柿喰う客『肉食獣』を観た

出演
原田理央
牧田哲也
長尾友里花
加藤ひろたか
福井夏
田中穂先

12/16(土)
あんよはじょうず。を新宿で観劇後、その足で下北沢はスズナリへ
行き慣れた町。行き慣れた劇場。
愛してやまない劇団「柿喰う客」の新作公演『肉食獣』を見てきました。
今回の東京観光のメインイベントパート2。
1年ぶりの柿喰う客で、気合いを十分に。 
狭く、急勾配なスズナリの入口の階段を通り、受付へ。
舞台は素舞台。あるのはむき出しのSSのみ。
これぞ柿という感じでワクワクしながら、開演を待っていると。
穂先さん演じる鹿舌紅葉が他の俳優を呼び、福井夏さんの合図からの俳優6名によるユニゾン。
気持ちよすぎる。自分が初めて、柿のセリフの濁流を喰らったのは、御開楽喜まで遡るんですが、この時も、福井夏さんの合図からの一斉に始まるセリフでして、これは本当にクセになります。
ひろたかさんがとにかく美しく、ついつい目で追っちゃいます。
あと、今作は長尾さんがとにかくかっこよく。引き込まれました。
作品のあらましをざっくばらんに語ると、同じ門下の6名の歌人のうちの1人、猪口才牡丹の死の真相を巡り、思い返される6名に課された、「肉を口にしてはならない」という縛りや各々の思いなど元に広げられる追憶の話。
という感じかなと思います。
今作はあまり葛藤は見られず、大きな波がある訳では無いんですが、それでも俳優の技能や中屋敷さんの言葉選びや闇で映えさせる照明の妙、そして、それぞれのキャラクター性を色濃く映し出す衣装などの要素が秀逸で、気づいたら60分経っていました。
いつもの柿喰う客の作品はハイカロリーな演劇をぐわっと喰わされるイメージに対して、今回は上品な芝居を味わい、時間を溶かしていくような感覚でした。
脚本の中にも雑味は少なく、文学的でもありました。ハイカロリーなものを期待している人からすると、少々物足りない気もするかもしれませんが、それでも満足のいくモノだと思います。
何となくですが、昨今の過激な多様性の主張に切り込むような作品じゃないかなと感じました。
殊にヴィーガンの活動に対しての批判では無い、話題の提起。
これを見たから、肉を食べようとかは、毛頭思いませんが、現代社会の問題を思い返す契機になるような作品ではありました。
考察のしがいのある作品なので、パンフレットを買いたかったのですが、売り切れ。残念。
抽選のロンTは買うことが出来たので、今後稽古場で着まわします。
自分が見た回は通常の回なんですが、公演初日からしばらく、スタッフさんの体調不良で生肉版と言われるようになった、音照効果なし。衣装なし。の公演をされてたようで、めちゃくちゃ見たかったと思うと同時に、この劇団の足を止める要素は果たしてあるのかと、恐ろしさすら感じるような公演でした。
禁猟区も、俳優の体調不良で代役を急遽立ててましたしね。
本当に凄まじい劇団。
ラブ。柿喰う客。
ラブ。演劇。

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