり、まさに「愚の骨頂」です。
 
少しだけ考えてみて下さい。人間がつくったものは壊れたり、誤作動したりするものです。その原理・原則が分かっていない人や、安全管理を怠ると死傷事件に至ることを知らない人に論じられたり、関連するメカニズムを学んでいない人たちに法廷で裁かれたりすることがいかに不合理であるかを。
 
ディズニー・テーマパークではpreventive maintenance system(事故防止維持システム)という、ジェット機のメンテナンスシステムと同じ安全対策を施しています。予防整備作業とは悪いところを改修するのでなく、悪いところが発生しないように予防を目的とするものです。失敗学の畑村洋太郎東京大学名誉教授のように「やったことがない人」たちに原発事故の真因を求めるのは「瓜のつるに茄子を求める」ようなものであり、時間の浪費以外の何ものでもありません。
 
筆者は複数の原子力発電所で安全管理の講演を行ってきました。福島第一原子力発電所の水素爆発事故、その真因を知るためには、第一に「現場の所長が経営陣に含まれるかどうか」をWhyの出発点にしなくてはなりません。東日本大震災から10年となる2021年の3・11までに、世界中の人々が「納得」できる答を発表したいと考えます。
 
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要点
・昨年9月19日に東京電力原発事故の刑事事件としての判決が下され、旧経営陣に無罪が言い渡された。
・事故の真因を知るためには「現場の所長が経営陣に含まれるかどうか」を出発点にしなくてはならない。
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■福島第一原子力発電所事故の真相に迫る 1ー2

真因は日航ジャンボジェット123便墜落事故から類推できます。あの事故の調査結果によると、墜落原因は、伊丹空港で尻もち事故を起こし、羽田空港でボーイング社の専門修理チームが、圧力隔壁付近の部品交換を行った際、ビス止めが甘く、数年後にその部分が破壊され墜落に至ったというものです。
 
したがって、製造責任、メンテナンス責任のあるアメリカ側に決定的な瑕疵があったのですが、アメリカ側は「寝てしまい」「逃げ切り」に成功しました。
翻って、福島第一原子力発電所の事故を「相対」してとらえた場合、はっきりと同様な原因が浮かび上がってきます。
 
1971年に稼働した福島第一原子力発電所の原子炉は、GEのマーク1型です。1984年に完成したフィリピンのバターン原発は、メルトダウンによる水素爆発を想定し、原子炉建屋か原子炉格納器内の水素を還元させ、水にしてしまい、水素爆発を防ぐというアメリカ製の「安全装置」が設置されていますが、福島第一原子力発電所には、そのような安全装置が「バックフィット(設備のアップデート)」されていませんでした。
 
バックフィットの大切さは、1981年5月の第094回国会 エネルギー対策特別委員会で専門家から指摘されています.
 
(長いです。難解です。しかしながら専門家からの指摘は最もなものばかりであり、この議事録を頭に入れない事故調査はありえません。原発問題の入り口であり、今後への指針もこの中に詰まっています。)
 
アメリカは、1979年のスリーマイル島原発の事故後の「世論」に屈して、原発の新規建設を凍結してしまいました。つまり、技術革新を放棄したのです。航空機に見るように、技術革新なくしての安全管理などありえません。核燃料デブリ取り出し作業は事故9年後の今でも進んでいませんが、AI技術などを駆使し、日本においては技術革新を目指し続けて頂きたいと考えます。
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要点
・事故の真因を知るためには、1981年の5月の第094回国会 エネルギー対策特別委員会議事録を読む必要がある。
・福島第一原子力発電所には、安全装置が「バックフィット(設備のアップデート)」されていなかった。
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0622
■福島第一原子力発電所事故の真相に迫る 1ー3

JR福知山線脱線事故後の2005年5月8日に作成したファイルから。
 
標題:安全国家をつくる「日本安全再生法(時限立法)」の制定に関して
 
人類が引き起こした地球史上最悪の事故、チェルノブイリ原子力発電所爆発事故のあの恐怖が今日本に・・・
 
日本人の誰もが憂えていることの一つが「日本の安全神話はどこへいってしまったのか」ではないのでしょうか。そして「どうしたら日本の安全がよみがえるのか」を今、誰もが真剣に考えているのではないでしょうか。
 
日本では近代工業社会の衰えとともに、日本の全社会的組織やシステムが劣化してきています。今般のJRの脱線事故や大企業や公的機関の不祥事・・そして治安の悪化、これ以上日本社会が悪くならないという保証は何一つありません。「もはや手遅れである」と言う評論家も多く存在するようですが、筆者の意見は違います。ジュリアーニ市長が自らリーダーシップをとり、見事に再生したニューヨーク市のように、有能な日本人が底力を発揮さえすれば、日本社会に必ず安全は甦るものと筆者は信じています。
<中略>
チェルノブイリの事故発生の要因は、今の日本が抱えている問題と類似しています。
 
チェルノブイリの事故の要因は、個人のミスやヒューマンエラーではなく、当時のソビエトに見られた硬直化した体制そのものに起因したものでした。それは、個人は上層部から与えられた命令を忠実に従っていればいいという組織風土の中、目標を達成するためには手段をも選ばないという考え方に基づき、構成員が確信犯的に規則を無視しつづけたことの結果です。事故の真因は、中国の愛国無罪ではありませんが、目的のためなら規則違反もやむを得ないという誤った考え方がもたらしたものであることは明白です。日本においても、硬直した官僚体制の弊害から多くの不祥事が発生しています。
 
・JRの脱線事故に象徴されるように、多くの事故不祥事が組織の体質的問題から発生しています。
・多くの日本人は、会社のため組織のため、そして自己保身のためなら良心に反する行動も辞さないと考えています。
<中略>
官僚は「安定輸送の確保」「利用者保護の観点」の両方から行政の役割を果たしていく事が重要であると考えているようです。つまり、安全も大事だが利便性も大事であり、行政は公共事業同様に鉄道行政に関わっていくと宣言しているようなものです。この考え方は今般の事故の遠因になっていないでしょうか。
 
運輸技術審議会答申「今後の鉄道技術行政のあり方について」(2008年11月13日)
https://www.rail-e.or.jp/library_archive/19981113
(今後のあり方)
安全は、鉄道事業の基本である。このため、新たな制度は、常にそれまでの安全性を維持し、向上させるものでなければならない。
また、国の関与により確保すべき安全性の水準は、以下の事項を前提として考えるべ
 きである。
 
