フライキ

米津玄師の「馬と鹿」が

米津玄師の「馬と鹿」がアタマから離れない。
ずっとリピートされている。
自分でも変だな、と笑いながらも、
ずっと回り続けている。

釜石で、また奇跡が起こった。
世界ランク19位のウルグアイが、
世界ランク10位のフィジーに
30-27で勝った。

初戦のオーストラリアをギリギリまで追い込んだメンバーから
少し入れ替えたとはいえ、ワールドカップの代表メンバーに
それほどの差はないから、フィジーらしい強さが落ちたわけではない。

鵜住居スタジアムにいて思ったのは、
7月に日本代表とフィジーの試合があった余韻がまだあり、
釜石のお客さんはフィジーには愛着がある。
あのときは日本代表が勝ったし、
試合後、ピッチの上で日本代表といっしょに円陣を組んで、
犠牲者と市民のために祈ってくれたので、
今度はフィジーに勝って欲しい。

試合前は、だいたいそんな感じだった。

キックオフのカウントダウンも高らかにできて、
試合が始まって7分でフィジーがトライ。
ま、こんなもんだよね、と思っていたら、
14分にウルグアイがトライ。

ウルグアイのディフェンスの固さと
フィジーのミスの多さが重なって、
フィジーがまたトライをとって逆転すれば、
ウルグアイは2本もトライを取り返す。

どうやら互角に闘っている。

互角もそうだか、
格下が格上に向かって必死に噛み付いていっている様子が、
前回大会でテレビで見た、日本代表の南アフリカ戦とかぶってくる。

24-12、ウルグアイのリードで前半終了。
ハーフタイムもそろそろお客さんたちがトイレから帰ってきたところで、
固まって応援していたウルグアイ応援団からウェイブが。

シャイな釜石の人たちはウェイブに慣れてなく、
前回の日本代表戦でも成功しなかったが、
今回もメイン→ゴール裏→バックスタンド、のところで
消えかかる。

気がついてないのか、連想させてイヤだからなのか、
消えかかったウェイブにがっかり感があるスタジアム。
しかし、それをつないだのが、
もう一方のゴールポスト裏を占めていた小中学生たち。

この子たちがウェイブをつなぎ、
メインスタンドに波が戻ったところで、
ウルグアイ応援団は2発目を波動!

今回は、メイン→ゴールポスト裏→バックスタンドも上手くいき、
小中学生たちももちろん歓声を上げながら波をたたせ、
スタジアムの雰囲気は最高に盛り上がったところで、
後半の闘いが始まった。

たぶん「そうしようね」と合意があったのだろう、
小中学生たちは、フィジーにもウルグアイにもキーが高い声援を送っていた。
それがなんとなくやさしい雰囲気も醸し出していて、
でもグラウンドの上ではフィジーが怒涛の攻めを繰り返し、
ウルグアイが必死のタックルで防いでいる。

伝説の小学校と中学校があった場所にたつスタジアムは、
その小学校と中学校の生徒児童たちと、
市内のほかの小中学生たちがいっしょになって雰囲気を作っていた。

その結果、トライ数はフィジーが5、ウルグアイが3なのに、
スコアはウルグアイ30、フィジー27。
トライのあとのコンバージョンは、
フィジーが5本中1本しか決められなかったのに対して、
ウルグアイは3本すべて決め、ペナルティゴールも
フィジーが0、ウルグアイが4回中3本を決めていた。

いろんな意味において「奇跡」のスタジアムで、
ウルグアイが格上に立ち向かって奇跡を起こした。
4年前を思い出して、スタジアムは騒然となった。

爆発しているスタンドの応援団と一緒に喜んでいるウルグアイの一方で、
フィジーは円陣を組んで試合を振り返っている。
そして円陣を解き、ウルグアイの選手たちと
握手やハグでお互いを称え合ったあと、
バックスタンドに歩き出す。

一列に並んだフィジーの選手たち。
バックスタンドに残っているたくさんのお客さんたちは、
「これがあれか!」
と、腰を折ってお辞儀をしてくれるフィジーの選手たちに
この日最大の拍手でお返しをする。

これもまた奇跡か。

その瞬間、米津玄師の「馬と鹿」が流れ始めた。
ドラマのように、
「ゆがんで〜傷だらけの春〜」
前奏なしで始まった。

止まんね〜〜。