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いってらっしゃい、とお別れする/おっぱいとぼく

先日、去年の5月からコノビーさんで連載させていただいていた「おっぱいとぼく」が完結しました。

「おっぱいとぼく」は擬人化したおっぱいと生まれたての赤ちゃんのハートフルコメディ(?)マンガで、ポジティブなぱい子とネガティブなぱい美、ツンデレのぼうやの3人が主人公です。

今思うと、私の産後の悩みのほとんどがおっぱい関係でした。
そもそも赤ちゃんに上手くくわえさせられない、なかなかお乳が出ない、搾乳が全然できない、授乳で体がガチガチ、血豆で激痛、乳腺炎、左右の飲みムラ…など、その度に「ああ、私は上手くできない…上手くいかないのは自分のせいだ」とネガティブモードに入っていました。

でももし、おっぱいにも人格があったとしたら…?

おっぱいに関するさまざまな日常や問題をおっぱい目線で描くことで、「授乳が上手くいかないのは私のせいだ…」と思うかわりに「まったくうちのぱい子は気まぐれね」と思ってもらえたら。そんな気持ちでこのマンガを描き始めました。

シーズン1の連載が始まった時は「続きを描くかどうかは連載の人気次第」と言われており、ちゃんと卒乳まで描ききれるだろうかとヒヤヒヤしていましたが、たくさんの方に応援していただき、「シーズン2の許可でました!」と担当さんから言われた時は本当に嬉しかったです…涙

続編について話し合っているときに、「シーズン2のテーマは自立にしよう」と担当さんと決めました。

おっぱい(親)とぼうや(子)の、それぞれの自立のストーリーを、ダイレクトな「卒乳」というシーンのみに限らず、子が親から自立していく、子の自立を親がサポートする(自分も子離れする)という育児全体への共通メッセージを軸にする。

比較的ほのぼのしていたシーズン1と比べて、シーズン2は夜泣きからはじまり、ずっと自信満々だったぱい子の挫折、ミルクの助けを借りることに対する罪悪感や卒乳への不安、左右のおっぱいの喧嘩など盛りだくさんでした(字面が面白いですね。左右のおっぱいの喧嘩…笑)

そして、一番悩んだのが「どのように卒乳させるか」でした。

いろんなバージョンを考えていて、おっぱいが面と向かって「これが最後の授乳!」と宣言してみたり、「授乳は終わりだけどずっと一緒にいるわ!」と言ってみたり、それぞれの詩的な思いとともに卒乳してみたり…と試行錯誤している最中に、娘が卒乳(断乳)しました。

「あ、こんなあっけなく終わっちゃうんだ…」というのが正直な感想でした。
あんなにおっぱい好きだったのに。あんなに四六時中おっぱいと一緒にいたのに。

娘よりも私の方が寂しくなってしまって。

「おっぱいとぼく」のぼうやは娘と一緒に成長してきました。娘の妊娠中から企画が始まり、出産後の娘に授乳しながら「きっと今おっぱいはこう感じてるかな、ぼうやはこう思ってるかな」とリアルタイムでマンガを描きました。

そんな娘がおっぱいを卒業して、さらに力強く成長する様をみながら「ああ、これは成長の一部なんだなぁ」としみじみ思ったんです。

そのあとも担当さんと何度も話し合い、最終的に、自分で進んでいこうとするぼうやをそっと後押しするような、読んだ人が自分の経験を思い出せる余韻のあるような、そんな終わりかたに決まりました。

今までの各話の素敵なタイトルは全て担当さんがつけてくださってたんですが、この最終回のタイトルだけは、わがままを言って自分でつけさせていただきました。

このあとも何十年も続いていくであろう赤ちゃんの人生の、一番最初の、一番弱々しい数年を共に歩むのがおっぱいです。

その役目を終えるとき、おっぱいはどう思うのかな。

実は直前まで、最終話にはこのモノローグがついてました。

「生まれたばかりのあなたにとっては 
 私たちが世界の全てで
 全力で向かってくるあなたに 
 私たちも必死だった
 でももう私たちなしでも大丈夫だね

 これからも続いていくあなたの人生の 
 一番最初の数年を
 あなたと一緒に歩めて
 本当に幸せだったよ
 ありがとう いってらっしゃい」

バイバイじゃなくて、さよならじゃなくて、いってらっしゃい。

きっと、子育ては「いってらっしゃい」の連続なんだろうなと思います。

最終話が公開されてから、各種SNSのコメントやDMにて本当にたくさんの感想をいただきまして、全然お返事できずに申し訳ないのですが、本当に嬉しく読んでいます。泣きそうになりながら 笑

本当に、ありがとうございました!!

↓シーズン1はこちらから読めます

↓シーズン2はこちらから読めます

えっと、もし書籍化とか興味ある編集さんいましたらご連絡ください…(ひそひそ)

この記事で心に感じるものがあったら、サポートしていただけると嬉しいです。