新しい組織のあり方 ~その3 給与体系がすべての肝~

「月給+残業代」×「年功序列」は病み組織の記事に、時給制のことを書いていますが、働いた時間の長さを評価し、それによって給与が決まるシステムでは一向に効率は上がらないし、効率よく仕事をする人が報われずだらだら仕事をする人が良い思いをするという、各方面において不満の多いやり方だと思っています。新しい組織のあり方を考える上で、最も熟考すべきは「給与体系」だと思います。諸悪の根源「お金」を具体化して考えた時、今の腐った日本の組織で人々が疲弊する原因の最たるものがこの「給与体系」だからです。

大きな組織でこれをやるのは難しいということを承知で以下の提案をしようと思います。まず、組織における業務分担というのは、必ずしも平等には組まれません。そしてもっと言うと、平等に組む話ではないと思います。お子さんがいらっしゃる方や、病気がちな方など配慮すべき人はいます。私自身、そういった方の業務量は減らしていった方が良いと思っています。そのしわ寄せは往々にして、元気な独身の若者に回ってくるものですが、かといって単純業務増にもかかわらず、給料が上がらないことに対しては、簡単に頷けるものでもないと思います。であれば、その業務や作業・タスクに応じて、個々人が個人事業主のような形で仕事を委託なり頼まれて受けるような感じで、分担を決めていくのはどうかなと考えたわけです。

ある組織の業務がこれだけある、と棚卸をして、業務量や難易度などをわかる人全員で評価していきます。それらに応じて業務ごとに報酬を決めていきます。楽で誰でもできる仕事は単価が安く、誰もが嫌がるような仕事は単価が高かったりすると思います。花形で人気のある仕事は単価が安くてもいいわけですね。そういった形で業務ごとの報酬を決め、作業時間に関わらずその業務が達成できれば報酬は支払われるということです。個人個人に委託積算書を作るようなイメージです。お店番などの場合は、どうしても時間を評価しないといけないこともありますので、それはそれで時給システムを入れていく必要はあると思います。また、どこにも当たらない業務が生じた場合に進んでやった人がいた場合は、その分も評価され報酬に反映されるようにします。固定の単価はあるとして、もし勤続年数も評価に加えたければ、1.5倍掛けするとか、やりようはあると思います。これを徹底すると、正社員とアルバイトの区別もだんだんなくなり、頑張れば頑張るほど報われる(頑張りたくない人はそれなりでそれなりの)システムに近づいていくと思うんですね。

このシステムがうまく回れば、在宅ワーク、リモートワークなどの多様な働き方の可能性も広がります。お子さんがいらっしゃる方や病気がちの方などで負担を減らさなければならない場合でも、在宅でも割り振られた業務を達成できるのであれば、必ずしもストレスフルの通勤電車に乗って出勤する必要はないし、それならできる、ということはありそうです。必ずしも週5日8時間労働をする必要もなく、自分の仕事が終われば帰ってもいいわけです。休みも自分で調整して取ることができます。また、負担を減らさなければならない人の分の仕事を引き受けた人に対して、協力してくれた分だけ報酬が増えるのであれば、快く受けてくれる人はいっぱいいると思います。有無を言わせず業務増を押しつけられるシステムだから、不満が溜まるわけですからね。

「産育休はおめでたいから」「病気だから仕方ない」と言えばそうなんですけど、社会全体を見ても、報酬増もなくそれを受け容れるほどの余裕がないわけですし、一方でそういった不満に対し、声を上げるのはタブーという空気がものすごくあります。福利厚生が整っているのは素晴らしいことですし、お子さんがいても働き続けられる職場、病気になっても復帰できる職場環境というのは、確実に整えていく必要があることです。しかし、誰かに無理を押しつけるシステムでは、それを嫌がる人がいるのも当然であって、これは負担をかける人が悪いということではなく、システムが整っていない問題だと思うんですね。この従業員満足度と福利厚生問題は私はずっと考えているテーマの一つです。すべての根幹は、構造、しくみ、制度、システムで決まっているわけですから、ちゃんとみんなが納得できるあり方を構築していく必要があると思っています。

給与体系と従業員満足度(ES)は最も密接にかかわっていると思っており、まずはどんな組織においてもES向上が目下の課題だと思います。それは報酬が高ければ良いというものではなく、「すべての従業員がその給与体系に納得している」状態がベストだと考えています。私は「頑張った人が報われる」給与体系を望みますが、中には「頑張っても頑張らなくても同じ」「年功序列」を望む人もいるかもしれません。なので、そのベストは組織によっても違うと思います。

何を持って「頑張った」と評価するのかについては、かなり検討する余地があります。また、個々の業務についても、難易度や人気、業務量、かかる時間と労力など総合的に判断する必要があるのですが、それをすべての従業員で合意しなければなりません。そこの合意に至るのも相当大変だと思います。

いつも無自覚ですが、私たちは何をもって、その業務の重さや、組織に対する「貢献度」をはかるのかということに、もう少し目を向けていく必要があると思います。効率よくミスなくこなすことなのか、量なのか、お客様を増やすことなのか、売り上げが上がることなのか、職場の雰囲気が良くなることなのか。確かに一つ一つの業務を細分化して報酬をかちっと決めすぎると、それ以上のお金に換算されないことはや~らない、という人が出てくると思います。それを防ぐためにも、その人の自主的な取組、毎日おいしいコーヒーを入れてくれるとかそういったレベルのことでも、貢献度の評価軸に入ってくる可能性はあると思うんですね。

職場の雰囲気として、足を引っ張り合うのではなく、助け合う、協力し合うという雰囲気はとても大事だと思いますので、お互いに良いところを見つけあうような風土になると良いと思います。他人の良いところを見つけてほめてあげられるというのも一つの才能です。良いところを見つけた人も、見つけられた人にもインセンティブがあれば、お互いに良いところを認め合う良い雰囲気が生まれると思います。

脱線しながらだらだら書いてしまいましたが、給与体系を整えることは、福利厚生であったり、リモートワークなどの多様な働き方であったり、職場の雰囲気であったり、ありとあらゆるすべてのことにつながっていくことだと思います。ボランティア精神や、見返りを求めない心は確かに大切ですし、「誰も気付いてくれなくてもやる」みたいなことは美徳と思われています。「他人に評価されるために頑張るの?」みたいな話もあると思いますが、評価やお金のために頑張るようでいて、もっともっと根源は「他人に感謝されて豊かになれると嬉しい」という人間の根本的欲求を反映したものだと思うんですね。組織に貢献して「ありがとう、助かった」って言われて感謝されて、それが給与に反映されたら嬉しいじゃないですか。私たち人間は、感謝されて、役に立って、それでお金をもらえる(豊かになれる)ということを心底望んでいる生き物だと思います。私はただただ、それを実生活レベルで落とし込んだ給与体系システムを構築しよう、ということが言いたいだけなんです。

今日の記事のシステムはまだまだ穴だらけで、考察が甘いこともわかっています。しかし、理想を語ることを恐れてどうする?の記事にも書いたとおり、この状況に不満があるならば、どうあればいい、というのを考えることは非常に大切だと思っています。皆さんがご自身なりに「理想の給与体系」というものを考えるきっかけになれば幸いです。

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