(ア)すべての人や物に及ぼし得る危険を、技術的実現性や経済性を踏まえ、可能な限り小さくすることを目標とする。また、実際の国の関与は、危険の程度や社会的影響度を勘案して、その程度や優先順位を決定する。
(イ)少なくとも一定水準の安全性を確保することは、鉄道事業者の責任である。また、さらに高いレベルの安全性の確保は、鉄道事業者が、そのための投資の費用と効果について利用者の意見を踏まえつつ、適切な判断を行う。
(ウ)利用者等も、無謀な行動を慎む等安全の確保に相応の責任を果たす必要がある。また、鉄道事業者が安全を確保すべき対象は、利用者等の通常予見される行動形態を前提とする。
<引用終了>
 
つまり、国土交通省は、安全性と経済性を同列で考えているのです。地方の弱小鉄道会社への影響も考えての報告書ではあるでしょうが、旧来型の護送船団方式に通じるものがあるように思えてなりません。
<終了>
 
JR福知山線脱線事故を起こしたJR西日本は「経済性」を踏まえた結果ATSを事故現場には設置していませんでした。同様に福島第一原子力発電所でも「経済性」からバックフィット(最新設備の設置など)がルール化されておらず、ベント(排出)設備も最新なものではなかったことから、結果的にあの悲惨な大事故につながってしまいました。
 
2011年の福島第一原子力発電所の水素爆発事故は、筆者が予見していたチェルノブイリ原発事故並みの事故でした。予見するという思想があれば事故は予見できたのです。「予見できなかった」のではなく、「予見しなかった」ことこそが問題であるということを認識しなくてはなりません。これからも専門家としての知見から原発問題を書いていきますが、筆者の論理の原点はここにあるということを申し上げておきたいと思います。
 
2018年6月に東海道新幹線内で起きた殺人事件後にも警備員の配置が求められましたが、「通常予見される行動形態」ではないため、JR東海や国土交通省内では検討されもされなかったことは容易に推察されます。
 
審議会のメンバーに安全管理の専門家が含まれていたのか、メンバーの思考は何に基づくものなのか。近年、新型コロナウイルス感染症対策専門家会のメンバーの思考回路に問題がなかったのか、検証されることを期待します。
 
事故は経営陣の思考から生まれます。次の投稿ではなぜこのような思考になるのか、メディアの対応などに焦点を当てて記します。バックフィットに関しても以降の記事で説明したいと思います。
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要点
・事故の真因を知るためには、運輸技術審議会答申「今後の鉄道技術行政のあり方について」の要点を知ること。
・「予見できなかった」のではなく、「予見しなかった」ことこそが問題である。
・安全管理の専門家が含まれていたのか、メンバーの思考回路に問題がなかったのか。
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■福島第一原子力発電所事故の真相に迫る 2-1

これまで1-1から1-5では1981年の参議院エネルギー委員会と労働組合と事故の関係を中心に記述してきましたが、これ以降は専門官が今回の事故では全く役に立たなかったという問題、メディアの問題も大きいということについて記述していきます。最終結論は「事故は予見できた」と断言できるということ及び、新型コロナウイルスの日本での感染拡大も予見できたということであり、多くの犠牲者に報いるという面でも、高裁での訴訟には勝たなければならないということです。
 
筆者は、事故を起こした福島第一原子力発電所から約10キロ離れた福島第二原子力発電所で、11月に四国電力伊方原子力発電所において2007年5月に「ディズニーランドに学ぶ安全管理」という演題で講演を行い、発電所所長初め多くの運営責任者(ここからは運営幹部と記します)に聞いてもらうと共に、現場で働く運営幹部から「生の声」をも聞くことができました。
 
毎年5月は「原子力エネルギー安全月間」に指定されているそうですが、「安全の日(7月1日は国民安全の日)」や「安全週間」などと同様に、官僚が官僚のために定められているものであり無意味です。JALやANAのパイロットやキャビンアテンダントが安全マーク入りの腕章をつけていたらどう思われるでしょうか。「普段は安全第一ではないのか」と思われるに違いありません。一事が万事、官僚とは省益第一であることを思い知らされます。
 
それでも、安全管理のために外部の専門家の話を聞くことは重要であると勘案されると共に、内部に第三者の目で見ることができる内部の専門家をつくることが肝要である、そう考え、一貫してそのように主張してきました。
 
原子力発電所での講演前は、原子力発電所の所長とは私服勤務で地元の住民とのコミュニケーションを取ったり、入り口や周辺の警備状況、安全管理や労務管理全体を確認したりしているものと思っていましたが現実は違いました。よく見かける電気配線工事の制服と同じです。この意味は、四国電力伊方原子力発電所での「体験」で明らかになりました。会社の「体質」が表顕されているのです。
 
原発の重大事故に関しても、運営幹部は「重大事故など起こしたくても起こせない」と断言されていました。当日筆者は、シミュレーション施設で原発運転を非常停止させる体験をしました。筆者の前に同体験をしたのは、鳩山邦夫元総務大臣だそうです。
この体験は、筆者にとっては面白くもなく、何の勉強にもならないものでした。その理由は、東京ディズニーランドのアトラクションキャストが「エマージェンシー・ストップ(非常停止)」のマッシュルーム型の赤いボタンを押す行為と同じだったからです。
 
そんなこともあり、そのときは「原子力発電所の安全性は保たれている」と判断しました。今から考えると、当時の運営幹部は巨大津波の襲来など頭になかったものと勘案されます。東京電力の経営幹部やとりまきの役人が、原子力発電所で働く人たちを「安全神話」という作り話で洗脳していたのでしょう。もちろん、筆者も洗脳されていた人間の一人ですが。
 
11月に四国電力伊方原子力発電所での講演のため、ミカン畑が実に美しい愛媛県八幡浜市を訪れました。伊方原子力発電所はさらに西方の佐田岬半島に位置するため、講演前日に八幡浜市に宿をとりました。近くの料亭で伊方原子力発電所の品質保証責任者と会食しました。二人で三時間ほど話したと記憶していますが、そのほとんどが「技術論」でした。誰でも同じでしょう。車を自分が思うように操縦する話や、ゲーム機を操り、思うように物語を進めていく話などは他人に聞いてもらいたいに違いありません。「そうだ、そうだ」と確認し合うことで、お互いの満足感も高まるのものです。
 
