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「企業が存在し大企業化するワケ」をノーベル経済学賞を使って科学する

こんにちは #金曜日はカネ曜日
ファイナンス担当のけんたろです。

大企業ってなんで存在するのだろうか、気になったことありませんか?(←ないって言われそう)
特に日本のように解雇が容易でない国家においては、業務委託や下請けなどを駆使して少人数で会社を運営する方がより、効率的な会社運営ができる気がしませんか?

なぜ、企業は存在し、大企業化するのか。

実はこの問いに”取引コスト※”と呼ばれる概念を用いて企業の存在にアプローチした、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者がいるんです。
それが今回のnoteで紹介するシカゴ大学のロナルド・コース教授です。

※「取引コスト」とは後にそう呼ばれるようになった用語で、論文のなかではマーケティングコストなどとして表現されています。

ロナルド・H・コース。1991年「社会的費用問題」等の論文業績でノーベル経済学賞を受賞

コースの主張

コースによる企業存在の理由はとても単純で、
企業は費用の最小化を考えるもので、大企業家はその解消手段になるからだ、と主張しています。

下請けに出せばよい業務まで社内で手掛けるのは、「社内で業務」と「下請けに委託」を天秤にかけた時に社内で業務をさせた方が安くなるためだということです。

コースの著書「起業・市場・法」における取引コスト

社内で業務をさせるには、”採用”、”育成”、さらにきちんと業務が行われておるか”監督”などのコストが発生します。
一方で、下請けに委託する場合”交渉”、”契約”、”品質管理”などのコストが発生します。これは下請けへ委託する費用とは”別に発生する”コストになり見落とされがちなコストでもあります。
これらの無視されがちで見えづらいコストのことを取引コストと呼び、
この取引コストが高い場合、会社はどんどん大企業化(社員として内部に取り込むことを選択)するとしてます。

社員への監督においては、成果を満たさない時に、社員自身のキャリアへの人事権(すなわち降格や減給)など様々なガバナンスを講じられる一方で、下請けの場合は、その打ち手が限定される。
給料と下請けのコスト比較だけでなく、このような取引コストに注目する点、組織づくりにおいて忘れてはいけない指標だと改めて感じております。

2022年、パナソニックは持株会社制へ移行しており、人事・経理・法務などのバックオフィス業務を担うオペレーション会社も単一の事業会社として独立運営化されました。
コースの理論を借りると、従来よりもパナソニック間で”取引コスト”が増加する傾向にあると考えられます。
グループでの競争力確保のためにはできる限り、”取引コスト”を引き下げる仕掛けを講じることが重要なのかもしれない
ですね。

例えば、新体制では従来よりも人事・経理・法務の各種サービスをオペレーション会社を毎回利用するかどうか、毎度毎度合理的な判断を求められるようになります。
その場合、コストが他社に比べて合理的なのか、そもそもそのサービスを使った業務は必要なのか、毎度考える必要が生じます。
定常業務化することで意思決定の回数を減らし、よりお客様やライバル企業などの外に向き合う時間を捻出できるはずなので、ここを合理化しないとずっと内側(グループ内)の業務合理化に向き合い続けることになるので、合理化効果は数年でサチュレーションが起きるでしょうし、競争力は確実に低下すると僕は感じています。
そして、各事業会社でオペレーション機能を強化する方向性に舵がきられると思います。果たしてそれは会社が目指す方向性なのか...。
パナソニックが取引コストにどう向き合うのか、引き続きウォッチしていきたいと思います。

 話を戻して、コースは数学が苦手で苦労した経済学者の一人でもあるようで、
彼はノーベル賞のスピーチにおいて「経済学者が数学を使うことを否定しない。ただし、今後は数学が必要な時代が必ずやってくるだろう。今は機が熟していない」と述べています。
実際、後の経済学賞受賞者(直前の1990年ノーベル賞を受賞したマーコウィッツも緻密な計算によるポートフォリオ理論を完成させたことも受賞理由の一つになっています:マーコウィッツに関するnoteもよかったらどうぞ♡ )

以上、「大企業病」など、大企業への課題が種々囁かれる中、なぜ大企業化するのか
その背景について、少しでも理解が前に進めば嬉しいなと思います。

▼参考文献
「企業・市場・法」 (ちくま学芸文庫) 2020/2/11
ロナルドコース



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#まいにちMBA #金曜日はカネ曜日

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