佐藤大介さん

大事なのはリスペクト

星野リゾートを卒業した佐藤大介さんが、ゲスト講師だった。

星野リゾートはホテルや旅館の再生で有名だ。
佐藤さんがやったのは、青森の名門温泉ホテル。
220億円の借金を乗り越え、5年で立て直した。
星野リゾート青森屋、だ。

佐藤さんは、旧来のやり方を改めた。
そりゃ倒産した会社だから、マネジメントが悪いに決まってる。
マーケティングがなってなかったに決まってる。

だからといって、それらのやり方を全否定しない。
悪かったマネジメント、
なってなかったマーケティングを実行したのは、
残っているスタッフだからだ。
全否定すれば、彼ら彼女らを全否定することになる。

へたをすれば、その地域までネガティブに評価することになる。
「田舎だから」「なにもないから」「新幹線が通ってないから」
すると、ないものねだりが始まって、責任転嫁も始まって、
ちっとも自分たちで改めようとしなくなる。

だから佐藤さんは、
「地域、スタッフ、過去へのリスペクトが大事」
という。
「その目を未来に向けさせることが大事」
という。

マネジメントにしろマーケティングにしろ、
論理的には正しくても、
「正しいことが正しいとは限らない」
マネジメントのやり方を変えるにしても、
これが正しいんだからこれをやれ、
というコマンドを出しても、人は動かないかもしれない。

まずは上手くいっている事例を体験させる。
星野リゾートでは成功事例がたくさんある。
レストラン部門、客室部門、サービス部門、
それぞれに責任者を派遣して、
成功体験をつけさせる。

あるいは、一流のサービスを提供している施設にも
体験させに行く。
たとえば、ディズニーワールドに行ったことないホテルマンが、
一流のホスピタリティを想像する、理解する、実践することは難しい。
だから、体験させる。

正社員だけじゃない。アルバイトにもレスペクトを忘れない。
一人ひとりが、改革の実行者たちだから。

リベラルってこんなことかもしれない。
上手くいってない現状をゴミ箱に放り投げ、
新しい思考や手法をハードランディングさせる、
のではなく、
たとえば「地域、スタッフ、過去へのリスペクト」
をきちんとしながら、
共感を得られるような仕組みをつくっていく。

佐藤さんは、
「地方が地方らしくありながら、元気でありつづける」
ことを自分の仕事の軸としている。

そのためには、地域へのリスペクトははずせない。