その席では、「ジェットコースターを安全に動かす話」や「原発プラントを安全に維持管理する話」などに花が咲きました。
 
以下のような質問を試みました。
 
5月に「講演を聞いて下さった運営幹部が所長となった柏崎刈羽原子力発電所が、7月の中越沖地震で被災しました。あのとき、さもや外部変電施設火災の消火を放棄していたかのように報道されていました。メディアは上空から黒煙を挙げる火災現場の映像を流しつづけました。筆者なら付属施設の消火など放っておき、本体施設点検に全力を注がせますが」
 
その答えは「そう思い、柏崎刈羽原子力発電所の所長に確認したところ、冷やす、閉じ込めるの原則に則り、全員を本体施設での作業に集中させたそうです」というでものした。
 
3・11により、配管が張り巡らされた原発内部の様子をうかがい知ることができました。あの複雑な建屋内の施設に損傷がないかを丁寧に点検し、指令センターに報告する作業が優先されるのは、発電の早期再開の必要性上のシーケンス(順序)として当たり前のことです。
 
ディズニーランドでも同じです。地震によりアトラクションは緊急停止しますが、再開させるにはマニュアルに基づいた施設の点検が必要不可欠です。
 
中越沖地震後の原子力発電所において外の変電施設の消火活動などまったく「後回し」で良いのです。メディア対応については2-2で書かせて頂く予定です。
 
次の日、時間があったので近くの港の魚市場を見学にでかけました。ところが、です。行き帰り二回も道に迷い、二回も町ゆく人に道をたずねましたが、なんとも親切な応対に感銘を受けました。
 
そのことを、迎えに来て頂いた四国電力の社員に話したところ、「私ども四国電力の社員は、必ず年に一度、地元の一軒一軒の家を回り、コミュニケーションを取っています。そのことが影響しているとすればうれしい限りです。」と話してくださいました。
 
伊方原子力発電所の社員の気風は違いました。東京電力同様に制服を着用していましたが、東京電力以上のモチベーションの高さを感じました。前日の運営幹部の「原発運転はやりがいがある」という言葉が思い起こされました。
 
頂いた所長の名刺には、四国電力株式会社 取締役 原子力本部 伊方発電所長 氏名が明記されています。福島第二原子力発電所の所長は、東京電力株式会社 福島第二原子力発電所長 氏名 となっています。
 
四国電力の所長は「取締役」、つまり、会社の経営陣ですが、東京電力の所長は社員ということになります。会社の思想や組織体系が両社では全く違うのです。つまり、四国電力ではない東京電力であるから取り返しのつかない事故が起きた、そう断言しても良いと思います。裁判での新たな「争点」になる可能性も秘めています。
 
昨年9月の福島地裁の刑事事件の判決、旧経営陣に無罪が言い渡されましたが、東京電力の旧経営陣には現場で働く所長は経営陣ではなく、経営陣は本社の背広組であった、この事実は「予見しなかった、予見させなかった」ことを意味するものと捉えることもでき、必然的に東京高裁での判決にも影響するのは必至です。
 
ある運営幹部が重要なことを話してくださいました。
「全国の原子力発電所には、国の役人が常駐しています。その人たちは、私たちをまるで監視しているかのように、箸の上げ下ろしまで見ているのです。若い社員は『何か、私たちは悪いことをしているみたいで嫌になる』と言っています。モチベーションの低下が本当に心配です。」
 
筆者はこのこと、事故当時問題になった「現場から逃げ去った原子力安全保安院の役人たち」が、現場である原子力発電所で働く人々のやる気を失わせていた」という事実を世界に向けて発信していきたいと思います。
 
現場に常駐していた原子力安全・保安院(現原子力規制委員会)について説明します。
 
経済産業省発行の「原発2007」より
原子力防災対策については、従来から災害対策基本法に基づいて、国、地方公共団体において防災計画を定めるなどの措置が講じられてきました。1997年6月には、災害対策基本法の枠組みの中で、関係者の役割分担の明確化などを内容とする防災基本計画原子力災害対策編が策定されました。
<中略>
1999年9月のJCOウラン加工施設における事故への対応において、初動段階で事故の状況の迅速かつ正確な把握の遅れなどの問題が明らかとなりました。このため1999年12月に①迅速な初期動作と、国、都道府県及び市町村の連携強化、②原子力災害の特殊性に応じた国の緊急時対応体制の強化、③原子力防災における事業者の役割の明確化などを規定した「原子力災害対策特別措置法(原災法)」が成立し、原子力防災対策の根本的な強化を図ることになりました。
<中略>
現地に駐在している原子力防災専門官が原子力近傍に設置されている緊急事態応急対策拠点施設(オフサイトセンター)において警戒態勢の立ち上げを行うなど、原子力災害対策のための業務を実施します。
<中略>
 原災法においては、平時より原子力防災専門官が現地に駐在し、事業者や地方公共団体と連携した活動を行うとともに、原子力緊急事態が発生した際には、あらかじめ指定されたオフサイトセンターに原子力災害合同対策協議会を組織することとされています。
<引用終了>
 
彼らは、「バケツで臨界」という世界最低の恥ずかしい東海村JOC原子力事故を起こした施設の管理もできていなかったのです。張本人なのです。しかしながら、その後彼らは、マスコミや世論の間違った「扇動」で、さらに自分たちの「支配力」を強化することに成功したのです。
 
さて、実に不適切な記録をお見せしましょう。それは、2007年の中越沖地震後にあの「原子力安全・保安院」が出した中間報告書です。(外部の調査報告とは異なり現在は公開されていません)
 
<引用開始>
④電源の確保
冷やす機能を確保する上で、燃料から発生する熱を除去する系統を作動させるために必要な電源確保が重要である。このため、停電や送電系統の故障により外部電源が確保できなくなった場合を想定して、非常用ディーゼル発電機(GD)が各号機に複数備えられている。
今回は、大規模な地震であったにもかかわらず、地震直後に4系列ある外部電源(送電系統)のうち3系列(後に一時的に2系列)が確保されていたため、非常用GDを用いるには至らなかった。
(後に一時的に2系列)が確保されていたため、非常用GDを用いるには至らなかった。
しかしながら、非常用GDの健全性は速やかに確認しておくことが必要であるため、地震後のパトロール及びその後行われた点検において、非常用DGに損傷がないことを確認するとともに、月1回の定例試験(7月25日に地震後初めて実施)により、当該DGの作動確認試験を行い健全性が確認された。
したがって、今回の地震により仮に外部電源が喪失していたとしても、非常用DGによる電源が確保されていたものと判断される。
以上のことから、「電源の確保」はできていたと評価する。
<引用終了>
 
