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Subba Factory - Ω

 いまだ生まれいでざるもの、すべての純真無垢な、ほかと区別のつかない無のひとひらに告ぐ−−−人生にご用心。
 いや、魚生というべきか。私は、魚生ならぬ人生に罹ってしまった。人生に罹り、意識を持ってしまった私は、少し群れから外れて水面に上がった。すると、聞き慣れぬ奇妙な鳥の鳴き声が聴こえた。
「プーティーウィッ?」
 揺ら揺らと水面に泳ぎ上がった私の体は、その声に再び目覚めさせられ、群れの方へと戻される。けれども、人生を、生を考え始めた私の、小さい、そんな「無駄なこと」を考える機能が無い筈の脳髄は、体の動きに対して客観性を保持しようとする。水が冷たくなるにつれて、唯無為に食べて来たモノがこの身を保つための肉となって全身を覆い、今日の私の身体が出来上がった。何の為に過剰な程の肉をこの身に湛えたか。我々の生きる目的、交尾のために他ならない。より良い子どもを産む為に、肉を身体に付け、海流で体を鍛え上げた。より良い雌を手に入れるための身体アピールでもある。日々が流れていく中で、常に身体の奥底から低い声が鳴り響く。「より良き子を産め、その為に全力を注げ」と。だからこそ、人生なんて必要が無かった。産まれたこと・死んでいくことを意識する必要は無かった。目の前に現れる食糧を、他の者よりも多く獲る。危険そうな雰囲気は、極力出会う前から排除していく。より良い状態で子どもを作ることが出来る状況へ自分を運んで行くことが「生きる」ことであった。いや、私の中に「生きる」なんて無かった。ただ、在る、のだった。
 だが、私の中にある日、低い声よりも自分の声が大きく響いた。
「なぜ。」

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Subba Factory - Ω

muneyuki

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muneyuki

本と漫画とロックと妖怪とに埋もれて暮らしたい。妖怪みたいな小説書きたい。 「書肆鯖」絶版・ホラー漫画、怪奇・幻想・文学、その他変なのに目がないネット古書店です。 https://t.co/3CGdkN2Zbb 「こけかか」文章。http://kkkka.seesaa.net/
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