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TUNIC の日本語翻訳を考える


はじめに


キツネちゃんかわいいですよね。
高難度のアクションとパズルが楽しめる TUNIC。このゲーム、道中で拾う説明書をたよりに、操作方法やらなんやらを読み解いてすすめていくわけですが、説明書の大半は謎言語で書かれておりほぼ読めない!ただし、ところどころ読める部分はある。しかしその日本語訳がすこし微妙で、そのことについて考える記事でございます。

 ※ネタバレを含みます

ゲーム内の謎言語=TUNIC 語の翻訳については別記事でヒントを書いたのでそちらをどうぞ。

さて、Andrew Shouldice さんが手がけたこのゲーム、英語圏の開発者さんなので当然ながらオリジナル言語は英語である。
発売にあたり多言語対応しているようですが、クレジットをみても特定のローカライザーがついているわけでない様子。
謎言語に混じって読める箇所が英語と日本語で比べてみるとだいぶ違っていて、そこの適切な翻訳を考えていきます。

東西の鐘塔

ゲーム序盤の目的である鐘を鳴らすところですね。
ボス戦を終えていざ鐘を鳴らそう、と思って迷った人も多いのでは。
英語だとちゃんと"Ring , Strike" (鳴らす、叩く) と書いてあり、ここは完全な誤訳ですね。

鳴らすには謎解きが…?
ちゃんと書いてある!

天上の世界

鐘を鳴らして東の森から出てきたあたりで拾える P.28
天上の世界?ここは天界かどこかなの?と世界観を作りだしちゃってますが、ここは THE OVERWORLD. 海外ゲームに親しんでいる方ならよく見る単語では。訳すならメインマップ、全体マップぐらいでしょうか。

地上世界もあるのかしら
あと、神殿が改行されちゃってますね
メインマップでした

The Overworld

ところでこの overworld という単語、海外ゲームでおなじみみたいにいいましたが、調べてみると面白いことがわかりました。この TUNIC のオマージュ元である"The Legent of Zelda" (NES) で、ビデオゲームで初めて使われたようなんです。有識者にも確認してみましたが、1987年以前の Ultima をはじめとしたRPG、アドベンチャーの類でも使用例はないのではという。
もともとは"ゼルダの伝説" (ディスクシステム) から NESへの移植されたわけですが、説明書などはかなり直訳っぽく、ネイティブからしたらおかしい言い回しがあるそう。
この中で地下ダンジョンを underworld 、地上世界を overworld と翻訳したわけですね。underworld 自体は、裏社会とかアングラ社会とかの意味でケンブリッジ辞典にも載っているくらいの単語ですが、overworld は載っていない。(実際、書いてても赤い波線の校正がはいる)しかし、地上世界を表すのに under + world (地下)に対して over + world というのはなるほど、と思うと同時にひょっとしたら任天堂が生み出した造語なんでは?という妄想さえしてしまいます。(そして Zelda がきっかけでゲームの世界に広まった可能性がある)
ゼルダの伝説、The Legent of Zelda ともども当時の説明書 (pdf) が今でも入手可能なのでぜひ見てほしい。そしてTUNICのゼルダ愛を感じてほしい。
ありがとうファミコンミニ。

The Legend of Zelda manual
https://www.nintendo.co.jp/clv/manuals/en/pdf/CLV-P-NAANE.pdf

ゼルダの伝説 説明書
https://www.nintendo.co.jp/clv/manuals/ja/pdf/CLV-P-HAANJ.pdf

何度でも戦える

東の要塞に向かうときに拾える p.6 - 7
英語と比べてみるとだいぶニュアンスが異なりますね。
同じ戦闘を何度でも繰り返せる!だとローグライクっぽいですが、ここは終わらない継承のループのことでしょう。
同じような戦闘が過去数えきれないほど繰り返されてきた、でしょうか。

まあ、何度も挑戦することになるわけですけども
だいぶ違いますね

金庫室

東の要塞の金庫室、ジッグラト内部の隠された金庫室
金庫室と書かれると銀行の耐火金庫なんかを思い浮かべてしまうわけですが。封印の鍵が保管されている場所なので間違いではないけれど、vault の適切な日本語訳って何でしょうね。

金庫室…どこかしっくりこない
保管庫とかの意味もあるけど

牢獄と灯台

王冠を手に入れてダッシュができるようになってから取れる p.4 - 5
継承者を Far Shore に封印したけど、それは冒険者 ruin seeker を呼び寄せるビーコンも発していた。という内容で、灯台に代わる、かつゲーム世界観にあった日本語訳を思いつかないのでここはこのままビーコンでよいのでは。

灯台なんてゲームに出てきたっけ
あー、ビーコンのことね

その他

他にもローリング中の不死身はそのまま無敵時間でいいんじゃないか、とか"追加サポート&秘密"は"シークレットとそのヒント"みたいなものでいいとかありますけど、まあ大きなところは上に書いた通りです。
日本語訳直してもらえないだろうか?と開発元にメールしたけど、応答なかったな。まあプレイに支障はないといえばないか。
ただ、TUNICに限らずインディーゲームだと、日本語ローカライズの際に全部味気のないゴシック体になってしまうのはいただけないなあとは思ってます。そんなに各国語のフォントの用意ができるか!といわれればそれまでなんですけど。
TUNIC は言語に(それほど)頼らずにできると思うので、一度英語でやってみてほしい。丸ゴシックと Serif フォントのバランスがキレイですよ。