GD電源機が津波で使えなくなり、全電源喪失したから福島第一原子力発電所の水素爆発事故が起きたのです。原子力安全・保安院の無能さも裁判の争点になって然るべきであると考えざるを得ません。
 
最終結論2-5で書く予定ですが、福島第一原子力発電所にかかわらず、原子力発電所における重大事故防止の鉄則は「冷やして停める、閉じ込める」ことです。この鉄則を非常時に遵守できれば、地震発生時における原子力発電所の安全も理論上確保できるのです。
 
さて、ここまで二つの原子力発電所で体験したこと、「本当にあった」話を中心に記してきました。筆者が一番言いたいことは、福島第二原子力発電所の当時の運営幹部を唸らせた筆者のこの一言です。
 
「安全管理上、最も大切なことは、護送船団に入らないこと、国や関係組織からの受け入れることのできないつまらない通達は無視すること、だからディズニーランドは成功し続けているのです。」
 
産業界の発展には、役人を寄生させない健全な組織でなくては事故や不祥事は防ぐことはできないという「方式」を確立させなければならない、筆者はそう確信します。
 
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本記事ではマスメディアの功罪の「罪」について書きます。メディア・リテラシーの重要性を理解して頂きたいのと、松本サリン事件時の報道被害者の警句を噛みしめてみる必要があると申し上げておきます。
 
「情報もまた一つの商品なのであり、大衆は情報消費者として、報道を常に厳しく吟味する姿勢をもたなけれ
ばならない」
 
2007年4月29日の日曜日に、テレビ朝日のサンデープロジェクトという番組で東京電力の不祥事が取り上げられました。東京電力の桝元取締役が出演された報道番組です。
 
この番組で、当時のキャスターの田原総一郎氏はこのように切り込みました。
 
「他の発電所と比べ、東京電力は原子力発電所の事故が多い、98件もある」
 
フリップには「不正、不備」と明記されているのに、キャスターは事故と表現するのです。
 
筆者は原子力発電所での講演時、原子力発電所運営幹部に対し、「どこの発電所のホームページを見ても事故と故障の区別がされていない。『作業員が頭を配管にぶつけた』など、明らかに労働災害であるものまでもが公開されている。これが原子力発電所内からの情報を分かりにくくしているのでは」と尋ねました。
 
答えは「何をいってもマスコミは悪く書く。(自己防衛上)もうあきらめている。」
 
さらに、「原発反対論者が『角砂糖5個分のプルトニウムで日本を全滅させられる』と宣伝しているが、どのようにして全日本人に配布(注射?)するのか、あまりにも無知滑稽ないいがかりである」と発言したところ、ある運営幹部は「プルトニウムの毒性はフグの毒性と同じです。その手の報道には本当に困っています」と教えてくださいました。
 
ウィキペディアより
今回の地震(中越沖地震)では放射性物質の漏れは健康に問題があるとされる量を遙かに下回っているとされるが、たび重なる報道により、観光・漁業・農業などで「買い控え」がおきると言った二次的な風評被害が発生している。さらには2007年7月26日から8月まで秋田、静岡、千葉の3試合を日本で行う予定だった、セリエAのカターニアは、放射性物質の流出を理由に日本遠征を中止した。泉田裕彦新潟県知事は「日本全土が放射能に包まれているような報道が海外でなされ、サッカークラブの来日中止どころじゃない甚大な風評被害が生じている」と語っている。地震後の優先順位は電源確保が最優先され変電機の火災(煙)に対する消火は地震発生時全体に比べ危険度は微々たるものであったが、媒体などで煙をあげる変電機の映像を繰り返し、正確さよりも事故の危険性を煽ることを中心とした報道がなされた。
<引用終了>
 
NHKなどの報道により、風評被害が広がり柏崎市や新潟県の損害は2000億円とも3000億円とも言われたのであり、柏崎市はNHKなどのメディアに対し、風評被害拡大にともなう損害賠償訴訟を行うべきだったのです。
 
6月20日記事から報道被害を防ぐポイントを再掲しておきます。
 
■こうすればメディアからのバッシングを防止できる

<開始>
たら、れば、の話ですが原子力発電所がこのように、外部への高レベルの放射能漏れという<取り返しがつかない事態>には100%発展しないという、正確な情報を視聴者や国民に提供していたら、新潟の海は危ないなどという風評被害に発展することはなかったでしょう。
 
成熟した今日の消費者は、トラブルを発生させた企業を「悪者」と疑ってかかります。マスコミは消費者以上に企業を「悪者」に仕立てます。
反対に、消費者やマスコミに「想定し、警戒していた範囲内のトラブルであり、トラブルが拡大しないために必要な安全装置や防護装置も正常に作動しています。」というような的確な情報公開がなされたならば、消費者やマスコミはその企業の良き理解者になってくれることは間違いないことでしょう。
 
もう一度同じ内容を記します。
 
原子力発電所の施設外で火災が発生した際、広報担当が速やかに会見を開き、マスコミや行政に対し上記の危険度レベル表を配布し、その表に基づき外部への高レベルの放射能漏れという、<取り返しがつかない事態>に発展することが100%ないことを的確に説明していたらならば、風評被害に発展することなどあり得なかったのです。
 
人には感情があります。原子力発電所に限らず人は不安を取り除いてくれる企業の味方になるものです。事故や不祥事が発生しても「私たちはトラブルの発生を事前に想定し、防止対策を講じるとともに、トラブルの発生を日々警戒してまいりました」と論理的に、そして自信を持って説明すれば、企業の存続を危うくする風評被害や、社長の引責辞任などという最悪の事態には決して結びつかないのです。
<終了>
 
驚かされるのは東日本大震災後の略奪行為です。筆者は数年前に地震直後に被災地で看護に当たったある看護部長から略奪された現場を目の当たりにしたと聞かされました。「日本では略奪行為は行われなかった」という外国メディアの報道を鵜呑みにしてしまった自分を痛く恥じます。
 
震災から4カ月以上経った8月2日の日経新聞記事より。
 
避難地域の空き巣、大幅増。コンビニATM被害も45件発生・約7億円に [2011.08.02]
 
警察庁は先程、東日本大震災の被災地(岩手、宮城、福島)における、震災後の犯罪情勢を発表した。
https://messe.nikkei.co.jp/ss/column/security-paper/89509.html
 
