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Blender_Sketch番外編 拝啓Freestyle様Ver.20161221

(この記事はBlender Advent Calender 2016 12/21 分のものです。)

今年の夏「Blend×JP」というBlenderユーザー主催のイベントがありました。自分はそこで「拝啓Freestyle様」というタイトルでお話をさせていただきました。「BlenderとFreestyleは漫画にはサイコー!」というお話でした。
この記事は、その中から要点だけ再構成したものとなります。

Freestyleとは?

BlenderにはFreestyleという3Dモデルを「線画」でレンダリング出来る機能があります。自分はこのFreestyleを、漫画の背景の作画をメインに利用しています。

Freestyle以外にも3Dモデルを「線画」にする方法はいくつかあり、Blenderですと「Node」や「ポストプロセッシングのオプションでの辺出力」などです。
これらの方法を大雑把に説明すると「モデルの辺を目立たせて描画する」方法となります。

Freestyleがそれらの方法と根本的に違う点は、「線を目立たせて描画する」ではなく「線を引いて描画する」という点です。

他の方法が辺ごとに正確に描画するのに対し、Freestyleは任意の設定に従い、辺を一つのまとまりとしてとらえ線を描画します。さらに、線に形状等の情報を持たせることも出来ます。

▲ギザギザを情報として線に乗せ、毛並みを表現した例

漫画の線は入りと抜きのある、ペンで強弱をつけた線が基本なのですが、Freestyleはその様な強弱をつけた手描き風の線で絵を表現できます。

つまり漫画の作画に3Dで作った絵を持ち込もうとした時に、とても相性のよい機能というわけです。

しかし漫画の絵は「線」だけで構成されているわけではありません。ここで漫画の絵の要素を考えてみます。


漫画の絵を構成しているもの(要素)

▲形状(輪郭 線)

▲質感 (ディテール)


▲陰影


上に示したように漫画の絵は「形状」「質感」「陰影」と大きく3つに分けられます。

Freestyleが担うのは「形状」輪郭、線の部分です。
漫画製作的に言えば「主線」です。

「質感」はテクスチャやマテリアル。
「陰影」はライティングです。

これらを組み合わせて漫画の絵は出来ています。1色が基本なので、色情報をデフォルメしてカケアミやトーンなど他の表現で置き換えるのも漫画の絵の特徴でしょうか。


ポスター用イラストメイキング

冒頭で紹介したイベント「Blend×JP」で公開した、自分の作ったイラストを例として挙げてみます。イラストと言っても、完全に1色の漫画絵のものです。合わせて少しだけメイキングも付けているので、Blenderを漫画に使うための一例として参考にしてもらえたらと思います。

製作した時の目標は、「Blenderによる一発出し(レンダリング)だけで、漫画絵(1色絵)を描く」でした。
一部テクスチャ等には、ClipStudioPaintを使っていますが、基本的にはBlenderのみで作りました。レンダリングされた画像は、Photoshopでグレートーン部分をセピアにした以外、レタッチや加筆はしていません。

▲完成画像(Photoshopによりセピア色に変更したもの)

▲要素別 右上から時計回りに、「完成画像」「テクスチャ」「陰影」「線(Freestyle)」


▲Blenderの画面 3DView(右) レンダリング画面(左)

▲構図等検討用ラフ(アナログ)

▲ロケハン(散歩途中であちこち撮っている画像)

▲モデリング

▲途中ラフ 検討確認用

▲モデルレイアウト検討

▲テクスチャーテスト


▲レンダリング前3DView画面

▲最終レンダリング

▲Blender×JPのロゴを入れてもらった、ポスターバージョン


NEXTSTEP

ところで自分の場合、漫画制作の絵に関する部分はすべて一人で作業しています。3Dを自分の漫画製作に持ち込んだのも、一人で描く上では必須だろうと考えたからです。
そういった中で自分の考える表現にBlenderを使うことでどこまで迫れるかを試行錯誤して来たのですが、先のポスターの絵を作った時に限界も見えてきたという気がしました。

漫画は復数ページのコマで構成されます。それらに自分の持っているすべての3D技術や表現を反映させるのは、一人作業を基本とする自分のワークフローでは、時間的コストで難しい部分があると感じてきたのです。(チームやスタッフがいる分業環境であれば、またちがう結論になると思います。)

また2D表現の漫画や絵では、3Dよる絵作りのメリットもありますが、逆に足かせになる部分も否定できません。

これからもBlenderとFreestyleをメインとして使うことに変わりはないのですが、今はそれにこだわらず、BlenderとFreestyleを最大限に活かすために、(自分が思う)3Dの弱点を補うべく別のアプローチを試しはじめています。

(明日Blender Advent Calendar 2016は blug_jpさんの「例の缶」作成詳説 です。)


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