【復習】騎手が馬券購入者の思い通りに乗るとは限らない(皐月賞振り返り)

皐月賞振り返り

タイトルだけでどの騎手の事を指しているのかすぐ分かってしまいそうだが、皐月賞についてはこれに尽きる。
まず、先週の中山の芝は土日ともに重馬場で、2000m以上のレースではスタミナを要し、とにかく後ろで我慢した馬が上位を占める傾向が顕著に現れていた。
特に土曜日の7レースではシャドウマッドネス&デムーロが最後方からどう考えても追いつけない位置から大マクリを決めて快勝、その後の山藤賞もスズカハービン&津村が大外一気を決め、明らかに昨年の皐月賞の日と同様に外差し有利な傾向が前日から明らかな状況だった。

そして、皐月賞は馬場だけでなく、ペースも重馬場にしては異常なハイペース(1000m通過が58.5)となり、4角で大外17番手だったソールオリエンスがとんでもない末脚で16頭をごぼう抜きで快勝。
2着には道中5.6番手から抜け出し頑張ったタスティエーラ、3着は10番手から馬場の真ん中を突いたは1番人気のファントムシーフが意地を見せた、
以降、9着のフリームファクシまでが9番手以降で競馬を進めた馬が入り、その後ろに先行勢が入る明確な後ろ有利な結果となった。

そして血統も明らかに重厚感のある血統(ほぼサドラーズウェルズ系持ち)が好走した。
1着ソールオリエンスの母父モティベーターはサドラーズウェルズ系、2着タスティエーラは稍重の宝塚記念を制したサトノクラウン産駒、3着もまた母父がメダグリアドロでこれもサドラーズウェルズ系だった。
さらに追うと4着のメタルスピードは3代母がサドラーズウェルズ系、5着のショウナンバジットも母父メダグリアドロ(サドラーズウェルズ系)、とにかく日本の高速馬場では足枷となるサドラーズウェルズの重さが武器となる日本競馬では「稀」な結果となった。
(ちなみにこれに気づいた私はサンシャインSでサドラーズウェルズと全兄弟のフェアリーキング持ちの馬を本命にして3着でした。)

レースを振り返ると馬場バイアス、血統バイアス、脚質バイアス(こんな言葉があるのか知らないが)が明確に出たレースだったことは間違いなく、この事実は軽さが求められるダービーまで覚えておいた方がよさそうだ。

予想振り返り

◎ べラジオオペラ 10着
☆ ファントムシーフ 3着
☆ トップナイフ 7着
☆ ホウオウビスケッツ 17着

単勝 15
複勝 15
馬連 15-7.8.9
ワイド 15-7.8.9
3連複 15-7.8.9
馬連 7.8.9.15
ワイド 7.8.9.15
3連複 7.8.9.15  

外差しが有利なことは前日時点で予想しており、馬場も当日回復する見込みがなさそうな事から、本命はべラジオオペラとしていた。
(予想詳細はこちらで。)
しかし、残念ながらべラジオオペラの田辺騎手は抜群のスタートから出していき、2番手のポジションを選択。
おそらくべラジオオペラが本命だった方は1コーナーで愕然としたのではないだろうか。
そして1000mを通過した時の時計表示で諦め、4コーナーで下がっていった時にはもう別のことを考えていたはず。
前走差して結果を出したべラジオオペラを、グラニットやタッチウッドがいるメンツで誰が先行すると予想出来ただろうか。
脚質転換について、少し色々調べてみたので、後述する。

今回は馬券としては縦目も押さえたので、他の選んだ3頭にも触れると馬券内に入ったのはファントムシーフのみ。
ファントムシーフは少し進路に戸惑うところがあったように見えたが、あそこでロスのないメタルスピードの内をすくったのはさすがで、ファントムシーフも最後まで走っていた。
この馬はやはりチカラ上位。
トップナイフは後ろから進めたのは正解だったがこれが一杯、ホウオウビスケッツはさすがに展開が苦しかった。

騎手が馬券購入者の思い通りに乗るとは限らない(データを添えて)