3・11直後に正確な報道がなされたのか、報道自由度66位(2020年4月)と低い日本、震災後10年となる来年の3月11日までに検証結果を発表して頂きたいと考えます。
 
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■福島第一原子力発電所事故の真相に迫る 2-3
 
2008年のアメリカ発リーマンショックによる大不況のさなか、12月30日の朝日新聞はディズニーランドに関してこのように書いています。
 
「安心、安全、質の良さ。ディズニーというブランドは、お上が失ってしまったものを一手に引き受けている感がある。今や公的機関の色さえ帯び、その信頼度は群を抜く。」
 
ディズニーランドで安全管理の責任者を務めてきた筆者から見た場合、日本の「公的機関」の安全管理やリスク管理に関する職能レベルは低い、そのことが福島第一原子力発電所事故を初めとする大小事故、新型コロナウイルス感染拡大予防対策構築の遅れ、豪雨災害の人災化に結びついていると考えざるを得ないのです。
 
拙書などの自慢になってしまうので申し訳ないのですが、事故防止のためにはディズニー・テーマパークの安全管理上必要な〝たら・れば・IF〟に触れないわけにはいかないので、以降の手前味噌的な記述をお許しください。
 
法曹界関係者宛て文書より
 
福島の原発事故は防げたという、たら、れば 「もし」の話である。
筆者は安全管理の専門家として、2007年5月に東京電力福島第二原子力発電所、同年11月に四国電力伊方原子力発電所において安全管理に関する講演を行った。その際、1981年3月の敦賀原子力発電所事故を受け同年5月29日に開催された参議院エネルギー委員会議事録に記載されている大事故につながる問題点を、原子力発電所所長をはじめとする運営幹部に指摘していた。
 
たら、ればではあるが、筆者が卓越した安全性を誇る東京ディズニーランド出身の安全管理の専門家、有識者として日本社会から認識され、自由闊達に活動していれば、福島第一原子力発電所における水素爆発事故は防げた可能性は高いと断言できる。なぜならば、報道によると15メートル級の巨大津波は予測されていたからである。
 
繰り返すがたら、ればであるが著者が有識者として福島の原子力発電所の事故防止に関わっていれば、ディズニー方式により最悪の事態、それは原子炉の冷却不能に伴う放射性物質の放出により、多くの避難民と風評被害を生みだした原子炉建屋の水素爆発事故であるが、その最悪の事態を著者は容易に予測し、事故防止対策を必ず提示してていたからである。
 
予測が可能であったと言えるのは1981年に参議院エネルギー委員会で実際に議論されていたバックフィット問題と卓越したディズニー予防整備システムを熟知していたことと、原子力発電所の幹部から現場運営者の「本音」を聞き出していたからである。筆者が登用されていれば、日本社会を現在も覆っている閉塞感と日本人の自信喪失感はなかったのである。
 
他にもある。シンドラー社エレベータ死亡事故、JR福知山線脱線事故、古くは明石市の花火大会歩道橋事故も専門家の筆者が被害者側の弁護士の支援をしていれば、下された判決は全く変わっていた。このように考えれば即座に理解できる。例えばシンドラー社エレベータ死亡事故同様な事故がディズニーランドで起きていたら・・・筆者なら発生後15分で事故原因を特定できたのである。
<終了>
 
『すべてのゲストがVIP』 東京ディズニーランドで教えるホスピタリティ 2004年
 
■たられば・たられば・IF・IF・IF
 パークには一日に一〇万人ものゲストが来園します。当然、パークの中では様々な出来事が発生します。遺失物、迷子、気分不快やゲスト同士のもめごとなどゲストに起因すること。地震、強風、雷、降雪などの自然現象。アトラクションの不具合や故障などの施設的トラブル。時には犯罪の匂いのするものまで、多種多様の出来事が発生します。
 
 パークで働く何千人ものキャストを直接指揮するのが、ワーキングリードとスーパーバイザーです。特にワーキングリードはアトラクションの責任者です。担当するアトラクションにおいては、どのような状況が発生しても、冷静沈着にそして敏速に対応できなくてはいけないのです。
 
 ディズニーランドの成功理由に、マニュアルの存在が欠かせないと述べました。マニュアルは成功経験や失敗経験の蓄積記録であるとも述べました。ワーキングリードが多種多様な問題に対応できるのは、マニュアルを有効活用しているからに他なりません。
 もちろん、イレギュラー対応もマニュアルで行います。マニュアル主義というとイレギュラーに対応できないものと思われがちですが、実は全く逆なのです。マニュアルには過去の経験に基づいた作業手順が掲載されています。非常事態を想定した対応マニュアルも用意されています。
 
 そして、ワーキングリードやスーパーバイザーは、以下のように考えることを叩き込まれています。それは「もし、地震がきたら」「今、アトラクションが停止したら」「これ以上気温が上がれば、下がれば」「もし、火災が発生したら」「もし、……」……。
 
 常に状況は変化する、あるいは予期せぬことが発生する。このことを想定しながら勤務しているのです。もちろんこのようなイレギュラー発生時や、非常事態発生時に対応するための徹底したトレーニングや訓練も欠かせません。
 
 仮定や仮説に偏見をもたず、想定できるものすべてを想定し、発生した場合の対応方法を事前に用意しておく。緊急時に、ワーキングリードだけでなくキャスト一人ひとりが、的確な行動を取れるよう訓練を繰り返す。それをスーパーバイザーや関係部署の担当者が評価する。この一連の流れが出来ているのがディズニーランドであり、他の多くの施設との決定的な違いであることは間違いありません。「仮定の質問には答えられない」はディズニーランドでは一〇〇%通用しない怠慢行為そのものなのです。
 
■想定をしておくことが大切
 オウム教団一行やこの日の実際の行動に関し、詳しい内容を明らかにする必要はないと思います。知ってほしいのは次のようなことです。
 ディズニーのテ-マパークでは、あらゆる著名人がパークに来園されることを想定しています。皇族、映画スター、政治家、スポーツ選手、芸能人などです。
 有名であるがために一般のゲストと一緒に楽しめない場合も多いのです。大切なプライベートの時間でさえも、ひとたびゲストに発見されると取り囲まれます。有名人であっても他のゲストと同じ料金を払っているゲストです。お子様のバースデイに来園する芸能人もたくさんいます。
 
