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【雑談】思い出の秋華賞(カワカミプリンセス)

予想やデータばかりだと競馬と言うより馬券が趣味と捉えられても致し方なしになってしまうので、頭ばかりではなく心でも競馬を語ろうという趣旨の記事です。
(こちらの記事も是非どうぞ⇒ 【雑談】思い出のスプリンターズS(表紙写真:カルストンライトオ(2007年筆者撮影)))

2006年4月30日の京都競馬場で稀代のスーパーホースが空を飛ぶような速さで3200mを駆け抜ける10分ほど前、東京競馬場でとある1頭のお姫さまが地ならしにも思える破壊的な末脚で他馬を差しきり、樫の女王への挑戦権を掴み取っていた。
私は当時から東京競馬場を主戦場としているが、その日はそのシーンを京都競馬場のターフビジョンで目にしていた。
そのお姫さまの名前はカワカミプリンセス。
まさに三石川上牧場のプリンセスということなのだろうが、当時はその牧場の名前すらも知らなかった。

そして1ヶ月も経たずして、東京競馬場でその地ならしのような末脚を直接目撃することになる。

その年の3歳牝馬路線は、安藤勝己騎手騎乗のキストゥヘヴン(父アドマイヤベガ、馬主吉田和子氏)がフラワーCから桜花賞馬になり、2着に武豊騎手騎乗のチューリップ賞勝ち馬アドマイヤキッス(父サンデーサイレンス、生産ノーザンファーム)とまさに社台系×サンデー系の「お嬢様」が主演女優だった。
オークスが始まるまでは…。

2006年オークス JRA公式チャンネル

桜花賞の1・2着馬に続き、3番人気に支持されたカワカミプリンセスの末脚は、距離が2400mに延びてもその破壊力は全く落ちることがなかった。
直前半ばで堂々と抜け出すと、そのまま押し切る横綱相撲(お姫さまには失礼か)で完勝。
2着は後のアーモンドアイの母となるフサイチパンドラ(父サンデーサイレンス)、3着は伏兵アサヒライジング(父ロイヤルタッチ 母父ミナガワマンナ 鞍上柴田善臣騎手というこれまた語ると止まらない「通」な馬)で、桜花賞の上位馬はタフな展開に苦戦を強いられる結果となった。

※ここからようやく秋華賞です(笑)

無敗で樫の女王となったカワカミプリンセスは、直行ローテで秋華賞へと向かうことに。
この直行ローテは今でこそスタンダードになっているが当時は珍しく、このローテで制したのは桜花賞馬のテイエムオーシャンくらいだった(と思う)。
そのテイエムオーシャンはカワカミプリンセスと同じ本田優騎手、西浦勝一調教師のコンビで、カワカミプリンセスがこのローテで参戦することに、馬券を買う側からすれば安心出来る根拠になったと記憶している。
(たしか学生の身分ながら単勝5000円を突っ込んだ記憶。)

WINS渋谷のスクリーンで観ていた記憶があるが、京都の小回りでも、休み明けでもその破壊的な末脚は健在だった。

2006年秋華賞 JRA公式チャンネル

逃げたトシザサンサンの1000m通過は58.4のミドル~やや早めのペース。
それを追いかけたコイウタ、シェルズレイの3頭が引っ張り、蓋をするかのようにアサヒライジングが離れた4番手で馬群の先頭。
カワカミプリンセスはその後ろ6~8番手の外目で待機。
最後の直接で手応えたっぷりに抜け出したのはアサヒライジング。
シェルズレイを交わして単独先頭に立ったアサヒライジングに襲いかかったのは3~4コーナーでまくり気味に仕掛けていたカワカミプリンセスだけだった。
重厚で渋い血統らしく粘りに粘ったアサヒライジングが最後の直線も坂がなくそのまま逃げ切るかのように見えたが、一完歩一完歩大きなストライドで襲いかかるカワカミプリンセスの決め手には適わなかった。
カワカミプリンセスは無傷のまま2冠を達成し、無敗のプリンセスの誕生となった。

冒頭に登場した稀代のスーパーホースはひとつ上の世代だったディープインパクト。
そのディープ世代は牝馬もシーザリオ(ノーザンファーム生産)やエアメサイア(社台ファーム生産)というサンデー系の社台グループの良血が主役を飾り、鞍上も表舞台で目立つ活躍をしていた武豊騎手、福永祐一騎手が分け合う形となっていた。
一方で一つ下の06クラシック世代は対象的に非サンデー系、非社台が主役を飾っていた上に、鞍上もベテランのいぶし銀という言葉が似合う騎手が活躍した。
牡馬クラシックではオペラハウス産駒で浦河町の林孝輝氏の生産、石橋守騎手騎乗のメイショウサムソンが皐月賞、ダービーの2冠を達成し、菊花賞こそソングオブウインド(追分ファーム生産、武幸四郎騎手鞍上)が奪還したものの主役は間違いなくメイショウサムソンだった。
そして牝馬クラシックは先に述べた通り、カワカミプリンセス(三石川上牧場生産、本田優騎手騎乗)が牝馬2冠を達成し、主役を堂々と演じていた。

人間界は大手ブランド、高額なものが多くの場面で評価をされることが大半だが、時に無名ブランド、安価なものが突如として大ヒット、大活躍することがある。
サラブレッドの世界もどうも同じのようで、特に06年クラシック世代はその象徴だった。

今年の秋華賞は大手ブランド、高額な良血馬であるリバティアイランドが3冠牝馬にリーチをかけている。
このリーチにストップをかける馬が出てくるのか、そしてその馬はどのような血統、生産、調教師、騎手なのか。
京都の小回り2000であれば、出てくる可能性はゼロではない。

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