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それから『ジュリエット』


ジュリエット

ワイングラスを片手に持って
ロウソクの火を吹き消しておくれ
転がるコルクで遊んでないで
苺のタルトを切り分けてくれ

揺るがないものであろう
狂わないものであろう

蛍光灯の下 十分綺麗だなあ
透かした向こうで君が笑う

フランス映画のようでもないし
夜景が見えるヒルトンでもなく
HOLGAで撮ったみたいな写真
光が入りすぎてる感じ

揺るがないものであろう
狂わないものであろう

甘ったるい 底の浅い味
君が好きなら僕も好きになるよ

甘ったるい 底の浅い味
君が好きなら僕も好きになろう
なんかさ 悪くないよな
君がいるなら あと死ぬだけでいいや

【解説】
彼女の誕生日を祝った時の曲。
元々は明日、照らすのイベントを
3ヶ月連続でやることになり、
各ライブで新曲を披露しようということになり、
『バレンタインコーリング』
『ワゴンタイガー』までは出来てたけど、
もう一曲がなくて、
とりあえずフライヤーに
タイトルだけ先に
適当に『ジュリエット』と付けた。
ロミオとジュリエット的な感じで
多分『ジュリエット』にしとけば、
恋愛の曲として
なんとでもなるだろうなと思って、
本当に5秒くらいの
その場のノリで決めたタイトル。
曲を作る前にタイトルだけあった。

新栄で住んでいた時、
本当にお金がなくて、
彼女の誕生日を祝うにも
まともなケーキもプレゼントも用意できない。
とりあえず
千種のイオンでいちごのタルトのケーキと
お酒が好きな彼女のために
安いワインと
ワイングラスを買ってきた。
その時の事。
そのワインを飲んで、
「甘くて美味しい」
と言ってくれたけど、
多分値段を考えると
深みがないというか、
科学的に味付けされて甘いだけで、
底の浅い味なんだろうなと思いながら
お酒を飲まない僕は冷静に見ていた。
でも
そういう彼女の優しさが本当に嬉しかった。
HOLGAは
その彼女が逆に
僕の誕生日にくれたカメラで、
『素晴らしい日々』
の時にツアーに持って行って、
色んなところで写真を撮ってみたけど、
帰ってきて現像してみたら、
ほとんど真っ暗で何も写ってない。
のちのち分かったけど、
これはトイカメラという
おもちゃのカメラの一種で、
カメラの中の作りが雑らしく、
明るいところで撮ると
光が入り過ぎて、
白っぽくなり、
暗いところで撮ると真っ暗になる。
それが面白みなんだろうけど、
現像代が高過ぎて、
お金がない僕はハマるほど使えなかった。
ただ最初のさよなら三角のCD『女の子』のアー写は
このカメラで撮ったロン毛自体の僕の写真。
フランス映画は
『アメリ』は好きだけど、
『ポンヌフの恋人』とか
ゴダールとか
たまに見てて
意味はよく分からなかったけど、
お金もなくて生活は破綻してるくせに
おしゃれで
なんか毎日が楽しそうな感じがして、
こっちはバイトとバンドの行き来みたいな
ただお金がなくて破綻してるだけの生活だったから
あのノーフューチャーな世界と空気が羨ましかった。
ヒルトンはその逆に
お金持ちで暮らしが豊かな人たちの生活。
僕たちはきっと
そのどっちでもないけど、
2人で蛍光灯の下でも楽しめるような
毎日に光が入り過ぎてるくらい
明るい生活を作っていこう
みたいなことが言いたかった。

なんとなく最後のオチ的な
フレーズが全然出てこなくて、
本城と本城の後輩のじゅんやくんと
モリコロパークのサツキとメイの家に遊びにいった時、
縁側で座っていると
なぜかふと最後のフレーズが出てきた。
彼女が隣にいる訳でもないのに
本当に不思議だった。

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