 ここでも「たら・れば・IF」です。もし、外国の要人が来ることになったらどうするかなど、事前に想定しておくことが重要です。
 しかし、オウム関係者一行が来園することまでは、当時東京ディズニーランドでも想定していませんでした。私には生涯忘れられない「体験」となりました。
 
■だから安全装置を働かせる
 キャストはこの手順で行います。なぜならばこういう理由があるからです。キャストはミスや失敗をするものです。だからこのような安全装置をあらかじめ用意しておくのです。もしかしたら安全装置が働かない状況が発生することも考えられます。だからキャストやスーパーバイザー全員の目を常に光らせます。
「なぜならば」と「だから」が大事であることが理解していただけたでしょうか。
 
 最悪の結果を招かないよう、何重にも安全装置が働く仕組みを作っているのです。最大規模の問題に発展する可能性がある、最小規模の問題点を発見できることこそが大切であるということを教えているのです。
 ボタン一つ押せば何でも「楽ができる」。この時代にあっても、あえて楽をさせないのがディズニーです。「楽」というベクトルを働かせず、人間の最大限の英知を結集させる方法で、ムダやムリという不効率を徹底的に取り除くのです。それがディズニー方式です。すごいと思いませんか。
 
■レベル5の警戒態勢
 映画の話ではありません。ディズニーランドでの非常事態対応マニュアルの内容に関することです。皆さんは、ニュースや報道番組などで「アメリカの警戒態勢がレベル2からレベル3に引き上げられた」というような内容を聞いたことがあるでしょう。何となく状況をイメージできるかもしれません。ディズニーランドのスーパーバイザーを経験すると、このレベル2、3発令時における実際の行動までイメージできるようになります。理由は簡単です。ディズニーランドでも同様な対応を行うからです。
 
 地震・火災・雷・停電・光化学スモッグなど、想定されるすべての非常事態に的確に対応できるマニュアルがあります。そこには「レベル1」発令時から「レベル5」発令時まで、パーク内外すべての施設が行う対応方法の詳細が記載されています。地震によって舞浜地区全体の交通手段が完全に断たれ、「孤島」状態に陥った場合、何万人ものゲストをどのようにコントロールするか。水は、食料は…そこまで想定しているのです。
 このマニュアルに基づき、各施設ではポジションごとの対応方法が設定されています。例えば火災の場合、レジのキャストが初期消火係、入口のキャストが避難誘導係、ストックのキャストが通報係というように、役割分担が明確に決まっています。
 
 その上で各施設ごとに第三者が立ち会う防災訓練が実施されます。マニュアルがあってもできなければ何もなりません。通常のトレーニングと同様、できるようになるまで訓練するのです。さらに、パークとして非常事態に対応するためには、しっかりとした指揮命令系統の構築が重要であることは言うまでもありません。
 このように、ディズニーランドにはほぼ完全な非常事態対応体制が整っています。これを作った人は横手さんというマネージャーです。自衛隊のマニュアル作成にも関わってきた方と聞いています。それだけに「国」にも通用する高レベルな内容になっているのです。アメリカと日本の英知が融合された最高のものと言っていいでしょう。
 
 最後に、「ほぼ完全」と述べたのは「敵は進化していくもの」とディズニーランドでは捉えているからです。
<終了>
 
経営上の観点に限らず生活面でも「たら・れば・IF」を意識することは大切です。2-4ではより深くこの「たら・れば・IF」について記したいと考えます。
 
※世界一の計算能力を誇るスーパーコンピュータ「富岳」と気象予想は理化学研究所のHPをご覧ください。
https://www.r-ccs.riken.jp/jp/fugaku/pi/climate
 
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■福島第一原子力発電所事故の真相に迫る 2-4

「悪の葉っぱに斧を向ける人は千人いても、根っこに斧を向ける人はひとりしかいない」
H・D・ソロー
 
法律用語に「未必の故意」があります。その意味するところは、加害者の行為による結果が「発生してもかまわない、起きても仕方がないと認識してその行為に及ぶ場合の心理状態」のことであり、注意を怠った過失とは異なります。
 
福島第一原子力発電所事故に故意があったとは考えませんが、冒頭の言葉のように事故の根っこに斧を向ける人はほとんどいません。本記事では東日本大震災と液状化現象から原発事故とは裁判とは別の裁判について記します。もちろん「予測できたか」がテーマになっています。
 
日本経済新聞記事より引用
「住宅の販売時(1981年当時)に液状化を予測するのは困難だった。浦安の震災液状化、住民側の敗訴確定
2016/6/16 23:30
東日本大震災による液状化で被害を受けた千葉県浦安市の分譲住宅地「パークシティ・タウンハウス3」の住民が、分譲販売した三井不動産などに損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)は16日までに、住民の上告を退ける決定をした。15日付。住民敗訴の二審判決が確定した。
 
浦安市の液状化をめぐる集団訴訟は複数起こされ、住民側敗訴の判決が続いており、最高裁での確定は初めて。
<引用終了>
 
東京ディズニーランドが開園したのは1983年4月です。1976年のディズニー社との誘致契約が成立して以来開園まで、極めて長期に渡る安全運営のための準備がなされてきました。
 
ディズニー・テーマパークの魅力-「魔法の王国」設立・運営の30年 上澤 昇元オリエンタルランド副社長著より
埋立て地では支持杭に支えられた建築物に周辺地盤の沈下ギャップが発生し易く、軟弱地盤の上に定着している建物や配管類などに不当沈下による深刻な影響が出やすい。また、新潟地震にみられたように地震発生時の液状化現象が起こり得る。
<中略>
(三井不動産建設技術担当石田繁之助常務が)埋め立て軟弱基盤の大規模開発に不可欠な地盤改良計画に対して、その分野における国際的な権威である東京工業大学工学部建設学科の吉見吉昭教授を本プロジェクトに紹介してくれた。吉見教授はさらに新進気鋭の土質コンサルタント橋場友則さんを推薦し、同教授の現地に関する傾向分析とその対策に関する指導的役割のもとに、橋場さんが地盤改良対策法とその地盤に対する建築についての提言を続け、地盤改良の成功と工事費の抑制に大きな貢献をされた。
<引用終了>
 
1980年の真冬に液状化実験を行ってデータ収集をされたそうです。二メートルピッチで十万本の杭が撃ち込まれました。しかしながら、同時期に開発された浦安市の三井不動産建造物には液状化対策が施されませんでした。
 