さて、田辺のサプライズ先行には心の底から驚かされたが、競馬予想をする際にはどの馬が逃げ・先行・差し・追い込みを選択するかはざっくりと見回し、基本的には近走のポジション取りからレース展開を予想すると思う。
わかりやすい例を上げれば大阪杯の勝ち馬であるジャックドールは出遅れた香港は度外視するとしてもその前のレースぶりと他馬の戦型から逃げ濃厚と予想し、同レース2着馬のスターズオンアースは出遅れ癖や他馬の戦型から中団~後方待機をすることはざっくりと想定できる。
しかしそれは実際に騎乗する騎手も予想ができることで、一方であえて脚質転換で奇襲的にレースを進めるケースもある。
一番印象的な例が、2005年の有馬記念の勝ち馬であるハーツクライとルメール。
これまで後方から競馬を進めて末脚で勝負していたハーツクライが、好スタートから3・4番手からレースを進め、抜け出して快勝した。
今回のべラジオオペラの田辺も誰かの指示があったのか、自身で選択をしたのかはわからないが、何かしたの勝機を見出して先行策をとったのだろう。
一方で馬券を購入する側はこれを予想するのは難しい。
事前に”今回は先行します”と堂々と言う必要は勝負の世界では(時にけん制のためにあえて言うこともあるかもしれないが)基本的には必要ない。
そこで、今回は良くも悪くも脚質転換をよくやる騎手とその中で結果を残している騎手を調べてみた。

<前提>
・過去1年のレース(騎手のバイオリズムは不明だが、古すぎずデータとしても少なすぎずで)
・芝とダートのレースのみ(障害は除外、また芝とダートは分けるべきかもしれないが、複雑になるので今回はシンプルに平地競走とした。)
・4番人気以内、かつ単勝オッズ6.9倍の馬(勝負圏内になるとみられている馬に絞る。大穴は異常値になることがあるので除外した。この条件にした理由は今回は割愛、いつか説明する。)
<条件1:前走逃げ・先行して今回差し・追込の騎手の成績>
・前走3コーナーで1/3番手以内の馬(9頭立てなら1~3番手で3コーナーを通過した馬。前走逃げ・先行した馬をざっくりこの条件とした。)
・対象レースで3コーナーで2/3より後ろの馬(9頭立てなら7~9番手で3コーナーを通過した馬。今回差し・追い込みの馬をざっくりこの条件とした。)
・上記条件が10回以上の騎手。(9回未満は数値が極端になるので除外した。)

まずこの条件だとものすごく成績が悪いことがわかる。
そもそも逃げ・先行していた馬が差し・追い込みに転ずるケースは出遅れたケースや道中不利を受けたケースもありそう。
その中で岩田康誠が複勝率50%なのは結構すごい。
最近だとロータスランドの京都牝馬Sが印象的。
なお、回数が最も多いのは松山と今村だが、どちらも成績が悪い。

<条件2:前走差し・追込で今回逃げ・先行の騎手の成績>
・前走コーナーで2/3より後ろの馬(9頭立てなら7~9番手で3コーナーを通過した馬。前走差し・追い込みの馬をざっくりこの条件とした。)
・対象レースで3コーナーで1/3番手以内の馬(9頭立てなら1~3番手で3コーナーを通過した馬。今回逃げ・先行した馬をざっくりこの条件とした。)
・上記条件が10回以上の騎手。(9回未満は数値が極端になるので除外した。)

なんと、今回の主役(?)である田辺が複勝率1位タイに入った。
つまり、先行に転換して最も馬券内に入っている。しかも驚異の7割越えは田辺だったのである。
(ちなみにハーツクライで衝撃のディープインアクト敗退を演出したルメールは3位)
逆なら”苦手だった”で片付けられたのだが、これではこの記事のストーリー的にややこしくなる。
しかし見方を変えて、田辺が今回先行策をとったのは、”成功体験が多い”ことが背景にあるのではないだろうか。
もともと田辺騎手は脚質転換限らず、GI制覇はコパノリッキー、ロゴタイプ、アスクビクターモアはすべて逃げ・先行でのもの。
つまり田辺は先行馬で買うべき(他は控える)と頭のどこかにあれば、今回差し・追い込み有利な馬場・展開を前提に田辺の馬を本命にすることは、もしかしてた防げていたかもしれない・・・?(いや無理だろ)

そんなわけで、今回表で出したのは”有力馬で予想外の脚質で馬券購入者の思い通りの乗り方をしない実績が多い騎手”をあげてみた。
なお、これらの騎手が次はいつ予想外の戦型をとるのか、これは本人しかわからない。

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