落とし物

もう一回それがあったらどうする?

地下鉄早稲田駅そばの銀行ATM。無人。
封筒が置き忘れてあった。

空っぽだろう、
前の誰かが中身を入金して、そのまま放っておいたんだろう、
と思っていた。

ATMでの用事を済ませ、立ち去る前に、
その封筒を手にとって、中を見てみた。

入ってる!
けっこう入ってる!

とっさに手に持っているファイルの中に入れて
何食わぬ顔してATMを出た。

何食わぬ顔はしているが、
心臓はドキドキドキドキドキドキ。

マンガのように、
いいムラタと悪いムラタが闘っている。

置き忘れったヤツが悪いんだ。
持ち去ったとしても許される。
けど、いい気持ちはしないから、
支払いたくないけど催促されてるものに使えばいいじゃん。
あんとき損したおカネの補填にすればいいじゃん。

いやいやいや、交番だろう。
交番に持っていくべきだろう。
「財布置き忘れたけど、戻ってきました」
「しかも、現金もそのまま」
「日本って、信じられないぐらいいい国!」
ってfacebookでもときどき出てるし。

バカモノ!愚か者め!
交番に届ける奴がいるか!
財布ならともかく、現金が入った封筒だぞ。
カネに色はない。
落とした奴も勉強代として身になるはずだ。

いやいやいや、万券と千円券が混じっている。
オトナなら1万円2万円3万円、
万券で揃えるだろう。
万券と千円券が混じっているということは、
落とし主は学生に違いない。
学生のおカネをネコババするのか!

結果、交番にいった。

しかしこれは、ホントに正しい行為なんだろうか。