結果は誰もが知るように駐車場を除いたディズニーランドは、あの強烈な揺れにもかかわらず全くの「無傷」でした。
 
裁判というものは、必ずしも正論が判決に反映されるものではりません。浦安市の液状化問題でも「㈱オリエンタルランドは液状化対策を講じたのに、三井不動産は講じていなかった」ことも争点でした。
 
浦安市住民による液状化訴訟の争点 弁護士 小杉公一
https://www.jstage.jst.go.jp/article/uhs/2014/86/2014_32/_pdf/-char/ja
 
福島第一原子力発電所の刑事訴訟でも福島地裁は「何よりも安全性確保を最優先し、事故発生の可能性がゼロないし限りなくゼロに近く」することを「前提としてはいなかった」と判じました。この判決の「根っこ」には旧態依然とした国の「思想」があります。
 
1-3より
運輸技術審議会答申「今後の鉄道技術行政のあり方について」(2008年11月13日)
(ア)すべての人や物に及ぼし得る危険を、技術的実現性や経済性を踏まえ、可能な限り小さくすることを目標とする。
<引用終了>
 
運輸技術審議会答申、つまり国の「思想」は安全と経済性は同列とするものであり、まさに「法に慈悲は許されない」のがあらゆる現行法の「根っこ」なのです。
 
今年の3・11前に朝日新聞「声」の欄ではこのような「テーマ」での投稿を求めました。
 
放射性物質の問題を含め、福島がどういう状態になったら復興したと言えるのか、また、そのために何をすべきでしょうか。
 
〝ボツ〟になりましたが、筆者が事故被害者のみならず、広く日本国民に伝えたいことは以下の通りです。
 
「予見しなかった罪」の施行が不可欠  
 
 風評被害が無くなったと経済的にも県民意識的にも実感する、そのことが復興した状態と言えるではないでしょうか。
 そのために何をすべきか、その答えは爆発事故原因の特定と、全ての外部電源喪失時に、非常用電源が100%の確率で確保できることを全国民に納得してもらうことです。
 事故原因を単純化すると、「原子炉を冷却できなかった」からです。第一原発からの距離が12キロしか離れていない第二原発では冷却できたことにより、爆発事故は起こりませんでした。冷却できた理由は外部電源の一つが利用でき、冷却装置への送水が行われたからです。
 福島地裁での裁判で襲来する津波の高さを経営陣が知っていたにもかかわらず、対策をとらず、運転も停止しなかった責任が問われましたが、最大の問題は、全ての外部電源喪失を予見しなかったという怠慢行為にあります。
 爆発事故の真の原因は、予見しなかったことにあります。来年の3月11日までに「予見しなかった罪」を施行させて初めて、復興が五合目位まできたと誰もが認識するものと考えます。
<終了>
 
福島復興には多額の税金が投入され、事故補償にも各家庭の電気料金に上乗せされた金額が使用されていま昨年9月の福島地裁の刑事事件の判決、旧経営陣に無罪が言い渡されましたが、東京電力の旧経営陣には現場で働く所長は経営陣ではなく、経営陣は本社の背広組であった、この事実は「予見しなかった、予見させなかった」ことを意味するものと捉えることもでき、必然的に東京高裁での判決にも影響するのは必至ですす。
 
福島第一原子力発電所事故という「出来事」は「思想」から生まれる、2-5で論じたいと思います。
 
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0709
■福島第一原子力発電所事故の真相に迫る 2-5

1-1要点
・昨年9月19日に東電原発事故の刑事事件としての判決が下され、旧経営陣に無罪が言い渡された。
・事故の真因を知るためには「現場の所長が経営陣に含まれるかどうか」を出発点にしなくてはならない。
 
1-2要点
・事故の真因を知るためには、1981年5月の第094回国会 エネルギー対策特別委員会議事録を読む必要がある。
・福島第一原子力発電所には、安全装置が「バックフィット(設備のアップデート)」されていなかった。
 
1-3要点
・事故の真因を知るためには、運輸技術審議会答申「今後の鉄道技術行政のあり方について」の要点を知ること。
・「予見できなかった」のではなく、「予見しなかった」ことこそが問題である。
・安全管理の専門家が含まれていたのか、メンバーの思考回路に問題がなかったのか。
 
1-4要点
・労働組合による原発の安全管理に関する意見が国会へも届いていた。
・中曾根首相の国鉄民営化を契機に労働組合という組織は機能しなくなった。
・事故の真因は事故防止の思想と事故防止の体制(システム)にある。
 
2-1 要点
・昨年9月の福島地裁の刑事事件の判決、旧経営陣に無罪が言い渡されましたが、東京電力の旧経営陣には現場で働く所長は経営陣ではなく、経営陣は本社の背広組であった、この事実は「予見しなかった、予見させなかった」ことを意味するものと捉えることもでき、必然的に東京高裁での判決にも影響するのは必至です。
 
2-2 要点
・成熟した今日の消費者は、トラブルを発生させた企業を「悪者」と疑ってかかります。マスコミは消費者以上に企業を「悪者」に仕立てます。
 
2-3 要点
・朝日新聞記事より「安心、安全、質の良さ。ディズニーというブランドは、お上が失ってしまったものを一手に引き受けている感がある。今や公的機関の色さえ帯び、その信頼度は群を抜く。」
 
・たら、ればではあるが、筆者が卓越した安全性を誇る東京ディズニーランド出身の安全管理の専門家、有識者として日本社会から認識され、自由闊達に活動していれば、福島第一原子力発電所における水素爆発事故は防げた可能性は高いと断言できる。なぜならば、報道によると15メートル級の巨大津波は予測されていたからである。
 
2-4 要点
・運輸技術審議会答申、つまり国の「思想」は安全と経済性は同列とするものであり、まさに「法に慈悲は許されない」のがあらゆる現行法の「根っこ」なのです。
 
 
・福島地裁での裁判で襲来する津波の高さを経営陣が知っていたにもかかわらず、対策をとらず、運転も停止しなかった責任が問われましたが、最大の問題は、全ての外部電源喪失を予見しなかったという怠慢行為にあります。
<終了>
 
2-4で出来事は思想から生まれると書きました。2-5では筆者の思想・思考の基になっている書籍なのに記載されてるもの、偉大なる先人の言葉などを記しておきたいと思います
 
『明日を支配するもの』 ピーター・ドラッカー著 ダイヤモンド社
官僚という指導層は、一般に考えられているよりもはるかにしぶとい。不祥事や無能が暴露された後も、長く力を持ち続ける。
 
先進国では、アメリカは別として、秩序の維持には一定の指導層の存在が必要だと考えられている。後を受け継ぐべき指導層が現れなければ、既存のものに頼るしかない。今日の日本は、官僚の後を継ぐものがない。
 
日本はこれまで問題の先延ばし戦略で成功してきた。この40年間に解決不能とされていた社会的問題を、問題の解決ではなく、問題の解消によって解決した。
<引用終了>
 
ディズニー・テーマパークの魅力-「魔法の王国」設立・運営の30年 上澤 昇元オリエンタルランド副社長著
 
「娯楽は楽しいだけでなく、それによって何かを学び取れるものにすべきである」ウォルト・ディズニー
 
公有水面という国民の共通財産を埋め立ててつくった土地を使用する私達には、国民に喜んでもらえる施設を造って、企業の社会的責任を果たしていく責務がある。
 
阿吽の呼吸でやってゆける規模を超えた時、組織を動かす(運営)ノウハウがアメリカにはあった。それは緻密な計算と分析に基づいている。
 
ディズニーという素晴らしいブランドとそれを運営していくオリエンタルランドの運営組織力の良い形での相互作用が生み出した成果物である。
 
東京ディズニーランドがオープンして数年後、ディズニー社のマイケル・アイズナー会長、フランク・ウエルズ社長から「この東京ディズニーランドの運営とサービスこそ、ウォルト・ディズニーが理想に描いていたものだ。今度は私たちディズニー社側が東京ディズニーランドから学びたい」と高い評価を得ることができた。
近年ディズニー・テーマパークがアメリカ大学院のMBAクラスの「顧客満足」経営、顧客サービスのビジネスモデルと評価されているが、ディズニー社のマニュアルを超えたTDL方式がそこに影響していた。私はその評価に満足しながらも、それで終わらないために、マネージメント・スタッフに対し、「東京ディズニーランドはもうマニュアルに基づく理論を現場に応用するだけでなく、これからは現場から自らの質の高い理論をつくり出して欲しい」と激励した。
 
サービスは結局相手に対する「思いやり」である。考えてみれば、これは機械文明の発達と、戦後の物質主義文明に走りすぎて結果、すっかり忘れてしまった日本人の美徳であった。「思いやりの心」をもつ企業は顧客を必ず満足させ、従業員の士気と世間の評判を必ず高めることができる。この精神に支えられた顧客サービスの実際を見て、アメリカのディズニー社のトップが「東京のディズニーランドはロサンゼルスのディズニーランドの水準を超えた」と素直に評価してくれたのだ。東京ディズニーランドのために書き変えた運営マニュアルと顧客サービスの方法は、その後アメリカのディズニー社のテーマパークに逆移出して、むこうのサービスの向上に役立っているのだ。
 
渋沢栄一「夢七訓」
①、夢なき者は理想なし ideal A→B
②、理想なき者は信念なし belief、dream B→C
③、信念なき者は計画なし plan C→D
④、計画なき者は実行なし action D→E
⑤、実行なき者は成果なし results E→F
⑥、成果なき者は幸福なし happiness F→G
⑦、ゆえに幸福を求める者は夢なかるべあらず G→A
 
渋沢栄一の「夢七訓」を日本国民はいろいろな場面で思考の道具にして欲しいと考えます。一例をあげます。
 
「事故の悪夢」七訓 悪夢:ここでは強欲・怠惰・高慢などの大罪を意味します。
 
①、悪夢を持つ者は理想(あるべき姿)を持たず
②、理想を持たぬ者は信念(安全第一思想)を持たず
③、信念を持たぬ者は計画(安全提言者)を持たず
③、信念を持たぬ者は計画(安全提言者)を持たず
④、計画を持たぬ者は実行者(現場の安全責任者)を持たず
⑤、実行者を持たぬ者は成果(安全・安心・信頼)を持たず
⑥、成果を持たぬ者は幸福(金銭的報酬・心的報酬)を持たず
⑦、ゆえに幸福を求める者は悪夢(傲慢・怠惰・高慢などの大罪)を持つべからず
 
論理的とは言い難いところはありますが、言いたいことは「組合員などの現場で働く者から『聞く耳を持たない』者は事件の被告となり幸福を得ることができない、ということです
 
2-5の最後に7月2日の新聞記事を引用します。
 
コロナ対策、揺れた科学的助言「震災の教訓生かされず」
https://www.asahi.com/articles/ASN7232BHN6XULBJ00G.html?iref=comtop_urgent
 科学者による科学的助言を、政府は政策決定にどう活用すべきか――。政府による新型コロナウイルス対策では、専門家会議のメンバーによる助言の扱いが焦点になった。助言の扱いは、東京電力福島第一原発事故を始めとするさまざまな事件や事故を契機に、国内外で繰り返し議論されてきた。最新の研究成果やシミュレーションに基づくリスクの評価といった科学の知見は、危機管理の成否の鍵を握る。過去の教訓は今回、生かされたのか。
<引用終了>
 
福島第一原子力発電所の真相にも迫ることができない、いわゆる「専門家」として集められる人たちが過去の教訓を生かすことは「瓜のつるに茄子を求めるようなもの(幸田露伴)」と筆者は考えます。
 
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■「中村むねひら」略歴
本名:中村 克(なかむら まさる)
1955年埼玉県入間市生まれ。
1974年中央大学付属高校卒業。
1979年中央大学経済学部経済学科卒業。
旅行会社勤務後、82年株式会社オリエンタルランドに入社。83年の東京ディズニーランドオープン以来、約15年間現場運営の責任者として主にアトラクションやゲストサービス施設などのスーパーバイジングを担当。新任スーパーバイザーの育成及び、社員やパート、アルバイト社員の教育と指導、コスト管理など幅広い業務に従事。
98年に同社退社後、株式会社外部の専門家(休眠中)代表取締役。著書に「すべてのゲストがVIP」ディズニーランドで教えるホスピタリティ、「最後のパレード」ディズニーランドで本当にあった心温まる話、がある。
講演講師として「ホスピタリティ」と「安全管理」をテーマに講演活動を行ってきたが、「最後のパレード」は盗作と報道され社会的に抹殺された。現在精神傷害1級(PTSD)、身体障害1級(四肢麻痺)で高齢者施設で生活しているが、2009年以降様々な虐待と差別を受け続けている。
 

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